Design of polymeric materials with movable cross-links and their characterization
概要
【序章】
高分子材料作製において架橋点の分子設計が各種物性に大きく影響する。本論文は、シクロデキストリン(CD)を貫通した主鎖から成る可動性架橋を用いた材料設計に着目した。社会で広く用いられているビニル系高分子の強靭化は求められているが、これまでビニル系主鎖を軸分子に持つ可動性架橋は報告されていなかった。そこで、CDモノマーを出発物質に「重合過程で主鎖包接させて可動性架橋形成させる基本設計」を基盤に可動性架橋材料を作製し、特性評価を行った(Fig. 1)。
【二章:疎水性可動性架橋材料の作製とその力学物性】
1全アセチル化CDモノマーと疎水性液体主鎖モノマーの塊状共重合により可動性架橋形成を確認した。得られた可動性架橋エラストマーは応力分散性に基づき強いタフネスを示した(Fig. 2)。加えて主鎖モノマーのサイズ依存性および溶媒の有無に基づき、可動性架橋材料とCD修飾直鎖高分子を選択的な作製に成功した。
【三章:親水性可動性架橋材料の作製とその力学物性】
2重合過程で可動性架橋を形成させる材料作製手法の汎用性を確認するため、CDモノマーと親水性液体主鎖モノマーの無溶媒重合により親水性可動性架橋材料を作製した。含水率を調整した材料の引張試験を行った結果、可動性架橋による応力分散を発現するためには主鎖の運動性が必要であることを明らかにした。
【四章:可動性架橋異種高分子複合材料の作製とその力学物性】
CD修飾直鎖ポリマー存在下で主鎖モノマーの無溶媒重合を行い、可動性架橋により異種高分子間を連結した材料を作製した。得られた材料において、長い可動距離に基づく効率的な応力分散による強靭化に成功した。加えて、非相溶のPoly(ethyl acrylate)(PEA)とPolystyrene(PS)を可動性架橋で連結することにより、更なる強靭化とヤング率の向上を達成した。PEA相は高い運動性に基づき応力分散性を付与し、PS相はハードドメインとして寄与し、混合相により複数相の協奏的な働きを実現した。加えて導電性カーボンフィラーを複合し、延伸ひずみに応答して電気抵抗が変化するセンサーの構築も行った。
本研究は可動性架橋形成を土台に強靭性・高ヤング率材料の設計に成功した。汎用性高分子の強靭化の手法として、学術に留まらず社会にも貢献できると期待できる。