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大学・研究所にある論文を検索できる 「シロイヌナズナの環境ストレス応答に関わるRaf型プロテインキナーゼの機能解析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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シロイヌナズナの環境ストレス応答に関わるRaf型プロテインキナーゼの機能解析

神山, 佳明 カミヤマ, ヨシアキ 東京農工大学

2022.07.18

概要

植物は移動することができないため、外部環境に柔軟に適応するための様々な環境適応メカニズムを発達させてきた。乾燥や塩害、凍結などによる水分欠乏状態(浸透圧ストレス)に晒された植物では、植物ホルモンのアブシジン酸(Abscisic acid: ABA)が高蓄積し、生長抑制やストレス応答性の遺伝子発現、気孔閉鎖などの ABA 応答を誘導することで浸透圧ストレス耐性を獲得する。ABA シグナル伝達系の中枢経路は ABA 受容体(PYR/PYL/RCAR)、脱リン酸化酵素 (PP2C) 、プロテインキナーゼ(SnRK2)の 3 つの中枢因子から構成される。特に、ABA シグナルは SnRK2 による下流基質タンパク質のリン酸化により伝達されるが、SnRK2の活性化のメカニズムや下流の基質タンパク質などの全貌が明らかとなっているわけではない。

2015 年、蘚類ヒメツリガネゴケにおいて浸透圧ストレスおよび ABA 誘導性の SnRK2 の活性化が見られなくなる変異体(AR7)が単離され、その原因遺伝子名が“ABA and abiotic stress-responsive Raf-like kinase (ARK)”と名付けられた。ARK は植物に広く保存されている Raf 型プロテインキナーゼファミリーのグループ B3 に属しており、浸透圧ストレスに応答して SnRK2 をリン酸化し活性化させる重要な制御因子であることが明らかにされた。2020 年には種子植物シロイヌナズナにおいても、ARK のオルソログに相当する B3 グループに加え、B2 と B4 グループに属する複数の Raf 型プロテインキナーゼが冗長的に機能することで浸透圧ストレス誘導性の SnRK2 の活性化を仲介することが明らかにされた。このように近年の研究により B-Rafと SnRK2 から構成される制御系が浸透圧ストレス条件下における植物の ABA 応答の誘導において重要な役割を果たすことが明らかにされた一方で、グループ C Raf 型プロテインキナーゼの ABA 応答や浸透圧耐性における役割、また SnRK2 との関係性は明らかではなかった。

本論文では、SnRK2 とのタンパク質間相互作用スクリーニングにおいて同定された C5 グループの Raf36の機能解析を行った。BiFC や Y2H、Co-IP 法により SnRK2 と Raf36 が直接相互作用することを示した。続いて Raf36 破壊株(raf36)を確立し、その表現型を観察することで、raf36 破壊株は通常条件下で矮化表現型を示す一方で、ABA 存在下では ABA 高感受表現型を示すことが分かった。さらに、Raf36 の N 末端領域がSnRK2 に直接リン酸化されることを見出した。また、Raf36 と近縁な C6 グループの Raf22 も同様に SnRK2の基質であり、人工交配により作出した raf22raf36-1 二重破壊株がより増強した ABA 応答を示すことを見出した。さらに kinase-dead 型の Raf36 の相補試験や Western-blotting 法、比較リン酸化プロテオーム解析などの解析から、Raf36 は主に通常条件において細胞内に集積し、下流の基質タンパク質をリン酸化することで生育を促進すること、その一方で ABA 応答を抑制することを明らかにした。加えて、ABA 処理により Raf36タンパク質の分解が促進されることや、SnRK2 の活性化が生じなくなる PP2C の機能獲得型変異体(abi1-1)では Raf36 の分解が抑制されたことから、Raf36 は ABA 応答時に分解されることが分かった。つまり、近年浸透圧ストレス条件下における SnRK2 の上流の活性化因子として報告されたグループ B2/B3/B4 の Raf とは大きく異なり、グループ C の Raf は主に通常条件下で生長制御に関与しており、SnRK2 の下流で ABA 応答を抑制すること、またストレス条件下で活性化した SnRK2 は Raf36 をリン酸化しその分解を誘導することで生存戦略を生長促進から ABA 応答の強化へと転換させることを明らかにした。

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