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書き出し

インターベンショナル・ラジオロジーにおける術者 (循環器内科,脳神経外科,放射線科) の水晶体被ばく線量の検討

大澤, 充晴 名古屋大学

2023.05.17

概要

学位報告4

別紙4
報告番号



















論文題目
インターベンショナル・ラジオロジーにおける術者 (循環器内科,
脳神経外科,放射線科) の水晶体被ばく線量の検討




大澤 充晴

論 文 内 容 の 要 旨
【背景】国際放射線防護委員会(ICRP)118th [1]勧告では,白内障発症の閾値が 8Gy から 0.5Gy
に大幅に引き下げられた.放射線業務従事者の水晶体等価線量限度については,その後,各国におい
て見直しが行われている.インターベンショナル・ラジオロジー(IR)手術は,手術に比べて侵襲性
が低く,広く普及しているが,患者だけでなく,術者を含むスタッフへの被ばくも懸念されている.
【目的】本研究では,人体ファントムを用いて,循環器内科医,脳神経外科医,放射線科医を想定し
た術者の水晶体近傍の線量を測定し,各診療科の主な手技ごとに術者の水晶体線量を算出することで,
術者の水晶体の線量管理の一助につなげる.
【方法】今回の測定では人体ファントムに OSL 線量計(nanoDot)[2-3]を貼付し,防護メガネ(メ
ガネ)や天井吊下げ式防護板(防護板)
,放射線防護キャビン(キャビン)といった防護具の有無でそ
れぞれ測定・評価した.なお nanoDot は,メガネの外側と内側の 8 カ所(顔の中央と側面)
,首の 1
カ所,合計 9 カ所に取り付けた.
【結果・考察】右目のメガネの内側の測定値がメガネの外側よりも大きく,メガネを着用していても
右外の内側は保護されていないことがわかった.これは,使用したメガネの形状によるものと思われ
る.メガネの下側と中央(鼻のあたり)には人体ファントムとの間に隙間があり,この隙間から散乱
線が入射したと考えられる.また左眼の左外側は右眼の右外側に比べて一桁水晶体線量が大きく,左
眼に放射線が集中していることがわかった.これは,左眼が X 線管や患者などの散乱体に近接してい
るためと思われる.さらにメガネの左目外側と頸部の線量を比較した芳賀らの報告[4]では,頸部の線
量は左眼外側の約 1.5 倍であった.しかし,本研究では,循環器(虚血)
,循環器(電気生理)
,脳外
科,放射線科の頸部の測定値は,それぞれ左目外側の 1.1,1.4,1.7,1.7 倍であることが判明した.
これは,プロトコルによって付加フィルターを含む透視・撮影条件が異なるため,放射線の線質など
様々な要因の違いが影響しているものと思われる.したがって,各診療科で手技ごとに使用する透視・
撮影条件が異なるため,本研究のように個々の条件ごとに水晶体線量を測定することが理想的である.

EP-IR では,キャビンを使用した場合,第一助手の水晶体線量が術者の 2 倍以上となった.こ
れは,多重散乱効果によるものと考えられる.キャビンを含む保護具を使用した場合,散乱線は
保護具の周囲に散乱するため,保護具から少し離れた第一助手は,保護具に近い術者に比べて被
ばく線量が大きくなる可能性がある.したがって,術者はキャビン使用時に鉛エプロンやメガネ
などの保護具を使用する必要はないが,保護具に隣接する第一助手は,被ばく量は非常に少ない
が,術者の 2 倍以上の放射線量を受けることを念頭に置いて保護具の使用を検討する必要があ
る.Neuro-IR では,AVM/AVF は他の Neuro-IR に比べ、2 倍以上の水晶体線量であった。DSA
回数,透視時間が他の手技に比べて多かったためと思われる.そのため,AVM/AVF 治療時は特
にメガネの使用に加えて,保護板などの保護具の使用が必須である.また CBCT は DSA よりも
被ばく量が多く,撮影中に術者が退避しない場合,術者の水晶体線量は約 2 倍となる.したがっ
て,CBCT 撮影中,術者は退室することが望ましい.特に脳血管内治療後に脳出血の有無を確認
するための CBCT 撮影は,装置の最大視野で行われることが多い.そのため,照射面積が大き
く,散乱線が多く発生するので,撮影前に術者や他のスタッフが装置から十分に離れることが必
要である.
Rad-IR TACE については,CBCT 撮影時に術者を退避させた場合,1 例あたりの術者の水晶体
線量は,他の診療科の IR 手技よりも小さかった.放射線科では,術者が装置から離れられるか
どうかで,回転軌道の異なる 2 種類の CBCT モード(close モードと open モード)を使い分け
ている.全ての測定点において,open モードは close モードに比べ,術者の水晶体線量を約 10
~40%低減することができた.TACE では,造影剤を手動で注入する CBCT 撮影時など,術者が
装置から距離を保てない場合は,放射線量が高くなる可能性がある.術者の水晶体線量を効果的
に低減するためには,メガネや保護板の使用に加えて,CBCT の撮影モードも考慮する必要があ
る.
保護板の配置の検討では,術者の水晶体の高さが 150cm の場合,防護板の上端の高さ:165cm
は,155cm に比べて被ばく線量が約 80~90%低減した.これは,上方散乱線の影響によるもの
と考えられる.したがって,上方散乱線の影響を低減するためには,保護板の上端が術者の身長
よりも高くなるように配置することが望ましい.しかし,術者は上半身だけに集中し,下半身を
疎かにするようなことがあってはならない.そこで,L 字型のプロテクターやベッドの下に取り
付ける保護カーテンなどを併用することで全身を保護し,被ばく線量を減らすことが推奨される.
術者と保護板との距離:20cm は,30cm に比べて被ばく線量が約 70~80%低減した.これは EPIR の第一助手が術者より線量が大きかった理由でもあり,散乱線の多重散乱が原因であると考
えられる.放射線防護のために,できるだけ術者の近くに防護板を使用することが必要である.
保護板の角度については,水平(平行)方向は垂直(直角)方向よりも被ばく線量が約 80~90%
低減した.これは,側面からの散乱線の影響と思われる.保護板の角度を変えられる場合は,横
からの散乱線を防ぐために,保護板を水平にして使用することが推奨される.
保護板とベッドの距離:0cm にすると,防護板とベッドからの距離:20cm に比べて,被ばく線
量が約 80~90%減少した.これは,散乱線がベッドと保護板の間の隙間から入射するためと考

