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大学・研究所にある論文を検索できる 「Studies on Molecular Recognition and Supramolecular Polymerization of Bisporphyrin Cleft Molecules」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Studies on Molecular Recognition and Supramolecular Polymerization of Bisporphyrin Cleft Molecules

久野 尚之 広島大学

2022.09.20

概要

Chapter 1. General Introduction
平面性の芳香族分子を二つ繋いだピンセット型のホスト分子は、二つの芳香族部位に挟まれた空孔(クレフト)をもっており、スタッキング相互作用により種々の分子を包接する。特に、ポルフィリンは電子豊富な広い π 平面をもち、他分子と π-π スタッキングやドナーアクセプター相互作用を形成するため,分子ピンセット開発に広く利用されてきた。今回、二つのポルフィリンを繋いだピンセット型ビスポルフィリンの分子認識における会合挙動の解明及び超分子重合とその機能に関する研究を行った。

Chapter 2. Self-Complementary Dimer of Bisporphy- rin
ビスポルフィリン 1 は溶液中において π-π スタッキング相互作用を駆動力に自己二量化することがわかっていたが、その単結晶 X 線構造解析は成功していなかった。そこで、ビスポルフィリン 1 の結晶化を試み、構造解析を行った。結晶構造からイソフタルアミド間の分子間水素結合及びポルフィリンとイソフタルアミド間の π-π スタッキング相互作用により自己二量化していることがわかった。UV/vis 測定及びDFT 計算により分子内及び分子間電荷移動相互作用が示唆された。以上の研究から、ビスポルフィリンの二量化構造の詳細な知見が得られた。


Chapter 3. Host–Guest Complexation of Bisporphy-rin
ビスポルフィリンクレフト 2 は電子不足な芳香族分子を包接する。しかし、ホストゲスト錯化における詳細な知見は得られていなかった。そこで、様々な電子不足な芳香族分子とビスポルフィリン 2 の会合挙動を調べた。ゲスト包接に伴う熱力学パラメータをもとに解析を行ったところ、二つのエンタルピーエントロピー補償関係が成立していることがわかった (Figure2-2a)。G1,G2 を含む相関は、会合により得られるエンタルピーのほとんどをエントロピー損失で補償しており、タイトな包接構造を形成していることを示唆している。一方、G3,G4 を含む相関は、会合におけるエントロピー損失はエンタルピーの利得の半分程度であり、会合体においてもある程度自由度が担保された構造を形成していることを示唆している。したがって、2 のゲスト分子包接において、包接錯体の分子の内部自由度の違いにより二種類の包接挙動が現れることが明らかとなった。また、2 はキラルなゲスト分子の包接に伴い、ビスポルフィリンの片巻きのねじれが誘導された(Figure 2-2b)。励起子相互作用に基づき、(S)-G1 を包接した 2 は右巻きねじれ構造を形成していることがわかった。

Chapter 4. Host–Guest Complexation of Trisporphy-rin
三枚のポルフィリンを架橋することで、二つの空孔をもつトリスポルフィリン 3 を合成した。トリスポルフィリン 3 と様々な電子不足な芳香族分子との会合挙動を調べたところ、ゲスト分子がより電子不足であるほど、二分子目の会合が抑制される負の協同的錯形成を示した(Figure 4-2)。会合に伴うエンタルピー変化を求めたところ、より電子不足なゲストにおいて二段階目の会合により得られるエンタルピー変化が一段階目のものより減少していた。これは一段階目の会合により、もう一方の空孔の電子密度が減少することで、静電相互作用が減少したためであると考えられる。以上の研究から、ゲスト分子の電子不足度合いにより負の協同的分子認識が発現する系の構築に成功した。

Chapter 5. Ring–Chain Competition in Supramolec- ular Polymerization
ホスト分子とゲスト分子を連結した分子はホストゲスト錯形成を駆動に超分子ポリマーを形成する。このような分子は超分子重合において伸長過程とそれを阻害する環化過程が存在し、そのモデルを ring- chain メカニズムと呼ぶ。しかし、モノマーの分子構造が平衡に与える寄与を定量的に議論した例はほとんどない。そこで、ビスポルフィリンとトリニトロフルオレノン(TNF)を様々な長さのアルキル鎖で連結した分子 4a–d を合成し、その超分子重合挙動を調べた。1H NMR および DOSY 測定により低濃度において 4a,b は環状モノマーを形成し、4c,d は環状ダイマーを形成していることがわかった。そこで UV/vis 測定により 4a,b の分子内会合及び 4c,d の分子間会合における熱力学パラメータを算出した。会合に伴う配座エントロピーの損失はアルキル鎖が長いほど大きく、環状構造がより不安定であることがわかった。この初期段階における熱力学パラメータの違いは溶液の粘度応答において顕著に現れており、アルキル鎖が最も長い 4a の臨界重合濃度(CPC)は4.6 mmol L–1 で現れ、アルキル鎖が最も短い 4d は 16 mmol L–1 で現れた(Figure5-2)。これは、アルキル鎖の短い分子は環状構造がある程度安定であるため環化過程が超分子伸長過程を妨げていることを示唆している。以上の研究から、ring–chain 平衡における環化過程の寄与は、分子構造の剛直性が大きく影響を与え、その初期過程を定量的に評価した。

Chapter 6. Dual Redox-Responsive Supramolecular Polymer
電子豊富なポルフィリン分子の酸化状態は安定であ ることが知られており、電子不足な TNF は容易に還 元できる。また、ビスポルフィリンの酸化はゲスト分 子の包接を阻害することがわかっている。そこで head-to-tail 型分子 5 の酸化還元刺激に伴う超分子重 合挙動を調べた。5 は酸化剤を添加すると二つのポ ルフィリン部位がそれぞれ独立して一電子酸化され、還元剤を添加すると TNF 部位が一電子還元され、こ れらのラジカル種は溶液中において測定範囲内で安 定に存在した。溶液中における 5 の超分子重合挙動 を粘度測定により行った。比粘度の対数プロットに おいて、5 は 10.3 mmol L–1 を境に傾きの上昇が見ら れた(Figure 6-2a)。一方、酸化剤または還元剤を添加 した場合、傾きの変化が見られなかった(Figure 6-2b)。したがって、ポルフィリン部位の酸化及び TNF 部位 の還元により、超分子ポリマーの成長が阻害されて いるが示唆された。以上の研究から、酸化還元刺激に より重合と解離を制御できる刺激応答性超分子ポリ マーの構築に成功した。

参考文献

Helicity of a Polyacetylene Directed by Molecular Recognition of Biscalixarene and Fullerene.

Takehiro Hirao, Yoshiki Iwabe, Naoyuki Hisano, and Takeharu Haino Chemical Communications 2020, 56, 6672-6675.

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