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大学・研究所にある論文を検索できる 「コラーゲンビトリゲルを用いた新規肝細胞長期培養技術による薬物のヒト肝クリアランス予測に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

コラーゲンビトリゲルを用いた新規肝細胞長期培養技術による薬物のヒト肝クリアランス予測に関する研究

渡, 隆爾 筑波大学

2022.11.24

概要

目 的:
 医薬品候補化合物のヒト肝クリアランス(CL)をより正確に予測するには、生体内の肝臓に匹敵する肝機能を長期間維持できる新しい肝細胞培養法を開発することが重要である。しかし、従来の肝細胞評価系は、薬物代謝酵素として最も重要なcytochrome P450(CYP)の活性が培養数時間で低下し、かつ数日の短期培養しか行えないという課題があった。そのため、本研究では創薬に活用できる、従来法よりも高い肝代謝能(機能)を有し、その活性を長期間維持できる新規培養法の開発を目指すことを目的とした。

対象と方法:
 新規培養基材であるビトリゲル膜による細胞培養法の構築のため、ヒト肝キメラマウスから単離した新鮮ヒト肝細胞(PXB-cells)をビトリゲルおよび従来法であるコラーゲンコーティングプレート上に播種し、3週間の培養を行った。肝特異的機能を評価するために、肝臓で主要な5つのCYP分子種(CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、およびCYP3A)の活性を、従来の単層培養と新規ビトリゲル培養との間で比較した。また、肝機能の指標であるアルブミン分泌および尿素合成能の評価、また、細胞形態観察も実施した。さらに、肝機能が向上してくる培養14日目の状態において、ヒト肝CL予測精度の検証を行うため、CYPの典型基質である22化合物を用いて、ビトリゲル培養法により得られたinvitroヒト肝CLとヒト臨床で得られたNonrenalCLを比較し、予測精度を評価した。加えて、CYP以外の代謝酵素(Non-CYP)の基質となる16化合物のCL予測も実施し、その精度を検証した。

結 果:
 ビトリゲル膜上にPXB-cellsを播種し、3週間の長期培養過程で、従来法と比較して肝臓で主要な5つのCYP分子種(CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、およびCYP3A)の代謝活性が培養開始後14日~17日で向上することを見出した。また、肝機能の指標であるアルブミン分泌や尿素合成能も2週間の培養において向上していることが示唆された。ただし、2週間以降の肝機能維持に関しては課題が残った。また、これらの知見を受けて、ビトリゲル膜上で2週間培養した後、CYPの典型基質である22化合物を用い、ビトリゲル培養法により得られたin vitroヒト肝CLとヒト臨床で得られたNonrenal CLを比較し、予測精度を評価した。その結果、検討した化合物の約80%(18/22)について、in vivoとの乖離が3倍以内であった。加えて、Non-CYP基質化合物(16品)に関しても、予測精度3倍以内が約70%であった。

考 察:
 本研究では、PXB-cellsを用いたビトリゲル培養法により、肝機能の向上および医薬品候補化合物に対するヒト肝CLの予測精度を向上させることを目的とした。その結果、ビトリゲル培養法により、CYP代謝酵素活性を始めとする肝機能の賦活化、さらにヒト肝CL予測精度の向上が可能となった。これまでのヒトCL予測モデルは、肝細胞を3D化するスフェロイドや肝細胞と他細胞との共培養システムによる複雑な培養モデルが提示されていた。しかし、これらの培養系と比較して、ビトリゲル培養法は、ビトリゲル膜に肝細胞を播くのみの簡便な培養法であり、CYP活性などの肝機能を2週間以上維持でき、かつ、CYPのみならずグルクロン酸抱合酵素などのNon-CYPの基質となる化合物を含め、従来法では評価が難しい低CL型化合物の肝CLの予測が可能な系として構築することができた。本研究により構築したビトリゲル培養法は、非臨床における化合物の最適化に活用中である。
 近年の創薬では、代謝安定性の高い低CL型化合物やNon-CYPで代謝される薬剤候補が増加している。しかし、このような低CL型化合物やNon-CYPの基質になる化合物のCLの予測精度はいまだ低く、医薬品候補のCL予測精度不足による臨床試験での脱落を減少させるためには、予測精度の高い評価システムが必須となる。そのため、低CL型化合物やNon-CYP化合物の予測を本培養系で可能となったことは、今後の創薬活用にとって意義が高いと考える。
 また、ビトリゲル培養は肝機能を長期間維持することができるため、短期培養系では検出が困難なヒト特有の代謝物の検出・同定が期待できる。さらに、ビトリゲル培養システムは、反応性代謝物や長期培養処理による肝毒性の研究にも応用できる可能性が示唆された。

結論:
 ビトリゲル培養法は、CYP活性を含む肝特異的機能を2週間以上維持する優れた培養法であった。また、従来法では算出が難しい低CL型化合物の評価やCYPのみならずNon-CYPの基質となる化合物のヒト肝CLを高精度に予測できる有望なinvitroシステムであることが明らかになった。ただし、アルブミン分泌の肝機能維持が3週間以上は難しいこと、さらに、肝CL予測において、高タンパク結合率の化合物やNon-CYPでもアルデヒドオキシダーゼの基質化合物のCL予測への適応には注意する必要がある。なお、本培養法による肝機能賦活化メカニズムは不明である。よって、どのような機序で代謝活性が維持・向上したかを明らかにすることが今後の肝代謝研究の一助となると考え、今後はメカニズム解明に向けた研究を実施する。加えて、本ビトリゲル培養法をMicrophysiological Systemに適応することにより、より生体を模倣したシステムの開発も期待される。今後もビトリゲル培養法のさらなる創薬活用を検討していきたい。

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