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大学・研究所にある論文を検索できる 「Synthesis of Silicon-Containing Conjugated Compounds Using a Divalent Silicon Species and Structural Analysis of Explosive Silanes」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Synthesis of Silicon-Containing Conjugated Compounds Using a Divalent Silicon Species and Structural Analysis of Explosive Silanes

Uchida Kenya 東北大学

2022.09.26

概要

Chapter 1. General Introduction
カルベンのケイ素類縁体であるシリレンはケイ素化学において重要な反応性化学種である。シリレンは通常基底一重項状態をとり、二価のケイ素上の空のp軌道と非共有電子対に由来した特徴的な反応性を示す。特に、シリレンと多重結合化学種との付加反応は、含ケイ素骨格の形成とπ電子系の変換が同時に進行する優れた反応である。これまでに我々は単離可能なジアルキルシリレン1とベンゾフェノンとの反応が室温で速やかに進行し、メチレンシクロヘキサジエン骨格を有する2が定量的に得られることを見出している(式1)。この反応は温和な条件で進行する脱芳香族化反応としても興味深く、シリレンの付加反応を用いる含ケイ素共役系化合物形成反応の適用範囲の精査と反応機構の解明は、新しい有機骨格変換反応の開拓にも貢献すると期待される。

また、シリレンは半導体製造におけるシリコン層形成工程においても重要な中間体と考えられている。この工程においては、余剰のシリレンが排気配管内で多量化して、油状のシラン類となり装置内壁に堆積する。これらのシラン類はオイリーシランと呼ばれ定期的に除去する必要があるが、爆発性を有する場合があり、科学的な根拠に基づいた取り扱い手法が求められている。

本博士論文では前述したシリレンが深く関与する反応について研究を行った。第二章ではシリレンと種々のジアリールケトンとの反応および理論計算から、脱芳香族化を伴う(1+4)環化付加反応の反応機構、とくに中間体であるカルボニルシライリドの電子状態を明らかにした。第三章ではシリレンとベンジルとの反応によって得られたビシクロペンタン誘導体の異性化反応を見出し、異性化反応の機構について検討した。第四章ではシリレンの付加反応を用いて凝集誘起発光性の化合物を合成し、その構造と発光特性を明らかにした。第五章ではシリレンと種々のアリールニトリルとの付加反応を検討し、ケイ素と窒素を含む環状化合物を合成し、その構造と性質を明らかにした。第六章では半導体製造工程において副生する爆発性シラン類の危険性評価と構造解析を行い、爆発性の鍵となる構造と反応過程を明らかにした。

Chapter 2. Dearomative Cycloaddition of an Isolable Dialkylsilylene with Diaryl Ketones
シリレンとジアリールケトンとの脱芳香族環化付加反応はケトンのπ共役系の変換を伴う興味深い反応である。本章では、この反応の適用範囲や反応機構に関する検討を行った。シリレン1と種々のベンゾフェノン誘導体との反応で、シリレン1の環化付加反応は電子豊富なベンゾフェノンに対してより速く、かつ電子豊富なアリール基側でより優先的に進行することを見出した。理論計算から、シリレンとジアリールケトンとの反応の鍵中間体はカルボニルシライリド(シリレン−ケトン複合体)であり、これはカルボニル酸素の非共有電子対とシリレンの空のp軌道の相互作用によって安定化されていた(スキーム1)。さらに、このカルボニルシライリドから非常に小さな活性化障壁を経て、一方のアリール基のオルト位でSi–C結合を形成し、結果的に(1+4)環化付加体が生成することを見出した。得られた(1+4)環化付加体の単結晶X線結晶構造解析を行い、o−イソトルエン構造を有していることを確認した。また(1+4)環化付加体の紫外可視吸収スペクトルからは、π→π*遷移に由来する吸収帯が370nm付近に存在することを確認した。