えられる.したがって,ベッドと保護板の間の隙間をできるだけ小さくし,患者からの散乱線を
カットできるように防護板を配置することが必要である.【結語】各診療科の主な手技ごとに術
者の水晶体線量が異なることがわかった.診療科によって使用するプロトコルの透視条件や撮影
条件が異なっており,透視と撮影の比率も異なるため,本研究のように診療科ごとに水晶体線量
を測定する必要がある.また,各種保護具の保護効果の違いや保護板の適切な使用方法を明らか
にした本研究は,術者をはじめ,放射線業務従事者の水晶体線量の低減に貢献できるものと考え
る.
[1] International Commission on Radiological Protection. ICRP publication 118: statement on
tissue reactions/ early and late effects of radiation in normal tissues and organs–threshold
doses for tissue reactions in a radiation protection context. Ann ICRP 2012; 41(1/2): 1-322.
[2] Okazaki T, Hayashi H, Takegami K, et al. Fundamental Study of nanoDot OSL Dosimeters
for Entrance Skin Dose Measurement in Diagnostic X-ray Examinations; Radiation
Protection and Research 2016;41(3):229-23.
[3] Asahara T, Hayashi H, Goto S, et al. Evaluation of calibration factor of OSLD toward eye
lens exposure dose measurement of medical staff during IVR; J Appl Clin Med Phys 2020;
21:11:263–271.
[4] Haga Y, Chida K, Kaga Y, et al. Occupational eye dose in interventional cardiology
procedures. Scientific Reports 2017; 7(1) :1-7.

この論文で使われている画像

参考文献

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Zuguchi, M. Radiation dose to the pediatric cardiac catheterization and intervention patient. AJR

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3. Kato, M., Chida, K., Moritake, T., Sato, T., Oosaka, H., Toyoshima, H., Zuguchi, M. and Abe, Y.

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4. Chida, K., Kaga, Y., Haga, Y., Kataoka, N., Kumasaka, E., Meguro, T. and Zuguchi, M.

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7. International Commission on Radiological Protection. ICRP publication 118: statement on tissue

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study of nanoDot OSL dosemeters for entrance skin dose measurement in diagnostic X-ray

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12. Asahara, T., Hayashi, H., Goto, S., Kimoto, N., Takegami, K., Maeda, T., Kanazawa, Y.,

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24

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研究業績

博士後期課程期間における研究業績の一覧を示す.

原著論文

Osawa M, Tawada Y, Kaneda N, Fujita N and Koyama S.

Examination of lens exposure doses of cardiologists, neurosurgeons, and radiologists in

interventional radiology.

Radiat Prot Dosimetry. 2022 Dec 7;198(20):1585-1597.

発表

「当院の血管撮影装置における術者の水晶体の被ばく線量に関する検討」

◎大澤充晴,他.第 84 回日本循環器学会学術集会

「カテーテルアブレーションにおける術者を想定した水晶体の放射線防護方法に関す

る検討」

◎大澤充晴,他.第 85 回日本循環器学術集会

「当院の脳外科領域における術者の水晶体の被ばく線量に関する検討」

◎大澤充晴,他.第 36 回日本脳神経血管内治療学会学術集会

「回転軌道の異なるコーンビーム CT の被ばく線量と画質の検討」

◎大澤充晴,他.第 28 回日本脳神経血管内治療学会

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謝辞

本研究は,筆者が名古屋大学大学院医学系研究科博士後期課程在学中に,同大学脳

とこころの研究センター准教授 小山修司先生の指導の下に行ったものです.本研究の

遂行および本論文の作成にあたり,終始熱心なる御指導とご鞭撻を賜りましたことを

心から厚く御礼申し上げます.

本研究の大部分は愛知医科大学病院 血管内治療センターで行ったものです.日常診

療業務と研究活動の両立にあたり,御理解と御支援を賜りました愛知医科大学病院 放

射線部部長 鈴木耕次郎先生,愛知医科大学病院 中央放射線部 診療放射線技師長 金

田直樹先生に深謝の意を表します.

本研究に関して,種々有益な御討論及び御激励を頂いた名古屋大学大学院医学系研

究科 教員各位,同大学脳とこころの研究センター 小山研究室 関係諸氏,名古屋大学

医学部附属病院医療技術部放射線門 藤田尚利先生ならびに愛知医科大学病院 中央放

射線部 関係諸氏に心から感謝致します.

最後に,博士後期課程進学にあたり,温かく見守ってくれた両親と家族に感謝しま

す.

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