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大学・研究所にある論文を検索できる 「薬物動態研究に端を発したCyp3a KOヒト肝キメラマウスの作製および薬物相互作用に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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薬物動態研究に端を発したCyp3a KOヒト肝キメラマウスの作製および薬物相互作用に関する研究

加藤, 弘太 筑波大学

2021.08.02

概要

医薬品の薬物動態研究とは,医薬品を投与したときの体内における挙動(吸収,分布,代謝および排泄)を検討することであり,開発研究段階の目的の一つとして,非臨床試験データからヒトにおける体内動態を予測することが挙げられる。旧来から実施されてきたマウス,ラット,イヌ,サル等を用いたin vivo動物実験はヒトの体内動態を予測するために貴重な情報を与えてきたが,ヒトと動物における種差の壁があるため,近年はヒト由来の組織,細胞,細胞成分等を用いたin vitro試験が多く実施されている。薬物代謝については,特にチトクロームP450酵素(CYP)が医薬品を含む様々な生体異物化合物の酸化的代謝において中心的な役割を果たしているが,CYPは同じサブファミリーに属していてもヒトと動物では性質が異なり,動物で得られた結果をそのままヒトに適用することはできないため,ヒト肝キメラマウス等のヒト化モデル動物を用いた薬物代謝の新規評価系研究が進められている。

アメナメビルは,ヘルペスウイルスのDNA複製に関与するヘリカーゼ・プライマーゼ複合体の活性を阻害する抗ウィルス薬である。本薬を動物およびヒトに反復経口投与すると高用量において血漿中未変化体濃度が減少し,酵素自己誘導が認められる。本研究では,アメナメビルの薬物動態として懸念される酵素誘導に端を発して,既存のin vitro評価法を補完し得る新規モデル動物としてCyp3aKOヒト肝キメラマウスの作製を試み,代表的なCYP誘導剤を用いた酵素誘導評価を行い,in vivoで薬物相互作用を評価できる動物モデルの創出を目的とした。

アメナメビル14C標識体を用いたヒトマスバランス試験やヒト生体試料を用いた代謝酵素の同定,阻害および酵素誘導に関するin vitro試験を実施した。その結果,本薬の主要な排泄経路は糞便であること明らかにし,ヒトマスバランス試験で採取した血漿,尿および糞試料を分析し,本薬のヒトにおける主な代謝経路を推定した。代謝物は主に水酸化,アミジノ化,ホルミル化およびグルクロン酸抱合により生成されることを明らかにし,ヒト主代謝物である一水酸化体R5を同定した。また,本薬の代謝に関与するCYP分子種をCYP3A4と同定し,本薬がCYP2C8に対して阻害作用を示し,CYP2C9およびCYP3A4に対して誘導作用があることを明らかにした。

薬物相互作用の原因の一つである酵素誘導作用は,併用薬の血中濃度の低下をもたらし,併用薬の薬効の減弱あるいは毒性の発現に関与する。現在,CYP酵素誘導能を評価するin vitro試験系として,培養ヒト肝細胞を用いて各CYP分子種のmRNA発現レベルや酵素活性の増加を指標とした試験が実施されているが,薬物の溶解度,細胞透過性や細胞毒性等の制限によって酵素誘導パラメータを正確に算出するための薬物濃度-反応曲線が容易に得られない場合等がある。近年,肝障害誘発マウスと免疫不全マウスを掛け合わせてヒト肝細胞を移植し作製したヒト肝キメラマウス(PXBⓇマウス)が開発され,薬物動態研究領域においてin vivo試験系モデル動物としての応用研究が試みられて多くの成果が得られている。一方,PXBⓇマウスはヒト肝細胞置換率が70%以上であるが,移植したヒト肝細胞によりホスト動物の肝臓を完全に置き換えることができないため,残存しているマウス肝細胞による影響を受けることが知られている。本研究では,アメナメビルの代謝および酵素誘導に関与するCYP3Aが薬物相互作用を検討するにあたり非常に重要な薬物代謝酵素であることをきっかけに,in vivoで薬物相互作用を評価できる動物モデルの創出を目指し,ヒト肝キメラマウスであるPXBⓇマウスで問題となっているマウス肝細胞による影響を抑える一案としてマウスCypの主要な分子種であるCyp3aに着目し,PXBⓇマウスを改良しマウスCyp3a遺伝子をノックアウトしたCyp3aKOヒト肝キメラマウスを作製することを試みた。比較対照のPXBⓇマウス,ヒト肝細胞を移植していないCyp3aKO/uPA/SCIDマウスおよびCyp3aKOヒト肝キメラマウスの肝臓または小腸における各ヒトCYP分子種やマウスCyp分子種のmRNA発現レベルやCYP3A代謝活性を測定して薬物代謝に関する基礎データを取得するとともに,CYP3A誘導剤のリファンピシンおよびCYP1A誘導剤のオメプラゾールを用いた酵素誘導試験を実施した。その結果,Cyp3aKOヒト肝キメラマウスの肝臓および小腸において,マウスCyp3a酵素が欠損し,各種マウスCypの発現レベルの増加が抑制されていることを見出した。一方,移植されたヒト肝細胞は肝臓に生着・増殖して各種ヒトCYPを発現していることを明らかにし,また,CYP誘導剤による酵素誘導作用を確認した。これらの結果から,Cyp3aKOヒト肝キメラマウスは,ヒト肝細胞に基づくヒト代謝系を備え,マウス細胞による内在性の肝および小腸代謝が有意に抑制され,ヒトin vivo薬物相互作用の予測モデル動物としての有用性が示唆された。

本研究成果は,アメナメビルの薬物動態研究を通じて薬物相互作用について検討し,さらに薬物相互作用研究のin vivo評価系としてCyp3aKOヒト肝キメラマウスを新規に作製し,本モデル動物を用いた酵素誘導評価法を示した重要な知見であり,医薬品研究開発の効率化の一助となることを期待するものである。

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