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大学・研究所にある論文を検索できる 「A mathematical model of cultural evolution on a population network and its application to the analysis of spatial distribution of dialects」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

A mathematical model of cultural evolution on a population network and its application to the analysis of spatial distribution of dialects

高橋, 拓也 東京大学 DOI:10.15083/0002006721

2023.03.24

概要

論文審査の結果の要旨
氏名









本論文は5章からなる。第1章はイントロダクションであり、本論文の背景と目的につ
いて論じている。文化的多様性はヒトの大きな特徴であるが、文化進化理論において文
化、あるいは文化形質は、個体間で非遺伝的に伝達される形質として定義される。本論文
は、特に集団間での文化形質の伝播に主眼を置き、文化進化の空間的・時間的動態を記述
する数理モデルの開発と、文化形質の具体例として、言語地理学で観察されている言語の
拡散現象へのモデルの適用を目的としている。
第2章では、本論文で開発した数理モデルの基本的枠組みを導入するとともに、日本の
方言の地理的分布について指摘されてきた京都を中心とした同心円構造について、モデ
ルを用いた分析を行っている。集団を頂点、集団間の文化伝播の向きと強さを有向辺で表
したネットワークを考え、集団間の伝播確率行列によりネットワークを定義する。第2章
では、文化中心としての役割を担う単一の集団において異なる語形バリアントが次々と
生じることを仮定し、バリアントの周辺集団への伝播過程に注目する。数学的解析によ
り、平衡状態において各集団が保持するバリアントの古さの平均と標準偏差などの導出
に成功している。これらに基づき、文化中心の近くに新しいバリアントが、中心から離れ
るに従いより古いバリアントが同心円状に分布し得ることなどが明らかにされている。
第2章で得られた知見は、日本の方言に関して提起されてきた方言周圏論に数理的根拠
を与えるものである。
第3章では、第2章のモデルを拡張し、単一の文化中心だけでなく、ネットワーク上の
すべての集団で文化バリアントが生じる可能性を考慮している。このことにより、バリア
ントの古さに加えて、その起源集団(ネットワーク上のどの集団で生じたか)や伝播時間
についても定量的な扱いを可能にしている。集団遺伝学における遺伝子系図の概念を文
化現象に応用することにより、ある時刻にある集団で観察されるバリアントが、集団間の
伝播の経路を時間的に逆向きに辿って起源集団に至るまでの過程を、マルコフ連鎖とし
て定式化している。数学的解析により、平衡状態において各集団で期待されるバリアント
の古さの平均と標準偏差、および特定の起源集団に由来するバリアントの古さの平均な
どを導出している。また、これらの結果を用いて、集団のネットワーク上の配置が文化バ
リアントの古さや起源集団に与える効果を検討するため、ランダム・グラフを用いた数値
解析を行っている。これにより、多くの集団から文化形質を伝播される集団では新しいバ
リアントを保持しやすいこと、多くの集団に文化形質を伝播する集団で生じたバリアン
トは他集団において高頻度で保持されやすいことなどが示唆されている。
第4章は、二地点間の地理的距離と言語距離との関係を議論している。
「日本言語地図」
データベースに収録されている日本各地 2400 地点における 103 項目の語形データの分
1

析から、二地点間の言語距離(語形の Levenshtein 距離の平均)が地理的距離と強く相
関することや、地理的距離の増加に伴う言語距離の増加の勾配が、地理的距離の増加とと
もに減少することなどが見出され、従来から指摘されていた傾向が改めて確認された。ま
た、同じ 2400 地点の人口と相互の地理的距離のデータから伝播確率行列を構成して第3
章のモデルを適用することにより、任意の地点で見られる語形バリアントの起源地点や
古さの推定を行っている。例として東京で生じたバリアントが西方向より東方向により
速く伝播すること、京都で生じたバリアントは逆に東方向より西方向に速く伝播するこ
となどを予測している。さらに、語形の伝達、突然変異、個体学習を組み込んだ計算機シ
ミュレーションから得た 2400 地点間の言語距離の予測値を用いて、突然変異率、個体学
習率、地点間の相互作用範囲の指標を近似ベイズ計算により推定している。
第5章はディスカッションであり、本論文で開発した数理モデルを既存のモデルと比
較するとともに、その限界と今後の展望について論じている。
本論文は、文化進化の空間的・時間的動態を分析するための新たな数理的枠組みを提供
するものである。特に、文化バリアントの古さ、起源集団、伝播時間に関する定量的扱い
を可能にした点で新奇性が高い。主要な結論が、数値計算やシミュレーションによらない
数学的導出により得られており、一般性、拡張性が高いという点でも意義が深い。また、
言語の拡散現象へのモデルの適用により、言語地理学で提唱されてきた仮説が、どのよう
な条件の下で現象と整合的であるかを示した点でも価値がある。
なお、本論文第2章から第4章は、井原泰雄との共同研究であるが、論文提出者が主体
となって分析及び検証を行ったもので、論文提出者の寄与が十分であると判断する。
したがって、博士(理学)の学位を授与できると認める。

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