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大学・研究所にある論文を検索できる 「2,3,7,8-Tetrachlorodibenzo-p-dioxin母体曝露による次世代影響:発育障害と性未成熟のメカニズムと予防」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

2,3,7,8-Tetrachlorodibenzo-p-dioxin母体曝露による次世代影響:発育障害と性未成熟のメカニズムと予防

袁, 鳴 YUAN, MING エン, メイ 九州大学

2023.09.25

概要

九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository

Effects of maternal exposure to 2,3,7,8tetrachlorodibenzo-p-dioxin (TCDD) on the next
generation: mechanisms and prevention of
developmental disorders and sexual immaturity
袁, 鳴

https://hdl.handle.net/2324/7157320
出版情報:Kyushu University, 2023, 博士(創薬科学), 課程博士
バージョン:
権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (3)

(様式5)










論文題名



Effects of maternal exposure to 2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin (TCDD) on the
next generation: mechanisms and prevention of developmental disorders and sexual
immaturity ( 2,3,7,8-Tetrachlorodibenzo-p-dioxin 母 体 曝 露 に よ る 次 世 代 影
響:発育障害と性未成熟のメカニズムと予防)





:甲















妊娠期の母親がダイオキシン曝露を受けることにより、出生児に低身長、低体重、学習記憶能
力や低下性未成熟などの発育障害を惹起する。このように出生児発育障害の機構解明とそれに基づ
く解決策の構築は、現世代のみならず、未来の子供の健康を護る上で喫緊の課題である。当研究室
におけるこれまでの研究の成果により、ダイオキシン類による次世代の性未成熟は、胎児脳下垂体
の内分泌系撹乱することで生じることが明らかになっている。ダイオキシンの後世代毒性は、主に
乳児の下垂体における黄体形成ホルモンと成長ホルモンの低下、および母体ラットの下垂体プロラ
クチンの低下の 3 つのメカニズムで研究されてきた。臨界期の児の黄体形成ホルモンの減少は、成
長後の交尾行動などの性行動を抑制し、臨界期の児の成長ホルモンの減少は発育遅延を引き起こす
ことが当研究室の先行研究から明らかになっている。また、母性行動調節作用を有する育児ホルモ
ンである、母体下垂体プロラクチンの低下は低育児体質となり乳児の発育低下を引き起こすことが
確認された。これらの詳細なメカニズムの解明と予防法の確立が待たれる。
第一章では、妊娠 15 日目のラットには、2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin (TCDD)(1 𝜇𝜇g/kg)

を経口投し、コントロール群にはコーンオイルを投与した。コントロール群と TCDD 投与群の両方

をさらにそれぞれ 2 つのグループに分けた。これらコントロール群の 1 つと TCDD 処理群の 1 つに
は、𝛼𝛼-リポ酸による介入を行った。すなわち、TCDD またはコーンオイル処理を行う当日の朝から、

出産後 21 日目まで 0.05%

𝛼𝛼-リポ酸を含む飼料を与えた。新生児の肛門生殖突起間距離は、PND2

から PND21 までに測定した。雄児サンプルは出生後 28 日目で採集し、共焦点顕微鏡を用いて視床

下部に存在する雄優位な性的二型核(SDN-POA)の体積を評価した。雌児については、サッカリン嗜
好性を出生後 12 週で測定した。TCDD 母体曝露が、雄児の性成熟に及ぼす影響を解析した結果、肛

門生殖突起間距離が TCDD により短縮または短縮する傾向があり、性分化指標である SDN-POA の
体積が TCDD により有意に減少していることが明らかになった。これに対して、𝛼𝛼-リポ酸を補給す
るとこれらの変動は有意に改善した。すなわち、𝛼𝛼-リポ酸補給は、TCDD 母体暴露が誘発する雄児
の性未成熟に対して改善効果を及ぼすことが示唆された。次に、雌児の性的二型性を示す行動とし
て知られている雌特異的なサッカリン嗜好性を測定し、雌児の性成熟を評価した。雌はサッカリン
等の甘味成分を好む習性が雄に比べると高く、これに基づく評価法である。その結果、雌児のサッ
カリン嗜好性は TCDD 母体曝露によって大幅に減少し、𝛼𝛼-リポ酸補給によって回復することが明ら

