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大学・研究所にある論文を検索できる 「新奇テルペン合成酵素の触媒する複雑環骨格形成機構に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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新奇テルペン合成酵素の触媒する複雑環骨格形成機構に関する研究

村井, 恵一 東京大学 DOI:10.15083/0002004925

2022.06.22

概要

背景・⽬的
テルペンとは、天然に約8万種の多様な構造の報告例がある天然物最⼤のグループである。テルペン類は、テルペン合成酵素によって複雑な多環⾻格と絶対⽴体化学が厳密に制御されて⽣合成される。この⾻格多様性と⽴体制御機構のため、テルペン類は多様な⽣物活性を⽰す。例えば、リモネンの⾹気活性、アルテミシニンの抗寄⽣⾍活性、タキソールの抗ガン活性など、環状構造の違いにより多様な⽣物活性が⽣み出されるため、その産業利⽤や創薬における潜在機能は計り知れない。しかし、細菌由来のテルペン合成酵素は酵素間の配列相同性が著しく低いこと、またそのほとんどが休眠遺伝⼦であるという問題点から、その解析例は少なく、現在までに約60種類が報告されているに過ぎない。そのため、細菌由来テルペン合成酵素遺伝⼦は巨⼤な未発掘遺伝⼦資源であると考えられる。本研究では、いまだ報告例の少ない細菌由来テルペン合成酵素の⼤規模な発掘と、それらの詳細な環化機構の解析を⽬的とした。

産総研原核⽣物ゲノムデータベースからのテルペン合成酵素の探索と機能解析
インハウス細菌ゲノムデータベースの全140株、1,242,605個のORFに対して、隠れマルコフ統計モデルで作成された酵素活性ドメインモデルによる検索を⾏なった。これによりテルペン合成酵素候補群として341個のORFを得た。さらにこの中から新奇性の⾼い酵素を抽出するため、BLASTを利⽤し既知の酵素群とごく低い相同性を⽰す53個のORFを抽出した。この53個のORFの⼤腸菌組換え酵素を精製し、炭素数10、15、20の3種のポリプレニル2リン酸基質を⽤いてinvitroテルペン合成活性試験を⾏なった。

その結果、33種の新奇酵素から34種の主反応産物を得た。これは現在までに機能解析された細菌由来テルペン合成酵素全数の約50%にあたる。このうち18種の反応産物については、ガスクロマトグラフィーのマススペクトルパターンライブラリーと各反応産物のマススペクトルとの⽐較により同定することができた。そのうちのNerol、β-Barbatene、γMaaliene、Dihydro-β-agarofuran、(+)-Bicyclogermacrene、Viridiflorolの6種については、細菌由来テルペン合成酵素によって初めて⽣産された反応産物であり、細菌由来の新奇テルペン合成酵素の発⾒となった。

またNMR解析により、得られたテルペン化合物の構造を、Pristinol、1-DeoxytrefolaneA[新奇化合物]、Versipropellanol[新奇⾻格化合物]、6-Methylharbanol[新奇天然物]、Fusagraminene[新奇化合物]、(+)-Neointermedeol、Selina-4(14),7-diene、Spata-11(18),14-dieneと決定した(図1)。さらに、X線単結晶解析と結晶スポンジ法の利⽤により5種類のテルペン化合物の絶対⽴体配置を決定した。それにより、Pristinolの絶対⽴体配置は2S,3R,9R、1-Deoxy-trefolaneAは2S,3R,6R,7S,9S、Versipropellanolは3S,6R,7S,10S、6-Methyl-harbanolは1R,6S,7R,8Sであることが判明した。また、NMRとの併⽤により1-Deoxy-trefolaneA合成酵素の微量副産物を(2S,3R,6S,7R,10S)-Koraiolと決定した。これらの構造情報をもとに、各テルペン化合物の⽣合成機構を推定した。

安定同位体標識基質を⽤いた真菌由来Trichobrasilenolの環化機構の解析
⽷状菌TrichodermaatrovirideFKI-3849のテルペン合成酵素TaTC6は、Trichobrasilenolを合成することが本研究室で明らかとされていた。Trichobrasilenol⾻格については、紅藻や担⼦菌から、その部分構造を持つテルペン化合物の単離報告がされていたが、その環化機構については研究が⾏われていなかった。またテルペン化合物に特有のイソプレン単位が保存されていないことから、1酵素によって触媒される環化反応の過程で複数の特異な炭素-炭素結合の組み換えが起こることが推定された。そこでまず、同位体標識基質を⽤いたNMR法により再度Trichobrasilenolの⽴体構造を確認したところ、これまでに報告されていた部分構造の⾻格とは異なる⽴体配置をもつことが判明した。

また基質となるFPPの全ての炭素を1箇所ごとに13CラベルしたFPPを合成し、TaTC6と反応させることで、基質から反応産物への変換に伴う炭素の移動を追跡した。その結果、6,7,8,9位間における2回の炭素間結合の切断と2回の炭素間結合の形成を観測した。副⽣成物としてAfrican-1-eneが同定されたことから、Africanylcationを経由し、4回の⽔素の転位によって⽣合成される機構を推定した(図2)。この推定環化機構を検証するため、2Hと13Cで同時に標識したFPPを反応に⽤いることで、重⽔素転位により新たに形成される2H–13C結合に由来した13CNMRスペクトルの化学シフトとカップリングを観測した。その結果、推定した環化機構と同様にそれぞれ9位から10位、2位から3位、6位から2位、9位から6位への重⽔素の13C標識位置への転位を観測した。これはTrichobrasilenolの環化機構を強く⽀持するものであり、⾻格形成に伴う特異な炭素⾻格組換え機構が明らかとなった。

擬天然型合成アナログ基質を⽤いたテルペン環化反応
Cyclooctat-9-en-7-ol合成酵素であるCotB2をモデルケースとして複数の合成アナログ基質でのinvitro反応を⾏ったところ、E,Z異性体、フッ素化体、炭素鎖のアミド結合置換体など複数の合成アナログ基質でCotB2による環化反応産物が観察された。特にGGPPの6位をアミド結合で置換した合成アナログ基質の反応産物についてNMR構造決定を⾏い、その構造を1-10、9-13位で閉環が⾏われた擬天然環状テルペンアルカロイドであると決定した。

総括と展望
本研究では、データベースから隠れマルコフ統計モデルを⽤いてBLAST検索ではヒットしないような相同性の低いテルペン合成酵素の発掘を試み、新奇なテルペン合成酵素を33種発⾒し、NMRと結晶スポンジ法により速やかに絶対⽴体配置を含めて構造決定した。さらには同位体標識基質を⽤いることで、炭素-炭素間の組み換えや⽔素移動を含む複雑な環化機構を明らかにした。

今後はゲノムデータベースを拡張してテルペン合成酵素を発掘し、その詳細な環化機構解析を⾏うことで、これまでに⾒いだされてこなかった化学反応機構の発⾒が期待できる。また、本研究で構築したテルペン合成酵素の探索系を発展させることで、今回ターゲットとしなかった異なるクラスのテルペン合成酵素やDNAライブラリーの迅速な探索・解析が可能になる。さらには、合成アナログ基質とテルペン合成酵素ライブラリーを組み合わせることで、構成原⼦を炭素と⽔素のみに限らない多数の擬天然テルペン化合物を創製する⽅向への研究展開も可能である。

本研究はテルペン合成解析における探索から反応機構解析までの問題の全てを解決し、またテルペン合成酵素の理解を⼤幅に進め、より多様で複雑なテルペン⾻格の創製を実現するための重要な基盤になりうる。

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