Material design and process for functional polymeric materials with host-guest interaction
概要
【序論】
シクロデキストリン(CD)のホスト―ゲスト相互作用を高分子材料に取り入れることにより、高分子材料を機能化するこができる。本論文はCDを用いたホスト―ゲスト相互作用を利用した高分子材料の材料設計から実際の材料作製まで行い、各材料設計における注意点や特徴などを明らかにしている。
【アセチル化CD添加によるポリスチレンの強靭化】
最も簡単な系の図1aでは、ポリスチレン(PS)とアセチル化CDを複合化してPSの強靭化を達成した。3~4重量%のアセチル化CDの添加によりPSの強靭性が約4倍も向上した。アセチル化βCD(AcβCD)を添加した場合は弾性率の上昇なく強靭性のみが向上した。それに対してアセチル化γCD(AcγCD)を添加した場合は、強靭性の増加と共に弾性率も増加した。小角X線散乱法(SAXS)の結果によればPSとアセチル化CDは相溶できないため、アセチル化CDはPS中でドメインを形成する。また、走査型電子顕微鏡からもとアセチル化CDの添加による㎛スケールのドメイン形成を確認した。破壊された試験片を観察すると、形成されたドメインとPSの界面の剥離が起こることから界面でのホスト―ゲスト相互作用によって強靭化されると考えられる。よって界面の面積が最大になるとき、最も高い強靭性を示すと考えられる。
【遊星型ボールミル混合による機能性高分子材料の作製】
ポリエチルアクリレートを主鎖としてAcβCDを側鎖に有するホストポリマーとアダマンタン(Ad)を側鎖に有するゲストポリマーをそれぞれ合成して図1bの材料設計を作製した。その際、混合方法によって力学特性が異なることを明らかにした。動的粘弾性測定(DMA)結果、混合力の弱いキャスト法の場合は約10秒程度の緩和時間を示し、ボールミル法で混合した材料は約1秒と10倍も異なる緩和時間を持った。示差走査熱量測定(DSC)や共焦点レーザー顕微鏡から混合力が強い程高分子鎖の凝集体が減少し良く混ざっていると考えられる。また、SAXSから混合力の強い程、内部構造の回復性が高かったことから、混合力が強い程、凝集体が解れ高分子鎖の運動性が高く変形時のホスト-ゲスト相互作用の組み換えが容易に起こり、より強靭な材料となると考えられる。ボールミル法で混合した材料は高い分子運動性に由来する自己修復性とリサイクル特性も示した。
【遊星型ボールミル処理による高分子材料の強靭化】
AcβCDモノマーとAdモノマーをエチルアクリレート中で同時に重合することにより図1cの材料設計通りの材料を作製した。得られた高分子材料をボールミル処理することにより、強靭性は約3倍向上した。前章で重合後には高分子鎖同士の凝集体等があることを明らかにした。凝集体の存在はホスト―ゲスト相互作用を妨げ本来材料が有するはずの力学特性を制限すると考えられる。DMAやDSC、SAXSより、ボールミル処理により緩和成分が増えることと自由体積が減り、より簡単な構造となって可逆性の高い内部構造となることを明らかにした。
本研究はより材料設計学の土台は確立できた。特に、産業界へ展開性も考慮しており学術に留まらず社会にも貢献できると期待できる。