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大学・研究所にある論文を検索できる 「Relationship of Quadriceps Muscle Thickness with Motor Paralysis and Muscle Echo Intensity in Post-Stroke Patients」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Relationship of Quadriceps Muscle Thickness with Motor Paralysis and Muscle Echo Intensity in Post-Stroke Patients

Maeda, Hisashi 前田, 久 名古屋大学

2020.04.02

概要

【緒言】
抗重力筋である大腿四頭筋の萎縮は、脳卒中発症後の患者で観察される。麻痺肢の大腿四頭筋は、非麻痺肢と比較して 24%小さいことが報告されている。脳卒中後の大腿四頭筋の萎縮は、運動麻痺に起因した不活動性の筋萎縮であると考えられている。また、骨格筋中の筋内脂肪や結合組織の割合にて規定される筋質は、磁気共鳴装置、コンピューター断層装置、超音波断層装置を用いることによって評価されてきた。筋質不良とは、骨格筋中に脂肪が多く含まれることを意味するが、脳卒中後においては、麻痺肢の筋内脂肪の割合が非麻痺肢のそれと比較して 4.9%高いことが報告されている。筋質不良は身体機能低下やインスリン抵抗性と関連するため、筋質や筋萎縮の改善は臨床上、重要であると考えられる。

脳卒中発症後の大腿四頭筋の筋質悪化や萎縮に関連する要因については十分に明らかにされていない。運動麻痺に起因した不活動が筋萎縮や筋質悪化の重要な関連因子であることが予想されるが、加齢、体格、栄養、炎症がそれらに関連することも予想される。大腿四頭筋の筋質や萎縮に関連する要因を検討することは、効果的な脳卒中リハビリテーション法の開発に寄与するものと考えられる。本研究の目的は、大腿四頭筋の筋量、筋質そして運動麻痺の関連について、年齢、体格、栄養、炎症の影響を考慮して検討することである。

【対象及び方法】
<対象と研究デザイン>
脳卒中発症後の片麻痺を呈した入院患者 36 名(男性 27 名, 女性 9 名)を対象とした(表 1)。重度な認知症、感覚性失語、運動器疾患、その他神経疾患を有する者は対象から除外した。本研究は横断研究であり、名古屋大学大学院医学系研究科生命倫理審査委員会の承認を得て実施した。

<筋厚及び筋輝度の評価>
超音波断層装置(LOGIQ e: GE Health care、Chicago、IL、USA)の B モード法を用いて(周波数: 10MHz、ゲイン: 80dB)、大腿骨大転子から外顆の中点(大腿骨長中央)における大腿前面部の横断画像を撮影した。麻痺肢と非麻痺肢の大腿直筋と中間広筋を合わせた大腿前面部筋厚と大腿直筋の筋輝度、さらに皮下脂肪厚を評価した。筋厚と筋輝度はそれぞれ画像 3 枚の平均値を分析に用いた。筋厚は筋横断面積や筋体積と正相関する筋量指標であり、筋輝度は筋内脂肪の割合と正相関する筋質指標である。筋厚と筋輝度の測定は全て同一検者が実施し、級内相関係数(ICC(1、1))は、それぞれ 0.98、0.94 であった。

<運動麻痺の程度の評価>
運動麻痺は Brunnstrom stage(BR stage)によって評価した。BR stage は 1 から 6 の順序尺度であり、高値であると運動麻痺が軽度である事を示す。

<その他の評価項目>
年齢、身長、体重、脳卒中発症後からの日数、血圧、性別、合併症、投薬数、栄養指標及び炎症指標(血清総タンパク、血清アルブミン、空腹時血糖、中性脂肪、総コレステロール、C 反応性タンパク)を電子カルテから抽出した。

<統計>
対応のある t 検定を用いて麻痺肢と非麻痺肢の筋厚、筋輝度、皮下脂肪厚を比較した。筋厚および筋輝度が、BR stage、年齢、体重、脳卒中発症後からの日数、血圧、皮下脂肪厚、投薬数、栄養指標、炎症指標とどの程度関連しているのかを単回帰分析を用いて検討した。その後、ステップワイズ多重線型回帰分析を用いて因子間の影響を考慮して筋厚、筋輝度、BR stage の関連を検討した。ステップワイズ多重線型回帰分析における独立変数は、単回帰分析によって筋厚や筋輝度との有意な関連が認められた BR stage、年齢、体重、血清アルブミン、平均血圧、投薬数、及び先行研究によって筋厚や筋輝度と関連すると報告されている皮下脂肪厚及び脳卒中発症後からの日数を投入した。有意水準は 5%未満とした。

