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大学・研究所にある論文を検索できる 「体外におけるブタ卵母細胞の発育と卵胞の発達に及ぼす卵母細胞由来成長因子の影響」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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体外におけるブタ卵母細胞の発育と卵胞の発達に及ぼす卵母細胞由来成長因子の影響

森川, 莉帆 神戸大学

2022.03.25

概要

哺乳類の卵巣内の卵胞は, 卵母細胞と, その周囲の顆粒膜細胞から構成される。卵胞の発達の過程で, 卵母細胞は顆粒膜細胞と相互に作用し合い, 同調して発育する。発達を開始した卵胞では, 顆粒膜細胞が増殖し, その後, 顆粒膜細胞間に液で満たされた卵胞腔が形成される。胞状卵胞以降では, 顆粒膜細胞は卵母細胞を取り囲む卵丘細胞と, 卵胞の内壁を覆う壁顆粒膜細胞へと分化する。

卵母細胞の発育過程を通して, 卵母細胞と顆粒膜細胞/ 卵丘細胞との相互作用は, 卵母細胞の成熟能力や受精能力, その後の胚発生能力の獲得に必要と考えられている。顆粒膜細胞/ 卵丘細胞からは, 卵母細胞の発育を支持する物質や, 減数分裂の再開を抑制する因子が卵母細胞へと輸送されると考えられる。一方,卵母細胞からは ,transforming growth factor(TGF) - βスーパーファミリーに属する成長因子のgrowth differentiation factor 9 (GDF9)とbone morphogenetic protein15 (BMP15)が分泌されることが,近年,示された。ブタの胞状卵胞内で, 卵母細胞は成熟する能力を獲得し, 卵丘は性腺刺激ホルモンに反応して膨潤化できるように変化する。この間も, 卵母細胞は周囲の卵丘細胞と相互に作用し合うと考えられ, 卵母細胞から分泌されると考えられるGDF9とBMP15は, この相互作用に関与している可能性がある。

本研究では, ブタの初期胞状卵胞から採取した発育途上の卵母細胞の発育および卵母細胞一卵丘細胞複合体の発達に及ぼす卵母細胞由来成長因子, GDF9とBMP15の影響を明らかにすることを目的とする。第2章では,初期胞状卵胞の卵母細胞におけるGDF9とBMP15のm RNAの発現を調べ, その後, 初期胞状卵胞から採取した卵母細胞一卵Ιΐ細胞複合体を種々の濃度のGDF 9 またはΒΜΡ 15 を含む発育培養液中で培養し, 卵母細胞の発育と複合体の発達に及ぼすGDF 9 とΒΜΡ 15 の影響を調べた。第3 章では, 第2 章と同様の方法で培養した複合体を成熟培養し, 卵母細胞の成熟能力の獲得に及ぼすGDF9とΒΜΡ15の影響を調べた。第4 章では, 卵母細胞一卵丘細胞複合体を種々の濃度のGDF 9 またはΒΜΡ 15 を含む発育培養液中で培養し, 複合体による卵胞腔様構造の形成に及ぼすGDF9とΒΜΡ15の影響を調べた。

第2章では,まず,ブタ初期胞状卵胞から採取した,発育途上の卵母細胞におけるGDF9とΒΜΡ15のmRNAの発現を調べた。直径1.2〜1.5 mmの初期胞状卵胞と直径4.0〜6.0mmの胞状卵胞から採取した,卵母細胞,卵丘細胞,および壁顆粒膜細胞におけるGDF9とBMP15 m RNAの発現をRT- PCRおよびq PCRで調べたところ, どちらの卵胞においても, GDF 9 と BMP15 mRNAは卵母細胞で強く発現していた。

