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大学・研究所にある論文を検索できる 「Whole genome sequencing of 45 Japanese patients with intellectual disability」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Whole genome sequencing of 45 Japanese patients with intellectual disability

阿部(羽田野), ちひろ 名古屋大学

2021.08.25

概要

【緒言】
知的障害とは、発達期に生じる知的機能と適応機能の欠陥を含む病態で、有病率は一般人口の約 1-3%を占める。しかし、遺伝的異質性が高く、臨床症状に加え、生化学的検査、電気生理学的検査、画像検査、遺伝学的検査など複数の方法を組み合わせてもその病因を同定することは困難である。従って網羅的ゲノム解析など包括的な遺伝学的解析の有用性の検討が必要である。

【対象及び方法】
対象は国立精神・神経医療研究センターバイオバンク(NCNP バイオバンク)に登録された知的障害の症例で、身体所見や既存の検査から原因が未確定の 45 例を抽出した。血液由来の DNA を用いて Illumina 社 HiSeq2500 により全ゲノム解析を行った。リードは Burrows-Wheeler aligner を用いてヒト参照配列にアライメントし、Genome Analysis Toolkit によりバリアントをコールし、Annovar を用いてアノテーションを行った。これらのバリアントを、以下の基準で絞り込んだ。

① エクソンもしくは標準的スプライスサイトに存在するタンパクトランケイティングバリアントもしくはミスセンスバリアントであること。
② de novo もしくは X 連鎖性劣性遺伝形式のバリアントの場合は、ESP6500、1000 ゲノムプロジェクト、ExAC といった一般集団におけるバリアントデータベースに登録がないこと。
③ 常染色体劣性遺伝形式のバリアントの場合は、これらのデータベースにおけるアレル頻度が 10-3 以下であり、また homo 接合体の登録がないこと。
④ SIFT、Polyphen2、MutationTaster、CADD スコアの 4 つの疾患予測アルゴリズムのうち、少なくとも 3 つで病因性を示唆する結果であること。CADD スコアの閾値は 20 以上とする。

検出したバリアントの日本人におけるアレル頻度は Human Genetic Variation Database (HGVD) と Tohoku Medical Megabank Organization (ToMMo) を用いて検討した。 American College of Medical Genetics and Genomics におけるガイドラインで Pathogenicもしくは Likely Pathogenic と分類されるものについて、サンガー法でのバリアントの一致を確認した。また、独自のアルゴリズムを用いて、既知の知的障害関連遺伝子を含む構造多型を抽出しその病因性について検討した。本研究は国立精神・神経医療研究センターの倫理委員会の承認を受け行った。

【結果】
平均カバレッジデプスは 32X であり、99.4%以上の領域でカバレッジデプスは 5 以上であった。
7 家系において ADNP、SATB2、ANKRD11、PTEN、TCF4、IQSEC2、KCNA2 遺伝子に de novo バリアントを、2 家系において SMS,SLC6A8 遺伝子に母由来の X 連鎖性バリアントを、1 家系において SPAST 遺伝子に母由来の常染色体優性遺伝形式のバリアントを、AGTPBP1 遺伝子に両親由来の常染色体劣性遺伝形式のバリアントを検出した。これら 11 バリアントは病因と考えられ、うち 4 つは新規のバリアントであった。また 1 家系において DYRK1A 遺伝子を含む新規の 75,820 塩基の欠失を検出した。

【考察】
45 例中 12 例に病因と考えられるバリアントを検出した(検出率 27%)。De novo バリアントは 12 例中 8 例(66.7%)と高率であり、欧米諸国を中心とした既報告と合致した。全て異なる遺伝子の変異であり、本邦での知的障害患者においても遺伝的異質性が高いことが示された。

今回の解析はコーディング領域を対象としており、その検出率は、エクソーム解析やパネル解析を用いた既報告と類似していた。これは現在、全ゲノム解析における限界があるためと考えられる。例えば、非コード領域におけるバリアントの評価、トリプレット病におけるリピート伸長や低頻度モザイクの検出は困難である。また、構造多型を検出するアルゴリズムは複数開発されているが、全ゲノム解析のデータを基とした標準的な検出方法はまだ確立されていない。現在、全ゲノム解析のデータが蓄積されており、今後これらの検証に必要な一般集団における多型データベースや効果的な構造多型の検出ツールが確立されることで、全ゲノム解析による診断率の向上につながっていく可能性がある。

ADNP、SATB2、ANKRD11、SMS、DYRK1A におけるバリアントは新規のバリアントであった。ADNP の例では頻度の低い合併症である心臓の構造奇形を認め、医学的管理における診断の重要性が示唆された。SATB2 例では、既報告では典型的とされていた口蓋や歯の異常を認めず、臨床的多様性が示された。ANKRD11 例では同じく知的障害を有する弟では当該バリアントが検出されず、境界から軽度の知的障害においては同一家系であっても複数の病因が関与する可能性が示された。SMS 例では特徴的な骨粗鬆症とともに、合併症としては未報告の心臓の構造奇形が認められた。胎児期、成人期ともに心血管への発現が確認されており、その代謝産物は成人での循環器疾患治療への応用が示唆されていることから、SMS バリアントの心臓の構造奇形への寄与が示唆された。DYRK1A 遺伝子のエクソン 1、2 を含む欠失が同定された例では当遺伝子のハプロ不全をきたすと考えられ、その表現型は既報告と合致した。

【結語】
未診断の知的障害患者 44 家系のうち計 12 家系(27%)において病因と考えられるバリアントを検出した。うち 8 例が de novo と高頻度であり、過去の報告と合致した。また、知的障害における高い遺伝的異質性を確認した。全ゲノム解析によって構造多型から 1 塩基置換まで包括的に検出可能であったことから、知的障害の遺伝学的解析における全ゲノム解析の診断的有用性が示唆された。

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