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大学・研究所にある論文を検索できる 「葉菜個体群の生理生態に基づく光合成および成長の評価」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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葉菜個体群の生理生態に基づく光合成および成長の評価

野村, 浩一 NOMURA, Koichi ノムラ, コウイチ 九州大学

2020.03.23

概要

生鮮野菜の施設生産では,求められる時限に,求められる量・品質の生産物を,安定した価格で提供する“四定”(定時・定量・定品質・定価格)生産の実現が期待されている.このためには,収穫の時期・量・質を決定づける“作物の光合成”に基づいた環境調節が必要である.しかしながら,実際の栽培現場において,“作物個体群”を対象にして光合成速度を実測することは,設備・労力の面から困難である.そこで本研究では,栽培現場で取得容易な環境と画像の情報を用いて,作物個体群の光合成と成長を非接触で長期間連続して評価可能な方法を,作物の生理生態に基づいて新たに開発し,その長期妥当性を検証した.

栽培現場での光合成速度の評価にあたっては,作物の個葉スケールの光合成推定モデルを構築したうえで,それを栽培現場の作物個体群スケールに拡張する必要がある.まず個葉スケールでの光合成速度を,光合成の生化学プロセス(電子伝達反応および炭素固定反応)を表すサブモデル,気孔反応を表すサブモデル,葉面での物質輸送を表すサブモデルの連立方程式を解くことによって,環境要素(光合成光量子束密度 PPFD,気温,湿度,CO2 濃度,葉面境界層コンダクタンス)のみから評価することを可能にした.また,個葉から個体群へのスケーリングアップは,葉群を「太陽からの直達光が照射する葉(sunlit 葉)」と「上部の葉の陰になり散乱光のみが照射する葉(shaded葉)」とに分割し,各葉群の光合成速度の和をとる“sun/shade モデル”により実現した.

Sun/shade モデルの適用性を実証するために,葉菜個体群を対象とした異なる方式の2種類の光合 成計測チャンバー(葉菜個体群を透明な箱で覆い,CO2 濃度の変化から光合成速度を評価する装置)を構築した.第一の光合成計測システムは,個体群を密閉した際の CO2 濃度の減少速度とチャンバー内容積との積から光合成速度を求める“閉鎖型”とした.閉鎖型チャンバーを採用する場合,チャンバー閉鎖直後の CO2 センサーの動特性(ムダ時間や遅れ)が光合成速度の計測誤差を生むことから,CO2 センサーの動特性の影響を理論的に考慮した光合成速度の実測法を新たに提案した.また,第二の光合成計測システムは,チャンバーに連続的に通気を行い,通気入口・出口の CO2 濃度差と通気流量の積から,個体群光合成速度を連続的に評価する“開放型”とし,個体群光合成速度を長期・連続的に実測する手法を確立した.このシステムに,葉菜の直下視画像(真上から撮影した画像)中の植物部と背景部の面積の比から,確率的手法によって葉面積指数(LAI)を評価する方法を組み合わせることで,個体群光合成速度および LAI の長期・連続・非破壊評価を実現した.

これらの方法をホウレンソウ個体群に適用し,異なる CO2 濃度下での個体群光合成速度および LAI を,定植直後から収穫まで,長期・連続的に計測した.その結果,個体群光合成の積算値と LAIおよび収量とが比例関係にあること,CO2 施用の効果は強光・高 LAI 時に特に大きいこと,地上部の夜間の呼吸量は日中の光合成量に依存すること,高 CO2 では個体群の水利用効率が増加すること, CO2 施用による高 CO2 環境下での個葉光合成能力(最大カルボキシル化速度,最大電子伝達速度)の低下は,生育期間が短いホウレンソウではみられないことなどを明らかにした.

さらに、環境要素および画像から評価した LAI を入力として,sun/shade モデルにより,個体群の光合成速度の評価を行った.その結果,環境・画像計測および sun/shade モデルを組み合わせることで,定植から収穫までの長期間にわたり,ホウレンソウ個体群の光合成速度を高精度で評価できることを明らかにした.これらの方法により,栽培現場において,取得容易な環境情報および画像情報のみから,個体群光合成速度と成長を長期・連続的に評価することが可能となり,葉菜個体群の積算光合成量とLAI とが比例することから,葉菜個体群の成長予測への応用の可能性も示唆された.

以上,本研究により,栽培現場で取得容易な環境・画像情報から,実際の栽培現場で適用可能な,葉菜個体群の光合成・成長の非接触・長期連続評価が可能になった.

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