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大学・研究所にある論文を検索できる 「人工胎盤を用いた成育限界ヒツジ胎仔の生存管理に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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人工胎盤を用いた成育限界ヒツジ胎仔の生存管理に関する研究

臼田 治夫 東北大学

2021.03.03

概要

[背景]
人工呼吸管理を主とした新生児集中治療はここ数十年の間に著しい進歩を遂げ、早産児 (37 週未満) 全体の予後は飛躍的に改善した。しかし、依然として超早産児、超低出生体重児 (28 週以下、1000 g 未満) の死亡率および重度の呼吸器合併症、神経学的合併症の罹患率は改善が乏しい。人工胎盤療法は、そのような超早産児、特に妊娠 21-26 週の成育限界児の予後改善を目的とした、胎児に肺呼吸と新生児循環への適応を強制しない新たな治療法である。人工胎盤療法ではガス交換に胎児の臍帯血管に接続された膜性の人工肺を用い、胎児の中性温度環境を人工羊水で満たした人工子宮内で維持管理する。近年、妊娠中期 (ヒト 28-32 週相当、1500-2000 g)のヒツジやヤギの胎仔を用いた動物実験においては、人工胎盤療法による長期生存(最長 4 週間)の可能性が示された。しかし、人工胎盤療法をその最終的な治療対象である、より小さく、脆弱な超早産児に導入し、安定した生存管理を行うことが可能なのかという問いに対しては、未だかつて動物実験レベルにおいても全く科学的証拠が示されてこなかった。

[目標]
我々の開発した人工胎盤療法プラットフォームを使用し、妊娠日齢 95 日 (ヒト妊娠 24 週相当、600-700 g )のヒツジ胎仔を 120 時間、健康に生命を維持する。達成目標は主に i) 主要な生理学的項目の正常範囲内での維持 ; ii) 感染の予防 ; iii) 脳損傷 (出血、白質損傷)の予防 ; ⅳ) 妊娠月齢が一致する子宮内胎児 (対照群) と同等の成長とした。

[方法]
人工胎盤群として 8 例の妊娠 95 日 (満期 150 日) のヒツジ胎仔に人工胎盤療法を導入した。主要な生理学的項目を持続的に 120 時間記録した。定期的に臍帯動脈血液サンプルを採取し、血液ガス分析、総白血球数、白血球分画、炎症性サイトカイン濃度や血液培養を評価した。120 時間の実験期間終了後に、主要臓器 (肺、脳) を解剖学的、病理組織学的に評価した。対照群として 9 頭のヒツジ胎仔 (子宮内発育継続の胎仔)から妊娠 100 日でデータを採取し、人工胎盤群との比較対照に用いた。統計解析には分散分析を用いて、平均差の検定を行った。

[結果]
主要な生理学的項目を正常範囲内で維持した状態で、人工胎盤群 8 例の胎仔のうち 7 例 (87.5 %) が 120 時間の生存を達成した。対照群 9 例の胎仔と比較して、実験終了時 (修正妊娠日齢 100 日) の人工胎盤群の体重、頭殿長、肺および脳の重量に有意差を認めなかった (P > .05)。両群の総白血球数とその分画数、炎症性サイトカイン (TNFα、MCP1) の血漿濃度に有意差を認めなかった (P >.05)。 血液培養は人工胎盤群の全ての胎仔で好気性、嫌気性共に陰性であった。両群において肺組織の好中球数、CD3 (T 細胞マーカー) 陽性細胞数は増加しなかった。肺組織における炎症性サイトカイン (IL-1、IL-6、IL-8、TNFα および MCP1) の mRNA 発現は人工胎盤群と対照群で有意差を認めなかった。人工胎盤群の生存胎仔に脳室内出血を認めず、脳白質損傷は 1 例のみに認めた。

[結論]
本研究では、人工胎盤療法を用いて、成育限界胎仔の安定した 120 時間の生存管理と胎仔の成長を達成した。人工胎盤療法による成育限界胎仔の生存管理は世界で初めての報告となる。今後更なる改良は必要であるものの、過去数十年にわたり予後不良である成育限界児にとって、人工胎盤療法は予後改善につながる新たな治療法になり得るかもしれない。

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