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Measurement of the Flavor Changing Neutral Current Decays B → Kl+l- at the Belle II Experiment

モラ グリマルド, ジョニー アレハンドロ 東京大学 DOI:10.15083/0002006286

2023.03.24

概要

論⽂審査の結果の要旨
⽒名 モラ グリマルド ジョニー アレハンドロ
本論⽂は 7 章からなる。研究⽬的は⾼エネルギー加速器研究機構において稼働中の
SuperKEKB 加速器及び Belle II 検出器で取得された電⼦・陽電⼦衝突実験データ(積分輝
度 11.5 fb-1)を⽤い、B 中間⼦系でのクォークフレイバー変換を伴う中性カレント崩壊現
象 BàKl+l-を4つのモードで測定することである。第 1 章、第 2 章で、本研究の独⾃性の
簡潔なまとめ、素粒⼦標準模型についての概略、理論計算の概略、解析戦略が⽰される。
B 中間⼦データを⽤い BàKe+e-と BàKµ+µ- の崩壊分岐⽐を測定し、その⽐を取ることで
系統誤差を相殺し、⾼精度で標準模型予⾔値との⽐較が可能になる。特に Lepton Flavor
Universality (LFU)を破る性質を持つ新物理の探索において有効で、かつ過去の実験結果で
は 2.5 標準偏差で標準模型予想値からの逸脱が⽰唆されており、⾼統計データを⽤いたさ
らなる追試が重要である。これらの事実に基づき Belle II 実験における⾼精度での崩壊分
岐⽐測定の重要性を指摘し、本研究の動機が明確に⽰されている。
第 3 章では、本研究で⽤いた実験データを取得した加速器、検出器、DAQ・トリガー及
びデータ解析ソフトウェアが解説される。第 4 章では、終状態粒⼦の再構成・粒⼦識別⽅
法と、信号の事象選別⼿法の研究が述べられる。特に本研究では、電⼦の再構成におい
て、制動放射に伴う光⼦が持ち去る運動量を回復させるための新しい補正⼿法を開発し
た。ビームパイプや検出器センサー層での制動放射に対し、電磁カロリメータ上での光⼦
検出点と⾶跡の位置関係をシミュレーションにより明らかにし、制動放射に由来する光⼦
の発⾒効率を従来の⼿法よりも⼤幅に改善し補正の精度を⾼めた。これは本研究において
ダイレプトン共鳴を伴う背景事象を効率よく排除するために重要な研究成果である。ま
た、背景事象削減のための事象選別の最適化研究として多変量解析⼿法を開発した。事象
選別では機械学習の⼀種である BDT を⽤い、⾼い信号効率を維持しつつ、特に eeàqq 背
景事象を 1/50 まで削減することを達成した。また機械学習⼿法の最適化により最終分離
変数である Beam Constrained Mass (mbc)に対するバイアスを最⼩限に抑えた。
第 5 章では、終状態粒⼦再構成効率、粒⼦識別効率、多変量解析による効率について実
験データを⽤いた性能測定を⾏い、Belle II 検出器実機の性能測定に基づく BàKe+e-と
BàKµ+µ- 信号検出効率を算出した。Belle II の最初期の物理データ解析であり、実機の性
能評価を再構成効率、粒⼦識別効率の詳細な研究は学術的価値が⾼い。
第 6 章では、積分輝度 11.5 fb-1 の電⼦陽電⼦衝突実験データを⽤いた統計解析による信
号抽出と崩壊分岐⽐測定について、⼿法と結果の考察を議論する。最終分離変数である
mbc スペクトラムの統計解析により信号数と背景事象数を決定する。フィットに⽤いるテ
ンプレートは実験データやシミュレーションを⽤いて決定した。有意な信号事象数の検出
には⾄らず崩壊分岐⽐の上限値を算出し、4つの崩壊モードに対して、90%信頼度で 1-4

1

×10-6 の上限を得た(モードにより異なる)。これらは、過去の実験による測定値及び標準
模型に基づく崩壊分岐⽐期待値に⼀致する結果であった。
第 7 章では、本研究によって最適化された⼿法に基づき、将来の測定感度の推定を積分
輝度の関数として⾏った。統計誤差、系統誤差を考慮し、また将来の⾼輝度実験環境に対
する信号検出効率依存性や、バックグラウンドレートの変動可能性についても考察を⽰し
た上で、将来の測定感度を推定した。過去の実験が⽰す標準模型予想値からの逸脱が真だ
った場合、35 ab-1 の統計量により LFU の破れの現象を 5 標準偏差の有意度で発⾒可能で
あることを⽰した。更に将来のデータ解析において改善が必要な点を指摘した。
本研究によって、Belle II 実験における BàKl+l-崩壊分岐⽐測定⼿法が詳細に渡り研究さ
れた。信号選別効率、背景事象除レートの実機性能に基づく理解、解析の最適化が達成さ
れた。特に制動放射に対する電⼦のエネルギー補正や⼿法や機械学習を⽤いた背景事象削
減は論⽂提出者による独創的な成果である。11.5 fb-1 の衝突実験データを⽤いて崩壊分岐
⽐の上限値を算出し、従来の測定結果及び標準模型に基づく期待値と無⽭盾の結果である
ことを⽰した。また本研究に基づき、詳細な感度外挿の研究により LFU の破れの発⾒が
期待される積分輝度が推定された。素粒⼦物理学における最も重要な測定の⼀つであり学
術的な価値は⾼い。
なお本論⽂の研究は Belle II 実験で取得したデータを⽤い、Belle II 実験コラボレーショ
ン内での共同研究であるが、本論⽂のデータ解析は論⽂提出者が主体となって⾏い結果を
⽰したものであり、寄与は⼗分であると判断される。
以上のことから、論⽂提出者は博⼠(理学)の学位を与えるにふさわしい学識を持つも
のと認められ、審査委員全員で合格と判定した。

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