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大学・研究所にある論文を検索できる 「秋季北西太平洋における熱帯低気圧の発達に対する黒潮の熱力学的な遠隔影響」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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秋季北西太平洋における熱帯低気圧の発達に対する黒潮の熱力学的な遠隔影響

藤原, 圭太 FUJIWARA, Keita フジワラ, ケイタ 九州大学

2021.03.24

概要

本論文では、高解像度の非静力学雲解像領域気象モデルを用いて、巨視的な観点から北半球秋季の台風の発達に対する黒潮の遠隔影響を調査した。この研究課題に取り組むために、現実台風再現実験(標準実験)に加えて、黒潮域の海面潜熱フラックスと海面水温に関する 2 種類の感度実験をそれぞれ実施した。解析事例として、日本に接近する典型的な秋台風である 2010 年の台風 Chaba を選択した。

はじめに、黒潮から蒸発した水蒸気が急発達する台風へ向けてどのように流入し、その水蒸気が台風の内部構造とどのように関連しているのかを明らかにするために、標準実験の結果の解析に着手した。北半球秋季の日本付近の気圧配置は、大陸から東進する移動性高気圧とフィリピン海上を北進する台風に特徴づけられる。このような中緯度総観場は日本付近の南北気圧傾度を増大させ、対流圏下層の北東風を強める。その下層北東風は黒潮からの海面蒸発を促進し、黒潮から蒸発した水蒸気を台風内部コア領域へ輸送する。後方流跡線解析は、黒潮からの多量の水蒸気供給による顕著な気団変質を受けた中緯度起源の空気塊が、台風の急発達時の壁雲における強い潜熱加熱を誘起することを明らかにした。

次に、台風の強度変化に対する黒潮からの水蒸気流入の影響を評価するために、黒潮の潜熱フラックス(LHF)を人為的に減少する感度実験(LHF 減少実験)を実施した。台風が黒潮に接近する前から、LHF 減少実験における台風強化は、標準実験と較べて抑制された。LHF 減少実験では、黒潮上を移動する中緯度空気塊への水蒸気供給が減少するため、中緯度の乾燥領域が環境風に沿って台風中心付近の大気境界層に侵入する。その乾燥空気は、壁雲周辺の相当温位の低下と鉛直安定度の増加を引き起こす。台風内部コア領域の乾燥かつ安定な境界層は壁雲の対流活動を弱め、それによって台風の発達が阻害される。 さらに、LHF 減少実験の結果の解釈を検証するために、黒潮域の LHF を人為的に増加させた感度実験(LHF 増加実験)を実施した。予想に反して、LHF 増加実験は、台風強度が弱まる傾向を示した。LHF 増加実験における壁雲での対流活動や関連する台風 2 次循環は、内部コアへの低相当温位の空気の侵入によって弱められていた。2 次循環の弱化は、絶対角運動量(AAM)の境界層内における内向き移流と壁雲に沿った鉛直輸送を減少させる。AAM 収支解析は、力学的な AAM 移流の弱化が台風内部コアの spin-upプロセスの抑制の主要因であることを明らかにした。上述の結果は、黒潮から台風への水蒸気流入の変化に関連している。感度実験における LHF の増加は黒潮上の低気圧擾乱の発達を促進するため、その強化された低気圧擾乱が黒潮から蒸発する水蒸気を一層集積する。さらに、その低気圧擾乱は黒潮上の北東風を弱める。それらの結果として、黒潮から台風への大規模な水蒸気の流れが遮られる。

最後に、黒潮の遠隔影響における近年の中緯度海洋の急激な昇温化の影響を調査するために、SST の高温または低温偏差を黒潮域における SST 観測値に加える SST 改変実験(warm run と cool run)を実施した。台風の発達や軸対称構造は、cool run に較べて、warm run において強固であった。warm run における黒潮からの活発な潜熱・顕熱供給は、環境風に沿った湿潤な大気境界層を形成し、黒潮から台風への長距離水蒸気輸送を強化する。台風内部コアに輸送された多量の水蒸気は、壁雲での強い潜熱加熱が原因となって、より発達した台風 2 次循環を駆動する。その 2 次循環を構成する強いインフローが AAM の動径移流を増大させ、台風の急発達を促進する。

一連の研究成果は、北半球秋季に特有な気圧配置の下では、黒潮は日本に接近する台風の発達に遠隔的に影響を及ぼすことを明らかにした。LHF 改変実験は、中緯度大気に対する黒潮の応答(海面蒸発)の違いが台風強化を遠隔的に変調させるという『黒潮の受動的な影響』を提示した。さらに SST 改変実験は、今世紀の黒潮の昇温化が台風の発達を遠隔的にコントロールするという『黒潮の能動的な影響』を新たに提示した。

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