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大学・研究所にある論文を検索できる 「ウシにおける卵胞内ステロイドホルモン動態と卵子発生能の関連に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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ウシにおける卵胞内ステロイドホルモン動態と卵子発生能の関連に関する研究

阿其拉図 東京農工大学

2021.12.13

概要

ウシ体外受精技術および胚移植技術の発展により、優良メス家畜から体外生産胚由来産子の作出が可能となった。しかしながら、体外成熟卵由来体外受精胚の胚盤胞発生率および得られた胚盤胞の質は体内成熟卵由来体外受精胚と比べて低い。さらに、ウシの健康状態、性周期および卵胞サイズなどの様々な要因によって、卵子の初期発生能にはばらつきが大きく、産子が得られないケースも多い。体外受精技術をフィールドへ効果的に応用するためには、体外生産胚の発生能に及ぼす要因について個体ごとあるいは卵子ごとに詳細に解析することが必要である。

 小卵胞由来卵子は、体外受精胚生産にはかせない材料である。ウシの卵巣においては、性周期ごとに2〜3回の小卵胞群の成長および閉鎖が繰り返される。この小卵胞群の成長と閉鎖には主席卵胞からの発育抑制作用の有無が関与している。閉鎖を始めた卵胞においても、発生能を有する卵子卵丘細胞複合体(COC)が存在するが、形態的選別は難しい。一方、ウシ卵巣は約20〜21日の周期で、卵胞発育、排卵、黄体形成および黄体退行を繰り返す。これらの小卵胞の消長や卵巣周期と小卵胞中の卵子発生能の関係については、詳細な検討はなされていない。そこで本研究では、小卵胞における卵胞液中のステロイドホルモン濃度および卵丘細胞のステロイド産生能力が卵子初期発生能に及ぼす影響について検討した。さらに、得られた結果を卵子の初期発生能のマーカーとして活用できないか検討した。

 まず第1章では、緒論として本研究を展望した。

 第2章において、と畜されたウシから採取した卵巣について、形態的特徴により卵巣周期を特定した上で、小卵胞から回収した卵子の体外培養を行い、同時にその個体の卵胞液中のestrogenおよびprogesterone濃度をEnzyme Linked Fluorescent Assay(ELFA)法より測定し、卵子初期発生能との関連について検討した。さらに、estrogenおよびprogesterone濃度、およびestrogen/progesterone値と卵子初期発生能との関連について検討を行った。その結果、卵巣周期によって、小卵胞内微小環境中のprogesterone濃度が異なり、卵胞液中progesterone濃度と卵子初期発生能の間に正の相関が認められた。一方、卵胞液中のestrogen濃度は著しく低く、卵子発生能との関係は認められなかった。

 第3章においては、第2章の結果を踏まえ、卵丘細胞の顆粒膜細胞への分化と個々のCOCの初期発生能との関連を解明することを目的に、個々のCOCにおける卵丘細胞のステロイド産生関連遺伝子のmRNA発現と卵子発生能との関連について調べた。卵巣から採取した直後のCOCの卵丘細胞から一部を採取し、RNA抽出を行い、リアルタイムPCR法により各遺伝子の相対発現量を求めた。得られた結果とその卵子の初期発生について解析した。その結果、体外成熟および受精後に胚盤胞まで発生しなかったCOCの卵丘細胞におけるFSHR、IGF1R、CYP11alおよびHSD3βのmRNA発現量は、胚盤胞まで発生したCOCに比べて有意に高かった。これらの遺伝子は卵丘細胞の顆粒膜細胞への分化に関与しているため、卵丘細胞の分化と卵子の初期発生能の低下が関連することが示唆された。また、卵巣から採取した直後のCOCの卵丘細胞におけるFSHR、IGF1R、CYP11alおよびHSD3βのmRNA発現はその卵子の初期発生能を評価するマーカーとなりうる可能性が示唆された。

 以上、本研究により、と畜時のウシの卵巣周期が小卵胞の発育に影響し、その卵胞由来COCの初期発生能と関連していることが明らかとなった。小卵胞液中のprogesterone濃度が高い個体において、初期発生能の高いCOCを多く有する可能性が示唆された。また、個々のCOCにおける卵丘細胞のステロイド産生能力が卵子の初期発生能と関連しており、卵丘細胞の分化が進行し、progesterone産生能力が向上したCOCにおいて、初期発生能が低い可能性が示唆された。その機序として、閉鎖過程に入った小卵胞において、顆粒膜細胞の早期黄体化によって、progesterone産生が向上することで、小卵胞のアポトーシスが抑制され、卵子は十分な細胞質成熟期間を得られ、この間に卵子の発生能は維持あるいは向上する可能性が考えられる。一方、卵丘細胞においては、卵胞閉鎖から一定の時間が経過し、顆粒膜細胞への分化が進行した状態が卵子の初期発生能の低下を反映することが示唆された。

 今後、小卵胞内の卵子、顆粒膜細胞および卵丘細胞からの分泌因子と卵子との相互作用の機序の解明によって、COCの初期発生能をより詳細に評価する分子生理学的な指標を特定できると思われる。その指標を参考にCOCの状態に合わせた培養方法を確立し、ウシの体外受精胚生産効率の個体差を解消し、体外受精胚の安定した作出に繋がることを期待する。

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