次に, 発育途上の卵母細胞を含む卵母細胞一卵丘細胞複合体を, 0, 10 , 50 , および100 ng/mLの濃度でGDF9またはBMP15を添加した培養液中で5日間発育培養し,複合体の発達と卵母細胞の発育に及ぼすGDF 9 とBMP 15 の影響を調べた。GDF 9 添加区では, 複合体の平均直径は濃度依存的に増加し, 発育培養後, 100 ng/ m L添加区では349. 9 ± 9. 0 gm ( 平均値士標準誤差)と,無添加区の302 . ±7.5 gmと比較して有意に大きい値となった。一方, BMP15添加区では,複合体の平均直径の濃度依存的な増加は認められなかった。卵母細胞の発育および核相の変化には,GDF9またはBMP15による影響は認められなかった。

これらの結果より, ブタ初期胞状卵胞および胞狀卵胞において, GDF 9 とBMP 15 m RNAは主に卵母細胞で発現することが示された。 また, 初期胞状卵胞から採取した卵母細胞一卵丘細胞複合体をぶDF9またはBMP15を添加した培養液中で5日間発育培養すると,GDF9とBMP15は卵母細胞の発育に対しては影響を及ぼさないが, GDF9は複合体の直径を増大させることが示された。

卵胞の発達過程で, 卵母細胞由来の成長因子は, 卵丘細胞を介して卵母細胞の成熟能力の獲得に影響を及ぼす可能性がある。第3 章では, GDF 9 またはBMP 15 を添加した培養液中で発育培養したブタ卵母細胞一卵丘細胞複合体を成熟培養し,卵母細胞の減数分裂再開能力と成熟能力の獲得に及ぼすGDF9およびBMP15の影響を検討した。

種々の濃度のGDF 9 またはBMP 15を添加した培養液中で, 初期胞状卵胞から採取した卵母細胞一卵丘細胞複合体を5 日間発育培養し, その後, ヒト閉経期性腺刺激ホルモンを添加した培養液中で複合体を44〜48時間成熟培養し,卵丘の膨潤化と卵母細胞の成熟能力を調べた。無添加区およびGDF 9 添加区の複合体では, 成熟培養後, 卵丘細胞間の結合は緩んだが, 卵丘の膨潤化は起こらなかった。これに対して, 高濃度のBMP 15 ( 50 および100ng/m L) 添加区の複合体では, 体内で発育を完了した卵母細胞を含む複合体と同様な卵丘の膨潤化が誘起された。成熟培養後の卵母細胞の核相を観察したところ,GDF9添加区では,ほとんどの卵母細胞は第二減数分裂中期へと成熟しなかった( 2 - 7 %)。一方, BMP 15 を50および100 ng/mLの濃度で添加した区では,49%および61%の卵母細胞が成熟した。これらの値は, 無添加区における16 % と比較して有意に髙かった。これらの結果から, 発育培養期間中に高濃度のBMP15が存在すると,その後の性腺刺激ホルモン刺激による卵丘の膨潤化が促進され,卵母細胞が成熟したと考えられる。

発育培養後の複合体を,epidermal growth factor (EGF)を添加した培養液中で,または卵丘細胞を取り除いて卵母細胞を裸化し,44〜48時間培養して卵母細胞の成熟能力の獲得に及ぼすGDF9とBMP15の影饗を調べた。EGFによる成熟誘起では,無添加区,GDF9添加区,およびBMP15添加区で,39〜54%の卵母細胞は成熟し,各区間で有意な差はなかった。また,卵丘細胞を取り除き,卵母細胞に自発的な成熟を誘起すると,無添加区およびGDF9添加区において,卵母細胞の40%以上が成熟し,BMP15添加区(70%)と有意な差はなかった。これらの結果は,GDF9およびBMP15添加の有無にかかわらず,体外で発育した卵母細胞は成熟する能力を獲得しており,また,卵母細胞一卵丘細胞複合体では,EGF受容体以降の卵母細胞の成熟経路は完成していることを示唆している。

発育培養後の複合体から卵丘細胞を採取し,性腺刺激ホルモンの受容体である follicle stimulating hormone receptor (FSHR) と luteinizing hormone/choriogonadotropin receptor (LHCGR),および EGFreceptor (EGFR)のmRNAの発現レベルを qPCRで調べた。 FSHRおよび EGFRmRNAレベルは,培養した区間で差は認められなかった。一方, LHCGRmRNAレベルは, BMP15添加区で有意に上昇した。

