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大学・研究所にある論文を検索できる 「切除不能膵癌に対するGemcitabine/Nab-paclitaxel/S-1併用療法の第1相試験(GeNeS1S試験)」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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切除不能膵癌に対するGemcitabine/Nab-paclitaxel/S-1併用療法の第1相試験(GeNeS1S試験)

Sai, Satoshi 神戸大学

2021.03.25

概要

【背景】
膵癌は最も予後の悪い癌の一つであり、5 年生存率は 5%に満たない。膵癌の多くは、診断時にはすでに局所進行もしくは遠隔転移の状態であり、根治切除術の対象とならない。現在、切除不能膵癌に対する有効ながん薬物療法は少なく、膵癌患者の予後を改善するためにより高い抗腫瘍効果をもつがん薬物療法の開発が求められている。

切除不能膵癌に対する抗がん薬の標準治療として、FOLFIRINOX 療法、Gemcitabine + Nab-paclitaxel 療法、S-1 療法、Gemcitabine 療法が挙げられる。過去の大規模なランダム化試験において、Gemcitabine 療法と比較して、FOLFIRINOX 療法と Gemcitabine + Nab-paclitaxel 療法は優越性を示し、S-1 療法は非劣勢を示した。しかしながら、FOLFIRINOX 療法は強い血液毒性を伴い、現法通りの投与量では日本人には不耐であると考えられており、本邦の実地臨床においては減量投与が広く行われている。この減量投与の有効性に関しては、ランダム化試験において立証されておらず、安易な減量投与が適切な治療法であるか議論がなされている。また、Gemcitabine + Nab-paclitaxel 療法においては、Nab-paclitaxel の蓄積毒性である末梢神経障害が高頻度に出現し、神経障害によるしびれや痛みによる治療中止や投与量の減量を余儀なくされる。

こうした治療背景をもとに、進行膵癌に対するがん薬物療法として、より安全でより効果的な治療法が必要であると考えた。これまで、切除不能膵癌に対する第 2 相試験において Nab-paclitaxel + S-1 併用療法の有用性が報告されており、胆道癌においては第 3 相試験において Gemcitabine + Cisplatin 療法に対する Gemcitabine + S-1 療法の非劣勢が報告されている。これらの臨床試験から、Gemcitabine + Nab-paclitaxel 療法に S-1 を併用することでより高い抗腫瘍効果が得られるのではないかと仮説を立て、切除不能膵癌に対する Gemcitabine/Nab-paclitaxel/S-1 併用療法の最大耐用量と推奨用量を決定するために、第 1 相試験(GeNeS1S 試験)を立案した。

【方法】
切除不能膵癌と診断され、20 歳以上で原病に対して化学療法や放射線療法を施行されていない患者を対象とし、Gemcitabine と Nab-paclitaxel を 1 日目、8 日目に点滴で投与、S-1 を 2 週間経口投与し、これらの治療を 3 週間間隔で繰り返し施行するスケジュールで治療を行った。治療予定 期間は 6 ヶ月間(8 コース)とした。開始用量はレベル 0(Gemcitabine 700 mg/m2、Nab-paclitaxel 90 mg/m2、S-1 60/80/100 mg/日[<1.25m2 / 1.251.50 m2 /> 1.5 m2])と設定し、最初の1コースにおける用量制限毒性(DLT)の発現頻度に応じて投与レベルを調整し、最大耐用量を決定した。また推奨用量は、全てのレベルにおける DLT 発現内容、有害事象の発現状況を勘案して決定した。試験期間中の検査として、血液検査は DLT 評価期間である 1 コース目は 1 日目、8 日目、15 日目 に行い、2 コース目以降は 1 日目、8 日目のみ行った。画像検査は 8 週間毎に行い、RECIST ver1.1に従って腫瘍縮小効果の評価を行った。また毒性評価は CTCAE v4.0 に従って評価した。

【結果】
2018 年 3 月〜2019 年 10 月にかけて 2 施設から 20 人の患者を登録した。その内訳は、局所進行膵癌が 7 人、うち 1 人が切除後局所再発、遠隔転移性を伴う膵癌が 13 人であった。術前・術後補助化学療法を受けた患者はいなかった。