【結果】
麻痺肢の筋厚は、非麻痺肢の筋厚と比較して 22%低値を示した(p<0.01)。麻痺肢の筋輝度は、非麻痺肢の輝度と比較して 10%高値を示した (p<0.01)(表 2)。

表 3 は単回帰分析の結果を示す。麻痺肢の結果を以下に示す。筋厚は BR stage、年齢、体重、血清アルブミン、投薬数と有意な関連が認められた。筋輝度は年齢、体重、平均血圧、投薬数と有意な関連が認められた。次に非麻痺肢の結果を示す。筋厚は年齢、体重、血清アルブミン、投薬数と有意な関連が認められた。筋輝度は年齢、血清アルブミン、平均血圧と有意な関連が認められた。麻痺肢と非麻痺肢いずれにおいても筋厚と筋輝度に有意な関連が認められた(表 3)。

表 4 はステップワイズ多重線型回帰分析の結果を示す。麻痺肢の結果を以下に示す。筋厚は BR stage、体重、血清アルブミン(R2= 0.81、effect size f2= 4.26、statistical power= 1.00)にて有意に説明することができた。筋輝度は筋厚、体重、平均血圧(R2= 0.61, effect size f2= 1.56, statistical power= 0.99)にて有意に説明することができた。次に非麻痺肢の結果を示す。筋厚は筋輝度と年齢(R2= 0.69、effect size f2= 2.23、statistical power= 1.00)にて有意に説明することができた。筋輝度は筋厚と平均血圧(R2= 0.65, effect size f2= 1.86, statistical power= 1.00)にて有意に説明することができた(表 4)。

【考察】
本研究の対象者の平均年齢は 65.0±13.7 歳であった。筋量は加齢によって減少する。本研究の対象者の筋厚は、先行研究で報告されている 72.0±5.0 歳の地域在住高齢者の同一部位の筋厚と比較して、麻痺肢は 32%、非麻痺肢は 12%低値であったことを考慮すると、脳卒中発症が筋萎縮に与える影響は大きいことを示す。また、筋厚は体重や血清アルブミンと有意な関連が認められた。以上の結果は、脳卒中後患者の筋萎縮は、加齢や栄養不良の影響も考慮する必要がある事を示唆する。

麻痺肢筋厚は、運動麻痺の程度の指標である BR stage によって説明することができた。本結果は、麻痺肢の筋萎縮が運動麻痺によって生じた不活動の程度に依存する事を示唆する。一方で、非麻痺肢の筋厚と BR stage には有意な関連が認められなかった。脳卒中発症直後から両肢では筋萎縮が生じるが、麻痺肢と非麻痺肢ではその後の経過が異なる事が報告されている。非麻痺肢では移乗、歩行、運動療法等によって筋量改善が認められるが、麻痺肢では発症 1 年後でも筋萎縮が回復していないことが報告されている。この違いは麻痺肢では随意的に筋を動かす能力が低下し、運動麻痺の程度に応じた不活動が筋萎縮を誘発するためだと考えられる。

本研究で認められた高筋輝度と筋厚の薄さの関連性は、高齢者や骨折患者において筋量が低いことと筋質不良は関連するという先行研究の結果と一致する。筋内脂肪は、インターロイキン-6 や腫瘍壊死因子-α などの炎症性サイトカインを分泌し、筋異化やインスリン抵抗性を誘発すると考えられており、筋質の改善は臨床上重要である。運動麻痺の程度は筋質不良の程度と有意な関連が認められなかったが、筋質指標である筋輝度と筋量指標である筋厚が関連したことから、レジスタンストレーニングや電気刺激療法、栄養介入を行うことによって筋量を増加させることは筋質維持に重要であるかもしれない。

【結論】
本研究結果は脳卒中発症後患者において運動麻痺、加齢、栄養不良が大腿四頭筋の萎縮に影響することを示唆する。また、筋質維持には筋量を保つことが有用な手段となる可能性が示唆された。

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