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大学・研究所にある論文を検索できる 「Campylobacter特異的ファージを用いた食品におけるCampylobacter制御に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Campylobacter特異的ファージを用いた食品におけるCampylobacter制御に関する研究

古田, 宗宜 FURUTA, Munenori フルタ, ムネノリ 九州大学

2020.03.23

概要

Campylobacter は世界各国で主要な食中毒の原因菌であり、わが国でも細菌性食中毒の中で本菌による食中毒発生件数が最も多い。主な原因食品は、生または加熱不十分の鶏肉や鶏内臓であり、市販鶏肉の Campylobacter 汚染率は非常に高い。しかし、これまでに加熱以外で実用的な鶏肉の Campylobacter 制御法はなく、安全で効果的な非加熱制御法の開発が早急な課題となっている。そのような現状で、近年、食品微生物制御の新たな方法として溶菌ファージを利用した制御法が注目されている。溶菌ファージは、細菌に特異的に感染して溶菌を引き起こすウイルスであり、米国では、食品中の Listeria monocytogenes や Salmonella spp.などの制御剤としてファージ製剤の利用が認可されており、カナダやオーストラリアなど世界的に広まりつつある。ファージは特異性が高いため、国内で生産される食品に対して Campylobacter 制御剤として利用するためには、国内に分布している Campylobacter 株に対して有効な溶菌ファージを用いる必要がある。

そこで、本研究では、日本における Campylobacter 食中毒のリスク低減のため日本で分離される Campylobacter 株に対して制御効果の高い溶菌ファージを分離し、 それらを用いて新しい Campylobacter 制御法を構築することを目的とした。

まず、国内の市販鶏肉類を汚染している Campylobacter 株の分布状況を把握するため、市販鶏肉類および鶏腸から分離された C. jejuni 46 株および C. coli 7 株 (1株は牛肝臓由来) について、random amplified polymorphic DNA (RAPD) 法および自動化リボタイピング法 (AR 法) を用いて詳細に分類した。その結果、すべての菌株が両方法によって型別され、これらを組み合わせることによってさらに詳細に分類することができた。

次に型別された菌株のうち 10 株を指示菌として接種したプレストン増菌培地を用いた増菌法によって市販鶏肉類からCampylobacter 溶菌ファージの分離・精製を行った。その結果、市販鶏肉類 15 検体中 13 検体から 26 株の Campylobacter 溶菌ファージの分離に成功した。増菌法では宿主の選択が重要となるが、今回使用した宿主のうち C. jejuni L 26 株はファージに対して感受性が高く、宿主として優れた菌株であった。分離されたファージの性状について、溶菌スペクトルおよび培地中での C. jejuni 制御効果について解析した結果、溶菌スペクトルが広い PHC10 や溶菌スペクトルが比較的広く C. jejuni に対して溶菌活性が高い PHC22 は C. jejuni の制御剤として有望であると考えられた。また、分離されたファージのうち 5 株について行った透過型電子顕微鏡による形態学的観察の結果、これらは Caudovilales 目、Myoviridae 科に属するファージであると判定された。さらに C. jejuni に対してファージと食品添加物を併用した制御効果について調べた結果、C. jejuni のファージ耐性化を抑制する手段としてファージと EDTA との併用が効果的であることが判明した。

次に C. jejuni 制御剤として PHC10 および PHC22 を使用して市販鶏皮における効果的な C. jejuni制御法について検討した。その結果、鶏皮に Multiplicity Of Infection (MOI)=約 103 となるようにファージを添加して真空包装した場合、4℃で 1 時間目には C. jejuni 生菌数が減少した。特に PHC22を添加した場合では、2 桁以上生菌数を減少させることができた。したがって、鶏皮における C. jejuni制御剤として PHC 10 や PHC22 を使用する場合、少なくとも MOI =103 となるように添加した後、真空包装して 4℃で保存する方法が効果的であることが明らかとなった。

以上、本研究では国内の市販鶏肉から C. jejuni 特異的溶菌ファージを効率的に分離することができ、食品における Campylobacter の新しい非加熱制御法として Campylobacter 溶菌ファージを用いた制御法が有効であることを示した。本研究の成果は、我が国における安全な鶏肉の提供に繋がり、 Campylobacter 食中毒のリスク低減に大きく貢献するものと期待される。

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