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大学・研究所にある論文を検索できる 「肺腺がんにおいてSERPINE2の高発現は予後不良因子となる」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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肺腺がんにおいてSERPINE2の高発現は予後不良因子となる

堂國, 良太 神戸大学

2022.03.25

概要

【背景】
Serine proteinase inhibitor clade E member 2(SERPINE2)は神経膠腫細胞で神経突起促進因子として同定され、セリンプロテアーゼ活性を有し、 SERPINEファミリーに分類される。 SERPINE2は血管内皮細胞、線維芽細胞、マクロファージ、血小板、平滑筋細胞、軟骨細胞、星状細胞の他、乳がん、膵がん、胃がん、大腸がんなどの腺がん細胞で発現し、がん細胞の悪性度との関連があると報告されている。腸管上皮細胞において、 SERPINE2はRAS、BRAF、MEKIにより発現が誘導され、 M“》K経路を介した腫瘍形成促進に寄与することが報告されている。

肺腺がんにおいては、 SERPINE2の高発現例があることが報告されているが、その予後や悪性度との関連は明らかにされていない。今回我々は肺腺がん手術検体における SERPINE2の発現と予後の検討を行い、非小細胞肺がん細胞株を用いて、 SERPINE2発現が細胞増殖、アポトーシスに与える影響を検証した。

【方法】
2014年 1月から同年 12月までの間に神戸大学医学部附属病院呼吸器外科で治癒切除された肺腺がんの全 74例について、スパイラルアレイを作成し、SERPINE2の免疫染色を行い、その発現と予後との関連を調べた。手術検体のパラフィンブロックからがん組織部分を 50-100μm厚で切り出し、その切片をロール状に巻いてブロックに包埋しスパイラルアレイを作製した。抗ヒトSERPINE2抗体(ProteintechInc、Lot:00014298)を一次抗体として ImmPact DAB(Vector Laboratories Inc)を用いて免疫染色を行い、正常組織部分に比して腫瘍細胞において 50%以上の陽性割合である症例を SERPINE2高発現群、 50%未満の症例を低発現群と定義し、患者背景因子の検討と予後解析を行った。また、がんゲノムデータベースである TheCancer Genome Atlas(TCGA)の肺腺がんデータセットを用いて、腫瘍組織中 SERPINE2TPMが第一四分位の群を高SERPINE2 TPM群、第四四分位の群を低 SERPINE2TPM群として予後解析を
行った。

細胞実験では、 SERPINE2の発現量が比較的多い非小細胞肺がん細胞株を用いて、 siRNAによる SERPINE2のノックダウンを行い、 CellCounting Kit-8(CCK-8)(Dojindo Inc)による細胞数アッセイおよび Fasリガンド刺激によるアポトーシス関連蛋白の変化を評価した。細胞数アッセイでは、 siRNA処理した非小細胞肺がん細胞株を 96ウェル培養プレートに細胞数 5000/ウェルとなるように播種し、 6時間の前培養の後、 0時間、 24時間、 48時間、 72時間後の細胞数を、 CCK-8を用いて評価した。アポトーシス関連蛋白の評価では、 siRNA処理した細胞株を 6ウェル培養プレートに播種し、 6時間の前培養の後、 200ng/ml の可溶性 Fasリガンド(WakoInc)で処理し、 0時間、 2時間、 6時間、 12時間、24時間、 48時間後の Caspase-9、Caspase-7、Bax、Bcl-2の発現量の変化を Western blottingにより評価した。

【結果】
外科的完全切除例 74例のうち、 SERPINE2免疫染色では 19例(26%)が高発現群であった。高発現群において有意にリンパ管浸潤を来している割合が高かった(p<0.02)が、他の背景因子には有意な差はみられなかった。予後解析ではSERPINE2高発現群において生命予後が悪く (P<0.02)、Cox比例ハザード解析による多変量解析でも同様の結果であり (HR9.05、95%CI1.20-68.0、P<0.05)、独立した予後不良因子であると考えられた。 TCGAデータセットを用いた解析では、高 SERPINE2TPM群において対照群と比べて生命予後が悪く (HR1.5、P<0.05)、免疫染色を用いた予後解析と同様の結果であった。

非小細胞肺がん細胞株における、 SERPINE2のmRNA発現量を RT-PCRで解析したところ、気管支上皮細胞株 BEAS-2Bと比較して、 H460、A549、PC9においてそれぞれ 1030倍、 401倍、 46.5倍の発現があり、腺がん細胞株であるA549、PC9をノックダウン解析に用いることとし、 siRNAによるノックダウンが行えていることを RT-PCRおよび WesternBlottingで確認した。 CCK-8を用いた細胞数アッセイでは、 A549および PC9において陰性コントロールと比較し、ノックダウン#1、#2では 72時間後の細胞数が有意に少なかった(p<0.05)。A549、PC9に対する Fasリガンド刺激では SERPINE2ノックダウンによりアポトーシスがより強く誘導された。特に A549においてはノックダウンにより抗アポトーシス蛋白である Bcl-2の発現が抑制されていた。

【考察】
手術検体を用いた解析では、がん組織中の SERPINE2発現置がリンパ管浸潤と生命予後不良と関連のあることが判明し、高発現群において予後が不良であることは、乳がん、胃がん、骨肉腫における既報と同様の結果であった。A549、PC9を用いた細胞実験では、 SERPINE2が抗アポトーシスに働き、その発現量が多ければがん細胞の悪性度が高まる可能性が示唆された。

上皮成長因子(EGF)が MEK/ERKの活性化を介して SERPINE2発現を誘導し、 SERPINE2のノックダウンが EGFによる細胞増殖を抑制することが報告されており、 SERPINE2は EGFが細胞増殖を引き起こすためのエフェクター分子であると考えられた。また、CHO-Kl細胞において SERPINE2がプラスミノーゲン誘導性アポトーシスを抑制したという報告がある一方で、前立腺がん細胞においては SERPINE2がアポトーシスを誘導するという報告もあり、がん種によってその働きが異なると考えられた。我々の研究では肺腺がん細胞においてSERPINE2はアポトーシスを抑制しており、肺がんの治療分子となる可能性があると考えられた。食道がんにおいては、 SERPINE2は BMP4の発現を介して細胞遊走、浸潤を誘導することが報告されているが、今回肺腺がん細胞株においては SERPINE2ノックダウンにより BMP4の発現量は変化せず、細胞遊走、浸潤の程度に変化は見られなかった。

今回の研究においては症例数が比較的少なく、その為 T因子、 N因子など他の予後不良因子については有意な結果が得らなかったと考えられた。

【結語】
SERPINE2は肺腺がんにおいてアポトーシスの抑制を介して、その独立した予後不良因子となることを明らかにした。今回の知見から、 SERPINE2は肺腺がんの治療標的となりうると考えられた。

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