かになった。すなわち、TCDD 母体曝露は次世代の性未成熟を惹起するが、臨界期からの𝛼𝛼-リポ酸
補給はこの阻害に対して有意な回復効果があることが示唆された。本章は、ダイオキシン曝露によ
り惹起される性未成熟に対する𝛼𝛼-リポ酸補給による回復効果を確認した。

第二章では、TCDD 低用量母体暴露された雌児の血中プロラクチン濃度が低いことの意義につ
いて考察した。具体的には、TCDD 毒性が泌乳期の雌児の乳腺発達、乳汁栄養組成、乳汁分泌量に
及ぼす影響を調べた。その結果、F0 の母獣を妊娠期に TCDD に曝露した場合は、F2 および F1 メス
から分泌される乳汁の総量をそれぞれ有意に減少させることがわかった。この減少は、プロラクチ
ン分泌の低下と一致する。また、F1 雌では、乳腺の発達の障害と授乳期の乳汁栄養組成の変化が確
認された。TCDD への F0 母体曝露により、F1 および F2 雌のプロラクチン量が減衰し、乳腺の発達
と乳汁分泌が抑制され、乳汁栄養タンパク質量が減少した。プロラクチンの減少による乳汁分泌不
足などの抑制作用は、新生児発育障害と雌児プロラクチンレベルの低下の原因になる可能性がある
と考えられる。これらの知見は、TCDD によって誘発される発育障害の世代間遺伝の新しいメカニ
ズムを提供するものである。
第三章では、発育障害の予防および改善を目指して、ダイオキシン母体曝露に誘発される F0
世代の育児期のプロラクチンと育児行動低下に対する aripiprazole 介入研究を実施した。Aripiprazole
はプロラクチンを抑制するドーパミン D2 受容体のパーシャルアゴニストである。ダイオキシン妊
娠期暴露が育児期の母獣のドーパミンレベルを上昇させるか否かは、現時点では不明であるが、ダ
イオキシンによりプロラクチンが抑制される事実から、プロラクチンの減少に対して回復効果を発
揮することを期待した。TCDD 投与群ではコントロール群に比べて育児期母獣の下垂体プロラクチ
ン mRNA 発現レベルが著しく低下し、先行研究の結果を支持した。Aripiprazole 介入によりこの抑
制が有意に回復された。同時に、授乳期の育児行動にはプロラクチンが重要であることから、代表
的な育児行動である児なめ行動 licking についても分析した。その結果、プロラクチンの発現低下と
合致して、TCDD 妊娠期暴露を受けた母ラットでは licking の実施時間が有意に減少し、aripiprazole
の介入によってこの抑制が有意に回復することを見出した。すなわち、aripiprazole の介入は、TCDD
妊娠期暴露による育児期の母ラットの低プロラクチンだけでなく低育児行動の回復にも有効であ
った。また、母親のプロラクチン発現と育児行動を回復させることで、TCDD 曝露された母ラット
から生まれた児の体長と体重が有意に回復した。本章の実験結果は、aripiprazole の介入により、母
親のプロラクチン mRNA 発現量を回復させ、母親の行動を改善することで、次世代の発育遅延を
改善できることを示し、TCDD による世代を超えた成長抑制と発達毒性における母体プロラクチン
低下の重要性を改めて検証した。また、これに加えて、TCDD 母体暴露により、母体のドーパミン
レベルが上昇している可能性も示唆された。
これらの検討を通じて、環境レベルのダイオキシンへの母体暴露により引き起こされることが
懸念される次世代の発育障害と性未成熟のメカニズムを明らかにし、予防に繋げたい。

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