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大学・研究所にある論文を検索できる 「概日時計機構を基盤にした慢性腎臓病時における心臓病態悪化機構に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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概日時計機構を基盤にした慢性腎臓病時における心臓病態悪化機構に関する研究

吉田, 優哉 YOSHIDA, Yuya ヨシダ, ユウヤ 九州大学

2021.03.24

概要

【背景・目的】
慢性腎臓病 (chronic kidney disease; CKD)による腎機能の低下は様々な合併症を引き起こすが、特に心不全などの炎症を伴う心血管障害は生命予後に影響を及ぼす要因として最重要視されている。しかしながら、これら障害の発症および増悪メカニズムは十分な解明に至っておらず、有効な治療戦略は確立されていない。一方、当研究室では CKD モデルマウスの腎臓における炎症増悪因子として Clock 遺伝子を見出しており、Clock 遺伝子の変異が腎臓の炎症を抑制することを明らかにしている。しかしながら、Clock 遺伝子が CKD 時の心血管障害に及ぼす影響は未だ明らかにされていない。そこで本研究では、Clock 遺伝子に着目し、CKD による心臓病態悪化メカニズムの解析を試みた。

【結果・考察】
1. 慢性腎臓病モデルマウスの心臓病態に及ぼす G-protein coupled receptor 68 (GPR68)の影響
野生型および CLOCK 遺伝子変異 (Clk/Clk) マウスを用いて 5/6 腎臓摘出 (5/6Nephrectomy; 5/6Nx)マウスを作成し、心臓の病態を観察した。その結果、高血圧や血中アンジオテンシン II 濃度は Clk/Clk 5/6Nx マウスと野生型 5/6Nx マウスとで差が認められなかったにもかかわらず、Clk/Clk 5/6Nx マウスのみ、心線維化や血中ナトリウム利尿ペプチド (BNP)値の上昇などの所見が抑制されていた。そこで野生型 5/6Nx マウスの心臓において CLOCK 依存的に発現制御される遺伝子をマイクロアレイ法等を用いて探索した。その結果、G protein-coupled receptor 68 (GPR68)を同定し、この受容体のノックダウンが 5/6Nx マウス心臓の線維化を抑制することを明らかにした。また、GPR68 が 5/6Nx マウス心室中の単球由来マクロファージの炎症性サイトカイン産生に関与していることを 5/6Nx マウスおよび初代培養単球を用いた検討で明らかにした。さらに、GPR68 高発現単球が脾臓に貯蔵されていたことから、5/6Nx マウスを対象にした脾臓の摘出実験、並びに脾臓摘出 5/6Nx マウスに対する単球移植を行った際の心臓病態を観察し、GPR68 高発現単球の心臓への浸潤が 5/6Nx マウスの炎症や線維化の悪化に重要な役割を果たしていることを明らかにした。

2. 慢性腎臓病モデルマウスにおける単球中 GPR68 発現変容メカニズムの解析
5/6Nx マウス血中において CLOCK 依存的に単球の GPR68 発現が誘導されることが示唆さ れたが、そのメカニズムは不明である。そこで、5/6Nx マウスの単球における GPR68 発現誘導 メカニズムを解析し、心臓病態の悪化をもたらす血中分子の探索を行った。まず、Gpr68 遺伝子 上流に結合する転写因子を解析した結果、単球中の Gpr68 発現は CLOCK/ARNTL に制御される ことが示唆された。そこで単球特異的 Arntl 欠損マウスを用いて検討を行った結果、単球 Arntl 欠損 5/6Nx マウスでは単球・マクロファージ中の GPR68 発現増加は認められず、心臓の病態悪 化も抑制された。さらに GPR68 の発現誘導をもたらす血中因子を探索した結果、5/6Nx マウス の血中に蓄積するレチノール/RBP4 複合体が単球中CLOCK/ARNTL の発現変容を介して Gpr68 の転写を促進することが示唆された。そこで、5/6Nx マウスに対するビタミン A 制限摂食を行っ た結果、摂取制限は血中レチノール/RBP4 の蓄積を抑制し、心臓中の GPR68 高発現単球を減少 させた。以上の結果より、5/6Nx マウスで認められる単球 GPR68 の発現誘導は、血中のレチノ ール/RBP4 複合体によるCLOCK/ARNTL の発現上昇を介して生じていることが明らかになった。

3. 慢性腎臓病時におけるヒト単球中 GPR68 発現変容メカニズムの解析
ヒト CKD 患者においてもレチノールの蓄積や心臓への単球浸潤が認められるが、これらが病態に及ぼす影響は解析されておらず、GPR68 の関与も不明である。そこで、ヒト単球における GPR68 発現誘導メカニズム、および CKD 患者の病態とマウスを用いた検討で着目した時計遺伝子や炎症関連因子との関連を解析した。まず、ヒト単球細胞株 THP-1 およびヒト初代培養単球を用いてGPR68 発現制御メカニズムの解析を行った。その結果、GPR68 発現は概日時計機構によって制御されており、さらにマウス単球と同様に、レチノール/RBP4 が CLOCK/ARNTL によるトランス活性化を介して GPR68 発現を誘導することが明らかになった。そこで非糖尿病性 CKD 患者の血清検体を解析した結果、CKD 患者血清ではレチノール/RBP4 が蓄積しており、患者血清を曝露したヒト単球は高い GPR68、CLOCK、ARNTL および炎症性サイトカイン発現を示すことが明らかになった。さらに、患者検体の心不全マーカーBNP 値を測定した結果、GPR68発現やレチノール濃度と正の相関を示した。以上の結果より、CKD 時の単球機能にレチノール GPR68 が関与すること、およびこれら因子が CKD 患者における心臓の病態にも関連していることが示唆された。

以前より、概日時計機構の異常、単球遊走、レチノール/RBP4 蓄積などの現象が CKD の病態や合併症と関連することが示唆されていたが、これらの要因を具体的に解析した報告はなかった。本研究は、上記現象が CKD 誘発性心不全に深く関与することを示し、GPR68 高発現単球を介した一連のメカニズムを体系化した。本研究で示された結果は、GPR68、単球、レチノール/RBP4といった因子が有効な治療標的となる可能性を示すものであり、これらを標的とした治療薬の開発、および血液浄化法の発展が期待される。

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