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大学・研究所にある論文を検索できる 「初発・再発膠芽腫組織を使用した腫瘍微小環境の変化の解析とテモゾロミド耐性TS細胞に対する抗PD-L1抗体+M2マクロファージ阻害剤併用療法の検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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初発・再発膠芽腫組織を使用した腫瘍微小環境の変化の解析とテモゾロミド耐性TS細胞に対する抗PD-L1抗体+M2マクロファージ阻害剤併用療法の検討

宮崎, 翼 筑波大学

2020.07.27

概要

目的
膠芽腫初回手術検体および再発手術検体における腫瘍細胞、免疫細胞の免疫チェックポイント分子を含む分子発現状態の変化を免疫組織化学的に解析し、膠芽腫再発における機序に免疫チェックポイント分子が関与しているかどうかを明らかにすることを目的とした。また、解析対象に免疫療法施行症例を含めることで、免疫療法後の再発組織における腫瘍微小免疫環境の変化を明らかにすることを目的とした。次に、膠芽腫においてテモゾロミド(TMZ)を用いた標準治療後に腫瘍幹細胞が残存した状況を再現するため、人工のグリオーマ幹細胞であるTS 細胞をTMZで長期処理することで TMZ 耐性 TS 細胞を樹立した。さらに、膠芽腫における免疫チェックポイント阻害剤の治療抵抗性の打開策として、TMZ 耐性 TS 細胞マウス皮下モデルに対し、PD-1/PD-L1 経路の阻害剤と免疫抑制性の M2 マクロファージの阻害剤を併用した際の治療効果の有無を明らかにすることを目的とした。

材料と方法
膠芽腫と診断され、初回手術後に標準治療を受け、その後 24 か月以内の早期に再発して再手術を受け、初回および再発手術検体が入手可能な 14-65 歳までの患者を選択し、合計 16 名の初回・再発検体を使用して免疫染色による解析を行った。このうち、標準療法に加え 4 例は自家腫瘍ワクチン療法を受けた症例を含む。次に基礎実験として、標準治療後の再発を想定して、人工グリオーマ幹細胞である TS 細胞を TMZ 濃度を漸増させながら長期間処理した TMZ 耐性 TS 細胞株を樹立し、細胞の増殖能、抗腫瘍免疫抑制関連分子の発現を解析した。さらに、マウス皮下モデルを作製し、腫瘍成長時の M2 Mφ浸潤を確認し、抗 PD-L1 抗体、IPI-549(M2 マクロファージ阻害剤)単独もしくは併用時の腫瘍成長の変化を調べた。

結果
初回・再発検体を使用した免疫染色による解析では、CD3、CD8 陽性細胞が初発時に比べ再発時に増加していた一方で、PD-1 陽性細胞も再発時には増加していた。また、再発時の PD-1 発現スコア中央値で 2 群化して、初発時からのスコアの変化を調べたところ、PD-1 高値群では全例が初発時に比べて再発時のスコアが増加していた。TMZ 耐性 TS 細胞は未治療の TS 細胞に比べ細胞増殖が遅く、MGMT 発現が増加していた。また、TMZ 処理後にもかかわらず、マクロファージ遊走や M2 M φ分化に関わるサイトカイン発現能が保持されていることが分かった。皮下腫瘍モデルではコントロールに比べ抗PD-L1 抗体で治療することによって腫瘍成長が抑制されたが、コントロールに比べ M2 マクロファージの浸潤が増加していた。抗 PD-L1 抗体と M2 マクロファージ阻害剤との併用により抗腫瘍効果が増強された。

考察・結論
腫瘍浸潤リンパ球のPD-1 発現やM2 マクロファージの浸潤による免疫抑制性の腫瘍微小環境が再発時には形成されていることが明らかになり、この変化が実臨床での免疫療法の治療抵抗性獲得の一因となっている可能性が示唆された。 M2 マクロファージ阻害療法は、この免疫療法を含む集学的治療後の治療抵抗性を克服する有望な治療選択肢であると考えられる。