書き出し
Studies on the formation and elongation of the delimiting membrane in Bipolaris maydis
概要
有性生殖は遺伝的多様性をもたらす重要な機構の一つである。子嚢菌類の子嚢胞子(有性胞子)形成の研究は出芽酵母を用いて詳しく行われているが、糸状子嚢菌ではその特有の複雑さから詳しく調査が行われていない。本論文では、植物病原性糸状菌 Bipolarismaydis を用い、子嚢胞子形成時における前胞子膜の形成と伸長に関する研究を行った。第二章ではセプチン遺伝子欠損による子嚢胞子の形態異常に RNA サイレンシングの一種である MSUD が関与していることを見出した。第三章では MSUD を抑制することで、蛍光タンパク質を用いた子嚢内の局在解析を可能にした。セプチンの一つ CDC10の局在解析の結果、CDC10 は前胞子膜近傍に局在を示し、前胞子膜の伸長に関与していることが示唆された。第四章では小胞輸送経路で機能する exocyst 構成因子 SEC5 が前胞子膜の形成に関与していることを見出した。本研究は、糸状子嚢菌における前胞子膜の形成機構の一端を明らかにした。また、本研究で使用した子嚢内の局在解析法は、子嚢胞子形成の研究において基盤となりうるものである。