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大学・研究所にある論文を検索できる 「Assessment of placental abruption with diffusion-weighted imaging」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Assessment of placental abruption with diffusion-weighted imaging

水谷, 輝之 名古屋大学

2022.10.24

概要

【緒言】
常位胎盤早期剥離(以下早剥と略)は、胎児娩出以前に胎盤が剥離する疾患である。一般的に、母親、胎児の両方に生命の危機を及ぶすが、早剥の中には、胎児 well-beingと母体健康が障害されない慢性に経過する早剥(以下慢性早剥と略)が存在し、診断、管理に悩む症例がある。早剥の 14.3%が妊娠 32 週以前に発症していることが報告されており、臨床的に安定している慢性早剥では待機療法が選択されることがある。待機療法中に病状が悪化する事があるにも関わらず、病態の理解が進んでおらず予測は困難である。
拡散強調画像(DWI)は、初期の虚血の検出において、従来の磁気共鳴画像(MRI)よりもはるかに感度が高いことが知られている。見かけの拡散係数(ADC)は、DWI シーケンスから導出された最も広く使用されているパラメーターであり、細胞外液コンパートメント内の水分子の動きに対する制限のレベルを定量的な情報として評価できる。近年、MRI が胎盤の in vivo 定量的非侵襲的評価にも有用なツールであるとの報告が増えており、胎児機能不全で胎盤 ADC 値が低下することが示されている。
この研究は、慢性早剥の病態生理学を理解するために、MRI の ADC 値を使用して評価できるかを目的とした。
【方法】
本研究は名古屋大学附属病院の倫理委員会の承認を得て行なわれている。日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院で 2013 年 9 月〜2017 年 6 月の間で妊娠 20 週以降に統一撮像プロトコールで MRI 検査を行った単胎妊娠の妊婦を対象とした。慢性早剥症例 8 例と、子宮筋腫、卵巣腫瘍合併妊娠の検索目的で MRI 検査を施行した 32 例を、後方視的に比較検討した。
その 40 人の母体年齢、経産の有無および生殖補助医療による妊娠、MRI 検査時の妊娠週数、帝王切開術の有無、妊娠高血圧症候群(HDP)の有無、喫煙者、抗凝固剤使用、羊水過多症、絨毛羊膜炎および早剥の既往歴、出生週数、出生体重、臍帯動脈血 pH の検討を行った。対照群の胎盤実質の ADC 値、慢性早剥群の胎盤実質の ADC 値及び胎盤剥離部位の ADC 値を計測した。統計解析には JMP Pro 15 を用いて、Fisher の直接確率検定、Wilcoxon の順位和検定、Student の t 検定を行った。
【結果】
患者背景として、母親の年齢、初産の割合および生殖補助医療による妊娠、臍帯動脈 pH は、対照群と早剥群の間で有意差を認めなかった。 喫煙者、抗凝固剤使用、羊水過多症、絨毛羊膜炎および早剥の既往歴のある患者を認めなかった。 対照群の MRI検査での妊娠週数は、早剥離の妊娠週数と有意差を認めなかった(中央値[ 範囲]、 33.5(18-38)対 30.5(21-36)週、p = 0.202)(Table 1)。妊娠高血圧症候群は早剥群で有意に多く、出生週数、出生体重は早剥群で有意に低かった(Table 2)。
対照群では、サークル測定による胎盤 ADC 値は、同一断面でのトレース測定によるものと強い相関を示した(Figure、r = 0.87、p <0.001)。一方、サークル測定では、サークルの面積のサイズは ADC 値と有意な相関関係を示さなかった(Fig1b)。サークルの測定における ADC 値は、臍帯付着部位からの距離によって示した(Fig1c、青線;対照群、赤線;早剥群)。すべての断面で、対照群の ADC 値は早期剥離群の早剥部位よりも高かった。各症例の平均 ADC 値を、対照群と早剥群で比較すると、早剥群の平均 ADC 値は、対照群の平均 ADC 値よりも有意に高かった(Fig1d、p <0.001)。
早剥群において、各断面の非早剥部位(緑線)と早剥部位(赤線)の間で胎盤 ADC 値を比較した(Fig2)。非早剥部位の胎盤 ADC 値は、すべての断面の早剥グループの早剥部位よりも一貫して高かった。
【考察】
本研究では早剥胎盤の ADC 値は、対照群と比較して有意に減少した。また、非早剥部位の胎盤 ADC 値は、早剥群の破裂部位よりも高かった。したがって、胎盤 ADC 値は、早剥群の胎盤後血腫上の胎盤で局所的に減少していた。
ADC 値の測定は、2 つの方法で評価した。サークル法による ADC 値はトレース法と強い相関関係にあることが確認できた。サークル法はトレース法よりも簡便であり、本研究の分析にはサークル法を採用した。サークルのサイズが異なることが懸念されたが、測定された領域のサイズは胎盤の ADC 値に影響を与えなかった。さらに、各断面についてサークル法で評価した ADC 値を測定した。ADC 値は、臍帯付着部を含む平面からの垂直距離に関係なく、各平面で同じ患者でほぼ類似しており、これは以前の報告と同様であった。
ADC 値は、さまざまな疾患の診断と評価に役立つ情報を提供することが示されている。胎盤 MRI では、ADC の低下は胎盤機能不全のマーカーとして知られており、これは胎児への酸素と栄養素供給の機能の低下を意味している。これらの発見は、早剥が胎盤機能の低下につながることを示唆している。早剥群の胎児低酸素ストレスを示す分娩時の臍帯動脈 pH に関するデータは、対照群のデータと有意な差はなかった。ほとんどすべての早剥症例の胎盤剥離部位が 10%未満であり、胎盤の非剥離領域が胎盤機能を補填している可能性を示唆している。早剥の危険因子としての HDP は、対照群よりも早期剥離群で有意に多かった。本研究では、HDP 患者の ADC 値は、早期剥離群の外れ値ではなく、結果に影響を与えなかった。
本研究の強みは、早剥における ADC 値を評価した事が初めてであるということである。第二に、単一のセンターで実施されたため、すべての例で MRI は同一プロトコールで撮像されており、MRI 条件の影響は最小限であった。
この研究にはいくつかの限界があった。第一に、母体および胎児の状態が安定している胎早剥の発生率が限られていたため、研究対象集団は非常に少ない。したがって、早剥重症度と ADC 値の関係を特定できなかった。第二に、この研究は後方視的であり、MRI の実施は各医師で決められていた。したがって、早剥群の早剥および非早剥領域の ADC 値が予後を予測し、待機療法の決定に役立つかどうかは不明である。より多くの集団で前向きに調査するには、同一プロトコルでの多施設共同研究が必要である。
【結論】
本研究で、初めて胎盤の早剥部位の ADC 値を評価した。対照群の胎盤 ADC 値と比較して早剥群の ADC 値は大幅に減少した。胎盤 ADC 値は、胎盤後血腫の上の胎盤で局所的に減少し、非早剥部位の ADC 値は、早剥部位の ADC 値よりも高かった。したがって、さらなる研究が必要となるが、待機療法における早剥の病態生理学を理解することは有用であると考えられた。

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