投与レベル 0 において、6 人中 3 人で DLT を認めた。DLT の内容は、1 人は 8 日目にグレード 3 の皮疹、1 人は 8 日目にグレード 3 の好中球減少、1 人は 8 日目にグレード 4 の好中球減少を認めた。投与レベル 0 は、DLT 発現頻度が 50%となったことから不耐と考え、投与レベル −1 (Gemcitabine 600 mg/m2, Nab-paclitaxel 90 mg/m2, S-1 50/70/80 mg/日)に減量した。レベル − 1においては、6 人中 2 人で DLT を認め、その内容はいずれも 8 日目のグレード 3 の好中球減少であった。安全性を確認するために投与レベル −1の拡大コホートを設け、さらに 8 人の患者を登録した。8 人のうち 2 人は、胆道ステントトラブルに伴う胆管炎により早期治療中止となり、DLT評価対象外となった。残り 6 人では DLT を認めなかった。最終的に、投与レベル −1において、 12 人中 2 人(17%)で DLT が観察され、投与レベル −1を最大耐用量と決定した。

また、20 人の患者の治療期間の中央値は 21.9 週間(2.7–26.0)であった。登録患者全体での有害事象は、グレード 3 以上の非血液学的毒性は食欲不振 5%、皮疹 5%、末梢神経障害 5%、胆管炎 5%であり、グレード 3 以上の血液学的毒性は白血球減少 25%、好中球減少 75%、発熱性好中球減少 10%、血小板減少 5%であった。グレード 3 以上の好中球減少の発現頻度が高かったが、そのほとんどがDLT 評価期間である1コース目の 15 日目において認められた。また、治療関連死は認めなかった。

DLT の発現頻度と 8 コースの全治療期間における有害事象を鑑みて、推奨用量は投与レベル −1に決定した。抗腫瘍効果としては、客観的奏効率が 58%、追跡期間中央値 16.4 ヶ月(6.0-29.5)において無増悪生存期間中央値は 7.6 ヶ月(4.3-10.5)であった。

【考察】
本試験では、切除不能膵癌に対する Gemcitabine/Nab-paclitaxel/S-1 併用療法の最大耐用量と推奨用量を調査した。投与レベル −1において DLT 発現率は 17%であり、これをもって最大耐用量を投与レベル −1に決定した。DLT の内容は、5 例中 4 例が好中球減少であった。有害事象に関しては、グレード 3 以上の好中球減少が高率でみられたが、このほとんどが DLT 評価期間である1コース目の 15 日目の血液検査において確認されており、2 コース目以降に関してはほとんど見られず治療に影響を及ぼすものではなかった。非血液学的毒性に関しては、懸念された Nab-paclitaxel の蓄積毒性である末梢神経障害を含め、グレード 3 以上の有害事象はほとんど観察されず、忍容性の高い治療であると判断できた。抗腫瘍効果として、登録人数が 20 人と少数ではあるが、客観的奏効率 58%と良好な奏効率を認めた。

標準治療である Gemcitabine + Nab-paclitaxel 療法において各薬剤の用量強度は、Gemcitabine 750 mg/m2/week、Nab-paclitaxel 94 mg/m2/week であり、それに対して本試験のレベル −1における各薬剤の用量強度は、Gemcitabine 400 mg/m2/week、Nab-paclitaxel 60 mg/m2/week、S-1 233/327/373 mg/week と低かった。3 剤併用療法ではあるが、各薬剤の用量強度が低くなることで、末梢神経障害を含む各薬剤の毒性軽減につながった可能性が考えられた。以上より、本臨床試験で実施した新たな併用療法は、レベル −1の用量において忍容性があり、かつ高い抗腫瘍効果が期待される。

【結語】
Gemcitabine/Nab-paclitaxel/S-1 併用療法において、投与レベル −1(Gemcitabine 600 mg/m2、 Nab-paclitaxel 90 mg/m2、S-1 50/70/80 mg/日)は忍容性があり、かつ抗腫瘍効果も期待できることから、推奨投与量であると決定した。現在、この投与量を用いて第 2 相試験を実施しており、安全性と有効性の確認を行っている。

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