これらの結果より,ブタの初期胞状卵胞から採取した発育途上の卵母細胞を含む卵母細胞一卵丘細胞複合体を,GDF9またはBMP15を添加した培養液中で5日間発育培養すると,卵母細胞が発育する間,BMP15は卵氐細胞のLHCGR mRNAレベルを上昇させ,性腺刺激 ホルモンの刺激による卵丘細胞の反応,注を高めることによって,卵丘の膨潤化を促進し,その結果,卵母細胞の減数分裂の再開と成熟が引き起こされた可能性が考えられる。

卵母細胞が卵胞腔の形成に関与することは, いくつかの種において示唆されており, 卵母細胞から分泌されると考えられるGDF 9 とBMP 15 は, 卵胞の発達過稈において, 卵胞腔の形成に影響を及ぼす可能性がある。第4 章では, GDF 9 またはBMP 15 を添加した発育培養液中で, 初期胞状卵胞から採取した卵母細胞一卵丘細胞複合体, またはその複合体から卵母細胞を除去した卵母細胞除去一卵丘細胞複合体を7日間培養し,卵胞腔様構造の形成に及ぼすGDF9とBMP15の影響を検討した。

種々の濃度のGDF 9 またはBMP 15 を添加した培養液中で, 卵母細胞一卵丘細胞複合体を 7日間培養したところ,GDF9添加区では,卵胞腔様構造の形成率は濃度依存的に増加した。一方,BMP15添加区では,卵胞腔様構造の形成率はいずれの区も無添加区と同等であった。 GDF9とBMP15の作用をより明確にするため, 卵母細胞除去一卵Fh細胞複合体を用いて同様な培養実験を行った。無添加区では, 複合体はほとんど発達せず, 卵胞腔様構造は形成されなかったことから,複合体の発達と卵胞腔様構造の形成には卵母細胞が必要であることが示唆された6また,BMP15添加区では,卵胞腔様構造は形成されなかった。一方,GDF9添加区では, 濃度依存的に卵胞腔様構造を形成する複合体の割合が増加したことから, 卵胞腔様構造の形成にはGDF 9 が必要であることが示唆された。しかし, その作用は, 卵母細胞が存在する場合に比べて弱く,GDF9以外の卵母細胞由来の因子が関与している可能性が考えられた。

卵母細胞除去一卵丘細胞複合体を100 ng/mL GDF9と種々め濃度のBMP15を添加した発育培養液中で培養し,GDF9とBMP15併用による作用を検討した。GDF9存在下では,BMP15濃度依存的に複合体の卵胞腔様構造の形成率は増加した。また, BMP 15 によって, 卵丘細胞間の距離が離れることが示された。壁顆粒膜細胞に高レベルに発現していると考えられるLHCGRmRNAの発現を調べたところ, 無添加区では, 発現レベルは高かったが, 卵母細胞一卵丘細胞複合体およびGDF9添加培養液中で培養した卵母細胞除去一卵丘細胞複合体の卵丘細胞では, LHCGR m RNAの発現は抑制された。これらの結果は, 卵母細胞由来のGDF9が,卵丘細胞のLHCGRmRNAの発現を抑制することを示唆している。

これらの結果より,プタの卵毎細胞除去一卵丘細胞複合体による卵胞腔様構造の形成には,卵母細胞由来の GDF9が必須であり, GDF9は卵丘細胞の LHCGRmRNAの発現を抑制するとともに, BMP15と協働して,卵胞腔様構造の形成を促進すると考えられる。

初期胞状卵胞以降の発達段階の卵胞において,ブタの卵母細胞は GDF9とBMP15を合成,分泌し, GDF9は卵斤細胞に作用して卵斤を発達させるとともに, BMP15と協働して卵胞腔様構造の形成を促進し,一方, BMP15は卵丘細胞に作用して性腺刺激ホルモンの刺激に反応して卵丘が膨潤化するよう変化させ,卵母細胞の成熟を促すと考えられる。

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