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書き出し

医薬品―微生物間相互作用の解明を目的とした医薬品一斉分析系の構築と実践

土谷, 祐一 TSUCHIYA, Yuichi ツチヤ, ユウイチ 九州大学

2023.09.25

概要

九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository

医薬品—微生物間相互作用の解明を目的とした医薬
品一斉分析系の構築と実践
土谷, 祐一

https://hdl.handle.net/2324/7157318
出版情報:Kyushu University, 2023, 博士(臨床薬学), 課程博士
バージョン:
権利関係:

(様式5)




:土谷

祐一

論文題名

:医薬品―微生物間相互作用の解明を目的とした医薬品一斉分析系の構築と実践



:甲

















【背景・目的】
医薬品の吸収、分布、代謝、排泄といった体内動態には個人差があり、その効果や副作用発現に
大きく影響することが知られている。この個人差には薬物代謝酵素や薬物トランスポーターなどが
関連するとして多くの研究が行われている。近年、腸内細菌がヒトの健康に様々な影響を与えてい
ることが明らかになりつつあり、その一つとして医薬品の効果・副作用発現への影響が挙げられる。
2019 年、Zimmermann らによってヒト腸内細菌叢由来の細菌株による医薬品の代謝活性スクリー
ニングを行った結果、従来考えられていた以上に多くの医薬品が細菌によって分解される可能性が
示されたことをきっかけに、より腸内細菌が医薬品に与える影響について注目が集まっている。
既報のほとんどが糞便中の細菌を用いる ex vivo 系にて医薬品の代謝を評価しているが、医薬品の
吸収部位となる小腸上部と糞便中では構成細菌の種類や細菌数が大きく異なることから、生体内で
の反応を正確に反映していない可能性がある。外部から摂取した細菌が生体内で医薬品に対して代
謝活性を示すかどうかについては明らかでないが、多くの整腸剤や発酵食品には糞便と同程度の菌
数である数億を超える細菌が含まれている上、その一部は回腸付近でも生残するという報告もある
ことから、経口摂取した細菌の一部は生きたまま腸管に到達し、医薬品の生物学的利用性に対して
一定の影響を示すものと推測される。
以上の背景から、本研究では医薬品と整腸剤や発酵食品由来の経口摂取可能な微生物間の相互作
用を切り口とした体内動態の個人差解明に関する研究を行い、医薬品の効果を落とすことなく効果
的な整腸剤や発酵食品の摂取方法を構築することを目指して、特に外部から摂取した細菌との接触
がある経口内服薬のうち投与量の管理が難しく、血中濃度の変化が治療効果に大きく影響する医薬
品を対象に、整腸剤・発酵食品由来細菌による医薬品の代謝活性の評価を行った。また、代謝活性
の評価に際して、LC-MS/MS 法を用いた医薬品の一斉分析系を構築し、そのバリデーションを行っ
た。
【方法・結果】
第一章 液体クロマトグラフィータンデム質量法(LC-MS/MS)を用いた医薬品の一斉分析系の構

第一章では LC-MS/MS 法を用いて 12 種類の経口分子標的薬(アファチニブ、アレクチニブ、ク
リゾチニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、レンバチニブ、ニロチニブ、
オシメルチニブ、ポナチニブ、ソラフェニブ)ならびに 2 種類の免疫抑制薬(タクロリムス、エベ
ロリムス)の生体試料における一斉分析系の構築を行った。
その結果、経口分子標的薬においては、1 アッセイ 7 分という短時間での測定に加え、1 種類のみ
の内部標準物質を用いた内標準法にて血漿中の全薬物が測定できることが示された。前処理法も蛋

1

白沈殿法を用いた簡易なものであることから、12 種類の経口分子標的薬を同時に迅速かつ効率的に
測定することが可能となった。
免疫抑制薬においては、1 アッセイ 5 分という短時間での測定を可能とした。全血中においてはタ
クロリムスとエベロリムスの 2 種類を同時に測定できることが示された。
本章にて構築した 2 つの分析系は米国食品医薬品局の提示するガイドラインに準じてバリデーシ
ョンを行っており、評価したいずれの項目においてもガイドラインの許容水準を満たす結果であっ
たことから、測定値の信頼性が十分に保証されているものと言える。
安定性の結果から、経口分子標的薬の測定系では、オシメルチニブが保管条件を決定する因子と
なり、室温で保管が困難であったが 5°C 保管で 6 時間または-30°C 保管で 3 日間保管可能であった。
また免疫抑制薬は室温下で 24 時間、5°C 保管で 72 時間、-80°C 保管で 4 週間の保管可能であった。
第二章 医薬品-微生物間相互作用の in vitro スクリーニングと消失機構の解明
医薬品-微生物相互作用について理解を深めるための評価系の構築を行い、検討を行った。
経口分子標的薬 5 薬剤と免疫抑制薬 3 薬剤に関して、経口摂取する可能性のある細菌数種類で in

vitro スクリーニングを行った。医療用医薬品であるビオスリー Ⓡ に含まれる Bacillus subtilis TO-A
は、経口分子標的薬であるオシメルチニブおよび免疫抑制薬であるタクロリムスならびにエベロリ
ムスの培地中薬物残存率をそれぞれ 65% 、17% 、21% まで低下させた。
薬物残存率が大幅に低下したタクロリムスとエベロリムスに着目してさらなる検討を進め、納豆
菌 Bacillus subtilis natto や標準株 Bacillus subtilis 168 でも同様の傾向が見られたことから、こ
れらの免疫抑制薬に対して Bacillus subtilis は代謝能を持つことが示された。

菌体内外いずれの成分が薬物の消失に関与するのかを探索するため画分を用いて検討を行い、タ
クロリムスならびにエベロリムスの残存率低下は主に菌体外に分泌される因子が関与していること
が示唆された。
代謝産物の網羅的探索を行ったものの、Bacillus subtilis TO-A による代謝産物の同定には至らな

かった。一方、医療用医薬品ミヤ BMⓇ に含まれる Clostridium butyricum によるタクロリムスの
代謝産物としてタクロリムスの[M+Na+2]+の m/z である 829 の化合物が検出された。m/z が 829

のピークは Bacillus subtilis TO-A を培養した培地からは見られなかった。また、今回検討を進め

た 2 種類の細菌はいずれも 13-O-Desmethyl tacrolimus への変換は行っていなかった。これらの結

果から細菌の種類により代謝経路が異なることが示唆された。
【考察・まとめ】
第一章で構築した 2 つの分析系は米国食品医薬品局の提示するガイドラインに準じてバリデー
ションを行っており、定量値への信頼性は十分に保証されているものであることが示された。し
たがって、薬物治療における薬物血中濃度モニタリングを可能とするばかりでなく、体内動態の
個人差が大きい免疫抑制薬と整腸剤や発酵食品由来の微生物との相互作用を切り口とした体内動
態の個人差解明に関する研究を進めていくにあたり、基盤となることが示された。
第二章で得られた一連の結果と外部から摂取した細菌の 8% は生きたまま回腸まで到達すると
いう報告から、納豆または整腸剤であるビオスリー Ⓡ とタクロリムスおよびエベロリムスを同時
摂取した場合、生体内でも同様に体内動態が変化する可能性が考えられた。今回得られた知見は、
経口摂取可能な微生物と医薬品間で相互作用が生じる可能性を示唆しており、さらに多くの情報
を取得することで、医薬品-微生物相互作用についての理解を深めることを可能とするものと期
待される。

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