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大学・研究所にある論文を検索できる 「Investigation of OLIG2 as a candidate gene for schizophrenia and autism spectrum disorder」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Investigation of OLIG2 as a candidate gene for schizophrenia and autism spectrum disorder

古田, 翔 名古屋大学

2022.02.28

概要

【緒言】
統合失調症(SCZ)は、思考、知覚、感情、言語、自己感覚、および行動の障害を特徴とする症状を伴う精神障害である。発症メカニズムの詳細は未だ不明だが、疫学的双生児研究では、SCZの遺伝率は約80%と推定されており、遺伝的要因が重要な寄与をしていることは確実である。自閉スペクトラム症(ASD)は、社会的相互作用とコミュニケーションの障害、および制限された反復的な行動を特徴とする神経発達症の一つである。ASDの遺伝率も約80%であり、多数の研究により、SCZとASDの両者は、発症の遺伝的要因に関して密接に関連していることが示されている。

オリゴデンドロサイトはミエリン鞘を形成して、中枢神経系の軸索にサポートと絶縁の役割を果たしている。これまでの候補遺伝子関連研究またはゲノムワイドなアプローチの知見から、オリゴデンドロサイト/ミエリン関連(OMR)の異常がSCZの病態に関わっていることが示唆されている。OMR遺伝子の1つであるOLIG2は、前駆体および成熟したオリゴデンドロサイトに影響を及ぼし、その発生と髄鞘形成に重要であり、さらにOLIG2異常がSCZ患者のいくつかの死後脳研究で報告されており、SCZの有力な候補遺伝子である。一方ASDの病態とオリゴデンドロサイトの関係は不明だが、オリゴデンドロサイトの異常に焦点を当てたASDモデル動物の分析が進行中である。

近年、SCZおよびASDサンプルを使用した大規模な全エクソームシーケンシングおよびコピー数変異(CNV)分析により、一塩基多型(SNV)やCNVなどの頻度の稀なゲノム変異が、ASDとSCZのリスクを高める重要な因子であることが示されている。これら稀なゲノム変異は大きな効果量を持ち、神経発達障害の病態理解に寄与する可能性がある。

以上を踏まえた本研究は、日本人ASDまたはSCZのリスクを高める可能性のあるOLIG2の稀なSNVに焦点を当て解析した。

【対象】
本研究では、2つの独立したサンプルグループを使用した。第一のグループ、370SCZ(196人の男性と174人の女性、平均年齢±標準偏差(SD)、49.7±14.8歳)および192ASD(149人の男性と43人の女性、平均年齢±SD、16.3±8.4歳)を対象に、SNVを探索した。第二のグループ、1447SCZ(836人の男性と611人の女性、平均年齢±SD、50.8±15.3歳)、380ASD(292人の男性と88人の女性、平均年齢±SD、19.2±10.2歳)、1472control(男性667人と女性805人、平均年齢±SD、41.2±16.1歳)を対象に、関連解析を実施した。すべての患者はDSM-5に基づきSCZまたはASDと診断された。健常controlは精神障害の既往歴または家族歴のないものを選んだ。すべての参加者(または未成年の場合はその親/保護者)に口頭と書面の両方で調査の目的と方法を説明し、同意を得た。なお本研究は、名古屋大学生命倫理審査委員会によって承認され、承認事項に則り、実施した。

【方法】
SCZ370名とASD192名の患者はOLIG2のエキソン領域を次世代シークエンサー(Ion Torrent)で解析し、頻度1%以下かつ各種データーベース(1000 Genomes Frequency、the Human GeneticV ariation Database (HGVD)、dbSNPBuild153、the Genome Aggregation Database (gnomAD)、the Japanese Multi Omics Reference Panel (jMorp)など)に収載されていない新規な変異を選出した。同定したレアバリアントをサンガー法で再確認し、SIFT、PolyPhen-2解析で評価した。次にはSCZ1447名、ASD380名、control1472名は関連解析(Taq Man Assay法)を行った。Genetic Association Study Power Calculatorを使用して、統計的検出力と有効なサンプルサイズを計算した。

【結果】
OLIG2エクソン内の1つの稀なミスセンス変異A33Tが同定された(表1)。Uni Protによると、A33TはbHLHドメインにはなかった(図1)。A33TはすでにgnmoADとjMorpに登録されていたが、他のデータベースでは見つからなかった。アミノ酸置換の構造と機能に対する影響の可能性を予測するために、A33Tのinsilico分析を実施した。SIFTはtoleratedを示し、PolyPhen-2はbenignを示した。A33Tの遺伝的関連解析の結果を表2に示す。同定したまれなSNVとSCZまたはASDとの間に統計的に有意な関連性は見出せなかった。Genetic Power Calculatorにより検討した結果、サンプルには十分な統計的検出力(beta>80%)があると判断したが、genotype relative risk(GRR)>7のみだった。

【考察】
562人のSCZおよびASD日本人患者に対してOLIG2のエクソンのSNVスクリーニングを実施し、1つのSNV(A33T)を検出した。次に、1827人(1447人のSCZおよび380人のASD)の症例と1472人のcontrolを対象に関連解析を実施した。その結果、本研究で同定したまれなSNVとSCZまたはASDとの間に統計的に有意な関連性は見出せなかった。

本研究にはいくつかの限界がある。第一に、我々のSNVスクリーニングサンプルは比較的小さかったので、OLIG2内に他のより有望なまれなミスセンス変異が存在する可能性を排除することはできない。さらに、現在の研究で使用された関連分析とサンプルに関して、Genetic Power Calculatorによる検討では、GRRが>7の場合にのみ、βレベルが80%以上であることが示された。この比較的高いGRRは、神経発達症に関連するまれな変異体のGRRが2であることを考慮すると、我々の研究のサンプルサイズが十分ではない可能性があることを示している。

【結語】
SCZまたはASDの日本人患者におけるOLIG2のエクソン領域のSNVを探索し、1つのまれなミスセンス変異(A33T)を同定したが、関連を見出せなかった。ただし本SNVの頻度が低いため、より大きなサンプルサイズが必要と考える。またOMR遺伝子内にあるまれなSNVの寄与を包括的に評価することに加えて、OLIG2以外の遺伝子(例:OLIG1、MOG、およびSOX)の詳細な検討が必要と考える。

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