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Conosilane Aの合成

岡村, 仁則 東京大学 DOI:10.15083/0002002055

2021.10.04

概要

【背景】
菌類に由来する二次代謝産物は、構造的多様性を有しておりその生理活性にも非常に有用性が認められるものが多い。一方でこれらの二次代謝産物は様々な要因で自然からの供給がごく微量にとどまる場合が多く、有機合成化学によるこれらの希少化合物の合成法の確立は試料供給としての有力な手段である。
コガサタケ属(conocybe sp.)に属するキノコは多様な tremulane セスキテルペン類の生産者であることが知られており、これらの中には血管拡張作用や 11β-hydroxysteroid dehydrogenase (11β-HSD)阻害活性を有するものも報告されている。2012 年に、Liu らによって新規な tremulane セスキテルペンである conosilane A が単離された。本化合物は 11β-HSD1 に対する中程度の阻害活性を有している。本化合物の特徴的な四環性骨格である furo[2,3-b]indeno[1,2-c]furan 骨格は構築例が知られておらず、また自然からの供給量も微量であるため、効率的な合成法の確立が必要である。以上の背景から、筆者はconosilane A の合成研究に着手した。
Scheme 1 に逆合成解析を示す。構築に困難が予想される C8 位の四級不斉炭素は不飽和アルデヒド 11 に対する分子内環化反応によって合成終盤に構築することとした。この時、新たに形成する五員環に隣接するテトラヒドロフラン環の立体化学を利用することで、立体選択性が発現するものと期待した。前駆体11の右側部分は、13 のエステルを還元して得られる一級アルコールに対するフラン環の酸化と環の開裂を伴うアセタール交換反応によって合成できると考えた。β-ヒドロキシエステル 13 のC6 位-C7 位間の結合はクロスアルドール反応によって形成することとし、両ユニットとして不飽和アルデヒド 14 と既知のエステル 15 を設定した。

【ラセミ体合成】
まずは合成法の確立を目指しラセミ体での合成を行った (scheme 2)。市販のジメドンより 4 工程で不飽和アルデヒド 14 を、3-フルアルデヒドより 5 工程で既知のエステル 15 を調製した後、これらを用いてクロスアルドール反応を行った。その結果、LHMDS を塩基として用いると 21 と 22 とを 7:3 のジアステレオマー比で与えた一方、ジシクロヘキシルボロントリフラートとトリエチルアミンを用いた条件ではジアステレオマー比 1:19 と高い選択性で 22 を得ることができた。
これらを分離後、21 と 22 のそれぞれに対し続く変換を行い鍵反応前駆体へと導いた (Scheme 3)。水酸基及びケトンのTBS 保護、エステルの還元、酸によるシリルエノールエーテルのケトンへの再生の 3 工程で 27, 28 を収率よく合成した。これらに対し次にフラン環の酸化を行った。酸化条件の検討の結果、NBS をメタノール溶媒中 0 °C で作用させることで穏和に酸化が進行し酸化成績体である 2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフラン中間体を定量的に与えた。この粗生成物に対し p-トルエンスルホン酸を作用させると期待通り環の開裂を伴うアセタール交換が進行し、環化前駆体 34, 35 を収率よく得た。これらはそれぞれアノマー位(= C12 位)に関するジアステレオマー混合物であったが、分離が困難であったためそのまま続く変換に用いた。
続いて、鍵反応である分子内環化を 33, 34 を用いて行った。水素化トリブチルスズと AIBN を用いたラジカル条件を始めに検討した。その結果、いずれの基質からも目的の環化体 37, 38 を中程度の収率で得ることができた。収率向上のために更に条件を精査した結果、基質 35 を用いてアセトニトリル溶媒中でビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル(0)を用いる還元的 Heck 反応条件が最も収率よく目的物を与えることが分かった。
また、反応の詳細な解析の結果本反応は基質のアノマー位の立体化学に依存して進行することが判明した。立体障害がより軽減される-アノマーからのみ望む反応が進行することから、「基質のアノマー位の選択性の向上」と「不活性なβ-アノマーの活性化」の 2 つのアプローチから鍵反応の最適化を行った。検討の結果、トリフルオロメタンスルホン酸マグネシウムの添加によって一部β-アノマーからも環化が進行することが判明し、環化収率を 66%まで向上させることに成功した。得られたアルデヒド 38 をそのまま塩酸で処理すると分子内アセタール交換と TBS 基の除去が一挙に進行し四環性ヘミアセタール 62 が得られた。最後に、PDC によって 2 つの水酸基を酸化して conosilane A のラセミ体全合成を達成した。市販のジメドンより総工程数 13、総収率 12.9%であった。

【両光学活性体の合成】
確立した手法を基に、conosilane A の両光学活性体の合成に着手した。Evans らによって報告された anti 型不斉アルドール反応を適用することで達成が可能であると考え、不飽和アルデヒド 14とオキサゾリジノン 66 とを設定した。オキサゾリジノン 66 はラセミ体合成での中間体である既
知のカルボン酸 20 から合成した。このものと 14 とのマグネシウムを用いた不斉アルドール反応を試みたところ、完全な anti 選択性を示したものの、期待したジアステレオ選択性は発現せず 67と 68 とを混合物として与えた。これらはシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる分離が容易であったため、それぞれから conosilane A の両光学活性体へと導くこととした。
67, 68 の不斉補助基を除去してキラルな 22 及び ent-22 を 99%以上の鏡像体過剰率で合成した。これらを用いてラセミ体合成時と同様の工程を経て conosilane A の両光学活性体を合成した。

以上、本研究をまとめる。筆者は市販原料であるジメドンより 13 工程、総収率 12.9%でconosilane A のラセミ体合成を、14 工程、総収率 6.8%及び 9.8%で天然型及び非天然型の conosilane A の合成を達成した。

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参考文献

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