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大学・研究所にある論文を検索できる 「Quantum chemical study of heavy benzene analogues and new theory for the planarity of unsaturated compounds」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Quantum chemical study of heavy benzene analogues and new theory for the planarity of unsaturated compounds

中村, 泰司 ナカムラ, タイジ 群馬大学

2021.03.23

概要

sp2 混成状態の炭素で構成された有機化合物の特徴的な構造特性として平面性があり、共役や芳香族性などの安定性の一因と見なされることも多い。一方で、14 族高周期元素のケイ素等で構成されたベンゼンやエチレン類縁体は平面構造を好まない。本研究ではこの差異について探求すべく、高精度な ab initio 分子軌道法及び密度汎関数法(DFT 法)を用いた理論的解析を行い、14 族高周期元素を含む不飽和化合物の新規平面性支配理論として Repulsion Dominant モデルと π 電子保有能の提案を行った。更に、実験的に未知の化合物であるヘキサシラベンゼン及び 1,3,5-トリシラベンゼンの合成戦略を見据えた分子設計の提案を行った。

論文第二章では、ベンゼンの骨格炭素を全てケイ素に置換したヘキサシラベンゼンの合成計画のための理論解析を行った。包括的な置換基効果の調査から、置換基間で水素結合またはスタッキング相互作用を形成しうる置換基の導入により、異性体に対するヘキサシラベンゼンの相対安定性を特異的に高められることが明らかとなった。一方、ケイ素を含む多重結合は非常に高反応性であるため、嵩高い置換基の立体保護により速度論的安定化を図る必要がある。しかし、異性体に対するヘキサシラベンゼンの相対(熱力学的)安定性は、置換基が嵩高くなるにつれて顕著に低下することが示された。そこで、この熱力学的安定化と速度論的安定化のトレードオフを解消する分子設計として、嵩高さに特定の方位性をもつ架橋置換基が、ヘキサシラベンゼンの熱力学的及び速度論的安定化を両立できることを明らかにした。

論文第三章では、ベンゼン類縁体の構造特性について、平面性を決定している因子を調査するため、エネルギー要素解析を行った。その結果、平面性を支配しているエネルギー要素はベンゼンとヘキサシラベンゼンとで異なることが示され、ヘキサシラベンゼンでは、電子間反発エネルギー項が平面性に特に重要であることが明らかとなった。さらに、本研究で提案した Repulsion Dominant モデル(RD モデル)により、高周期 14 族エチレン類縁体の平面性に関する既存理論である Carter-Goddard-Malrieu-Trinquier モデル(CGMTモデル)とは異なる視点から、高周期不飽和系の平面化機構の議論が可能となった。また、RD モデルをもとに置換基効果に関する調査を行い、強い π 受容性を示すボリル基(-BH2)のような置換基で六員環骨格上の π 電子量を減少させることにより、ヘキサシラベンゼンの平面化が実現することが示された。

論文第四章では、RD モデルの議論を発展させ、分子内 π 電子移動と平面性の相関を各種鎖状不飽和化合物で調査した。ここでは、不飽和結合を形成する骨格元素の種類に依存して、平面構造を維持した状態で保有できる π 電子量の閾値である π 電子保有能が定義できることを提案した。例えば、炭素は 1 個相当以上の π 電子を平面構造で保有できるのに対し、ケイ素やゲルマニウムでは 1 個未満の一定値までしか π 電子を保有できない。この考え方により、CGMT モデルよりも広範囲の不飽和系の平面性が説明可能となった。また、 π 電子保有能の値を指標として、π 受容性置換基効果で重原子上の π 電子量を減少させることにより、分子構造の平面性が制御可能となることが示された。

論文第五章では、Si/C 混合ベンゼンとその異性体に焦点を当てた。ベンゼンとその主要 な異性体であるフルベン、デュワーベンゼン、ベンズバレン、プリズマンにおいて、骨格 炭素を順にケイ素置換させることによる分子構造と相対安定性の変化を包括的に調査した。一連のフルベン、デュワーベンゼン、ベンズバレン類縁体においては、形式的な二重結合 数とその配置が分子構造と相対安定性に非常に大きく影響することが明らかとなった。一 方、プリズマン類縁体の相対安定性においては角度ひずみが主要な因子であった。また、 ベンゼンとヘキサシラベンゼンの中間化合物である 1,3,5-トリシラベンゼンの合成戦略に 必要となる情報を与えるべく、熱力学的及び速度論的安定性の調査を行った。解析結果よ り、1,3,5-トリシラベンゼンは付加反応、特に二量化反応に対して非常に高反応性であるこ とが示された。対する分子設計戦略として、異性化及び二量化の抑制に非常に有効となる 架橋置換基が提案された。

論文第六章では、フラグメント解析の考案を行い、炭素と他の高周期 14 族元素について sp3 環境と sp2 環境の比較を行った。理想的な sp3 環境と sp2 環境をとる解析対象として、ダイヤモンド型及びグラフェン型化合物をモデル結晶分子として用い、各結晶分子をフラグメント単位の繰り返し構造として捉えると、結晶分子の全エネルギーとフラグメント数から連立一次方程式を解くことにより、各フラグメントエネルギーが得られることを示した。この解析により、異なる 14 族元素により構成された種々のフラグメントに対して、sp3環境と sp2 環境の相対安定性を統一的に比較することが可能となった。さらに、炭素と高周期 14 族元素の混合特性を同様の手法により明らかにした。

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