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大学・研究所にある論文を検索できる 「妊娠中期ヒツジ胎仔へのアルギニンバソプレシン投与が臓器血流配分に与える影響の解析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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妊娠中期ヒツジ胎仔へのアルギニンバソプレシン投与が臓器血流配分に与える影響の解析

渡邊 真平 東北大学

2020.09.02

概要

[背景]
周産期新生児医療の進歩に伴い,出生体重 1,000 g 未満の超低出生体重児の生存率は過去 20 年間で大きく改善してきた.一方で重篤な合併症なく退院できる児の割合には大きな変化が見られない.また長期追跡することで,これらの児には運動障害だけではなく,認知障害,行動障害,学習障害などの問題も高率にみられることが明らかとなっている.こうした長期予後の改善は周産期新生児医療の喫緊の課題である.
妊娠中期の胎児は母体由来のコルチゾールを胎盤経由で受け取っているため,自らの副腎皮質でのコルチゾール分泌能に乏しい.そのためその時期に出生した未熟な早産児は潜在的な副腎不全状態であり,様々なストレスを契機に副腎不全を発症し,難治性の低血圧や乏尿に陥る.糖質コルチコイドの補充により治療されるが,低血圧による脳虚血が遷延すると深刻な脳白質損傷が誘導され,運動障害だけでなく,認知障害や発達障害の原因となる.そこで今日では脳血流の保護を目的としたアルギニンバソプレシン (arginine vasopressin; AVP) の投与が注目されている.しかし血管収縮作用をもつ AVP の投与の未熟な早産児における安全性は確立されていない.

[目的]
妊娠中期の未熟なヒツジ胎仔に AVP を持続点滴した際の臓器それぞれの血流量と血管抵抗値の変化から未熟な胎仔の AVP への反応性の特徴を明らかにする.またその結果から未熟な早産児における脳血流の保護を目的とした AVP 投与の有効性と安全性について考察する.

[方法]
ヒツジ胎仔の慢性実験系 (満期 147 日) を用いて実験を行った.妊娠 96-110 日に胎仔手術を行い,ヒツジ胎仔 (n = 9) の右腋窩動脈,大腿動脈,上大静脈,下大静脈,羊水腔内にカテーテルを留置した.72 時間の回復期間ののち,妊娠 99-113 日 (108.1 ± 4.4 日,ヒト妊娠 29 週相当) のヒツジ胎仔に AVP を 90器それぞれの血流量と血管抵抗値を,カラードマイクロスフェア法を用いて測定した.

[結果]
AVP の持続点滴により臓器血流量は,肝臓と延髄において有意に増加し (p < 0.05),副腎と心筋において有意に低下した (p < 0.05).一方で血管抵抗値は,副腎,腎臓,小腸,結腸,心筋,小脳において有意に上昇し (p < 0.05),有意に低下した臓器はなかった.小脳を除けば,脳内において血管抵抗値が有意に上昇した部位はなく,血流量は維持された.

[結論]
妊娠中期の未熟な胎仔において,AVP の持続点滴による脳の血管抵抗値の有意な上昇は認められなかった.しかし妊娠末期の胎仔とは異なり,副腎や心筋の血流量が低下する可能性が示唆された.よって未熟な早産児においても,AVP の持続点滴は脳血流の維持に有効と推察されるが,心筋の収縮予備能によっては副腎,心筋,腸管,腎臓の血流量低下に注意が必要である.

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