Ability of Ureaplasma parvum to invade mouse sperm, fertilize eggs through infected sperm, and impair mouse sperm function and embryo development
概要
〔目的(Purpose)〕
不妊症とは「妊娠を望む健康な男女が、1年以上避妊をせずに性交をしているにも関わらず妊娠しないもの」と定義され、罹患率は10〜15%である。原因は大きく女性因子と男性因子に分類され、男性因子は20〜30%を占める。男性因子の大多数は造精機能障害であるが、泌尿器・生殖器感染症も原因の一つとなりうる。Ureaplasma spp.は女性では膣炎やヒト流早産の際の絨毛膜羊膜炎の起因菌となり、男性では非淋菌性非クラミジア性尿道炎、前立腺炎などの泌尿器・生殖器感染症の起因菌となる。Ureaplasma spp.感染の精子機能や形態、男性不妊への影響に関しては一定の見解が得られていなかったが、近年、男性不妊の原因となることが臨床的に示唆されるようになった。今回、Ureaplasma感染と運動性および受精能、胚発生能への影響と男性不妊への関与を明らかにすることを目的とし、マウス精子へのUreaplasma感染実験を行った。
〔方法(Methods)〕
早産胎盤(在胎週数26週、絨毛膜羊膜炎)由来臨床分離株(Ureaplasma parvum, U, parvum、OMC-P162株、serotype 3)をマウス精子に感染させ、蛍光顕微鏡、共焦点顕微鏡、走査電子顕微鏡(Scanning electron microscope; SEM)、およびHE染色を行い、感染マウス形態を観察した。Swim-up法およびSperm Motility Analysis System (SMAS)で運動性への影響を解析した。最後に、感染精子を用いたin vitro fertilization (IVF)で受精能および胚発生への影響を評価した。菌量は固定培地上のコロニー数からColony Forming Unit (CFU)を算出し、使用したマウスの精子数から多重感染度(Multiplicity of infection; MOI)を測定し、菌量とマウス精子機能の関係を解析した。
〔結果(Results)〕
U. parvumはマウス精子のhead、midpieceに付着しており、一部は精子内部に侵入していた。また、SEMでの観察では、感染マウス精子の表面構造が破壊され、凝集塊を形成していた。HE染色では、感染マウス精子の形態異常は感染1時間後、3時間後でいずれも有意に増加し、その部位は主にmidpiece、tailであった。これらの結果から、U. parvumはマウス精子の形態異常に関与することが示された。マウス精子の運動性への影響に関してはSwim-up法、 SMASで検討を行った。Swim-up法では感染マウス精子の運動性はMOI依存性に低下していた。SMASの結果では、非感染マウス精子は採取から6時間後でも運動性は維持されていた。一方、感染マウス精子では時間依存性に運動性が低下し、感染3時間後からは有意に運動率が低下した。これらの結果から、U. parvumはマウス精子の運動性を菌量および時間依存性に低下させることが明らかとなった。U. parvum感染マウス精子を用いたIVFでは、受精率は感染精子で有意に低下し,受精卵の質の低下および胚盤胞への胚発生率が低下した。また、U. parvum感染マウス精子にゲンタマイシン処理を行い、精子外のU. parvumを除去したマウス精子でIVFを行った。マウス精子内部に侵入したU. parvumは感染精子を介して受精卵内に侵入し、胚の発生停止に関わることが示唆された。
〔総括(Conclusion)〕
U. parvum感染は、マウス精子の形態変化を引き起こし、一部はマウス精子内部にも侵入し、精子機能を低下させた。感染マウス精子を用いたIVFでは受精能および胚発生率が低下し、精子内部に侵入したU. parvum 受精卵内に侵入し、胚発生を停止させることが示された。本研究は、U. parvumが男性不妊の一因となりうることを示しており、不妊症患者でのUreaplasma spp.のスクリーニングの重要性を示唆した。今後、Ureaplasma spp.のヒト精子への影響を調べることによって、不妊症治療の一助となることを期待している。