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大学・研究所にある論文を検索できる 「カーボン系燃料電池カソード触媒の活性に対する湾曲網面構造の役割とそれを用いた高性能触媒設計」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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カーボン系燃料電池カソード触媒の活性に対する湾曲網面構造の役割とそれを用いた高性能触媒設計

亀山, 里江子 カメヤマ, リエコ 群馬大学

2020.09.30

概要

水素エネルギーは、化石資源に代わる証明する次世代のエネルギーとして期待が高まっている。そして、このエネルギーを基盤とする水素エネルギー社会の実現に向けて、水素を電気エネルギーに変換する燃料電池の普及が重要な課題である。固体高分子形燃料電池は、自動車用電源や定置用定置電源として期待される燃料電池の一種である。そのカソードには、酸素還元反応(ORR)を促進するために多量の白金触媒が用いられている。この高価かつ有限である資源である白金の使用による高コストが、固体高分子形燃料電池の普及の妨げとなっている。

群馬大学の尾崎純一研究室では白金代替触媒としてカーボンアロイ触媒の開発を行っており、日清紡ホールディングス株式会社との共同研究によって世界初の非貴金属カソード触媒を用いる燃料電池として実用化された燃料電池に使用された触媒が開発されている。このカーボンをベースとする一連の触媒の活性点については未だに理解できていない。従来、類似のカーボン系触媒の活性は、カーボン表面に導入された遷移金属元素やドープされた窒素などの異種元素に因るものとされてきた。本研究では、炭素構造そのものが活性点であるとの仮説に立脚し、その実験的な証明と、ORR 活性発現の理由を探ることを目的とした。さらに、上述の実機に搭載されたカーボンアロイ触媒についても詳細なキャラクタリゼーションを実施し、その活性点を解明することでさらなる高活性触媒を得るための設計指針を確立することも目的とした。本研究で得られた知見により、高性能カーボンアロイ触媒の開発が可能になると期待され、固体高分子形燃料電池の普及が、さらに進められるようになる。

本論文は6章からなり、本研究の背景と目的(第1章)、湾曲したカーボンが酸素還元活性を有することの証明(第2章)、高性能触媒設計指針の提示(第3、4 章)、実用化されたカーボンアロイ触媒の活性をカーボン構造で理解する(第 5 章)そして本研究の結論と今後の課題(第6章)から構成される。

第 1 章では、我が国における水素エネルギー社会実現の必要性とともに、水素エネルギー社会実現へ向けた固体高分子形燃料電池の普及の重要性を述べた。そして、その実現の鍵となる固体高分子形燃料電池に用いる白金代替カソード触媒と、その活性点に関するこれまでの議論を比較した。白金代替触媒の一つとして、群馬大学尾崎研究室で開発されたカーボンアロイ触媒、ならびにそれを応用した実用化触媒の活性点が未解明であることを述べるとともに、同研究室で提唱されているカーボン骨格構造が活性点を形成するという従来とは異なる仮説について説明した。これらをもとに、本研究の目的を明らかにした。具体的には、カーボンの骨格構造の観点からカーボンアロイ触媒の活性点の明確化とその作用機構の解明、これらに基づく高性能触媒の設計指針の確立である。

第2章では、フラーレン抽出残渣であるナノムブラック(フロンティアカーボン製)を原料とする研究結果について述べた。本章は、2 部に分かれ、前半では、ナノムブラックの酸化処理による湾曲網面抽出とその酸素還元活性の増加を検討、後半では、その熱処理による活性とカーボン構造・物性の変化を検討することで、ORR 活性発現に及ぼす、連続した湾曲網面の重要性を明らかにした。具体的には、透過型電子顕微鏡(TEM)観察、昇温脱離(TPD)、赤外線吸収スペクトル(IR)、X 線光電子分光法(XPS)などのキャラクタリゼーション手法を用い、炭素網面の湾曲程度とその連続性が ORR 活性に影響を与えることを明らかにし、カーボンが ORR 活性を有することを証明した。さらに、連続した湾曲炭素網面の形成が、ORR の素過程である酸素吸着特性と電子移動特性に影響し、それが ORR 活性を向上させる要因であることを明らかにした。

第3章では、連続した炭素網面を構築するための新しい調製方法に関する検討の結果を述べた。ここでは、窒素導入による湾曲網面の形成と、炭素化初期の脱水縮合促進による高分子化を進めることで連続した網面を作る、2 つの要素を組み合わせた方法を提案し た。具体的には、分子中に多量の窒素を含む葉酸を原料とし、リン酸を脱水縮合剤として用いた。この方法により、連続した湾曲炭素網面が得られ、高い ORR 活性が得られた。 XPS や振動容量法による仕事関数測定などのキャラクタリゼーションにより、触媒から反応物である酸素分子への電子移動が容易になることが示され、これが ORR 活性をもたらすことを明らかにした。このように、第 2 章で明らかにした設計指針に基づくことで高活性 ORR 触媒が得られることを実証した。

第4章では、連続した炭素網面の構築方法として、炭素化過程後期の脱水素反応を促進する金属塩化物を用いた方法を提示した。ここでは、原料としてポリ塩化ビニリデンを用い、そこに銅塩化物を添加したものを炭素化する方法を採用した。これにより、狙い通りに連続した湾曲網面が形成され、同時に ORR 活性の増加も認められた。酸素吸着特性とフェルミ準位測定より、この触媒には ORR の素過程である酸素吸着と電子移動過程を促進する効果があることが示された。また、本章では、炭素網面の湾曲程度と連続性を表す L/La というパラメータを導入し、ORR 活性が、このパラメータと良好な相関を持つことを示した。このことは、連続湾曲網面が活性点を形成する、という仮説を強力に支持するものである。

第5章では、実用化されたカーボンアロイ触媒のキャラクタリゼーションを行い、その活性が、上記と同様に連続した湾曲網面の存在に帰着されることについて述べた。特に、第 4 章で導入した、連続した湾曲網面を表すパラメータである L/La と活性の相関に合致することを明らかにした。このことは、当該触媒の ORR 活性が基本的には、連続した湾曲網面に基づくものであることを意味している。このように、連続した湾曲網面は、カーボン系触媒の ORR 活性発現に対して、大きく寄与することが示され、高活性触媒調製はパラメータ L/La を増加させるようにする、という設計指針を得ることができた。

第6章では本研究の総括と今後の展望について述べた。

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