Chapter 3. Formation and Isomerization of Highly Strained 2,5-Dioxa-Silabicyclo[2.1.0]Pentane
シリレンとカルボニル化合物の反応は特異な構造と電子状態の含ケイ素環状化合物が簡便に得られるため、活発に研究されている。α−ジケトンであるベンジルとシリレンとの反応は(1+4)環化付加体が得られることが報告されているが、中間体の構造および反応機構に関する知見は限られていた。シリレン1とベンジルとの反応は室温で速やかに進行し、1,3−ジオキサ−2−シラシクロペンタ−4−エン3と予期せぬ高歪み化合物である2,5−ジオキサ−シラビシクロ[2.1.0]ペンタン4が得られることを見出した(スキーム2)。さらに、化合物4が化合物3へ異性化することを見出した。この異性化の反応速度の温度依存性から活性化エントロピーが負の値であることを明らかにし、この反応の律速段階は束縛された構造を経由していると考察した。理論計算からビシクロペンタン骨格が大きな環歪みエネルギーを有することを明らかにし、この環歪みの解消と強固なSi–O結合の生成が環拡大を伴う4から3への異性化反応の主な駆動力であると考察した。

Chapter 4. Siloxy-Substituted Cyclopentadiene Showing Aggregation-Enhanced Emission
固体や薄膜などの凝集状態でより強い発光を示す特性は凝集誘起発光性と呼ばれており、環境応答性センサーなど発光材料として研究が行われている。凝集誘起発光性分子の合成において炭素-炭素結合構築のために用いられる遷移金属触媒が残留することで、発光特性の活用を妨げる場合がある。本章では、そのような金属触媒の残留が本質的に伴わない、シリレン1の環化付加反応による共役系変換反応に着目した。シリレン1とシクロペンタジエノンとの反応により凝集誘起発光性の化合物5を収率81%で合成した(式2)。化合物5のTHF溶液の蛍光量子収率は0.25%と非常に低い値であるのに対して、固体では11%と44倍増加し、化合物5が凝集誘起発光性を示すことを確認した。

Chapter 5. Structures and Properties of Phenylene-bridged 1,3-Diaza-2-silole and Related 2H-Azasilirenes
シリレンの炭素−ヘテロ原子多重結合への環化付加反応は含ケイ素−ヘテロ原子環状化合物が簡便に得られるため活発に研究されている。特にシリレンとニトリル類との反応はケイ素窒素を含む環状化合物が得られるため興味深い。本章ではシリレンの環化付加反応を用いたフェニレン架橋ジアザシロールと2H−アザシリレンの合成と構造、光学特性をまとめた。シリレン1とo−フタロニトリルとの反応によりフェニレン架橋ジアザシロール6と脱芳香族化された異性体7を合成した(スキーム3)。同様の反応をパラ置換ベンゾニトリルに対して行い、2H−アザシリレン8を得た。紫外可視吸収スペクトルおよび理論計算から、化合物6−8は高エネルギーのn軌道(C=N)と低エネルギーのπ*軌道(1,3−ジアザ−2−シロール、イミノフェニル)を含む特異な電子状態であることを明らかにした。理論計算から、1,3−双極子であるニトリルシライリド(シリレン−ニトリル複合体)と2分子目のニトリルもしくは芳香族C=C結合との間で環化付加反応が進行している反応機構を明らかにした。

Chapter 6. Structural Estimation and Hazard Evaluation of Explosive Silanes Generated in Semiconductor Manufacturing Processes
クロロシランガスを用いる半導体製造プロセスにおいて、爆発性のシラン類が副生する場合がある。これらは油状であり配管の閉塞を引き起こすため定期的に除去する必要がある。本章ではキオクシア(株)の製造工程において副生する爆発性シラン類を対象とした分析スキームの構築と危険性評価、構造解析についてまとめた。不活性ガス雰囲気にてサンプリングしたオイリーシランおよび、それを実験室で加水分解した生成物の示差走査熱量分析(DSC)の結果、加水分解によって発熱量が約4倍に増加することを見出した。一方で、爆発性を評価する弾道臼砲試験ではオイリーシランのみが爆発性を示し、加水分解物は爆発性を示さないことを明らかにした。以上のことから、発熱量の大きい加水分解物と爆発性示すオイリーシランが混在した状態が最も危険性が高いと推定した。

NMRやMSなどの分光学的測定により、オイリーシランの主成分は環状クロロシラン類であり、加水分解物はケイ素-ケイ素結合を含むシロキシシロキサン類であると推定した。理論計算の結果、ケイ素-ケイ素結合の分子内酸化、水素の脱離、シリレンの発生と別のシラノール分子への挿入反応などの複数の発熱過程を見出した(スキーム4)。以上の結果からオイリーシランの一部がケイ素-ケイ素結合とヒドロキシ基が共存する不完全な加水分解生成物へ変換されることが危険性を増加させる要因であると推定した。

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