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書き出し

イネ分裂組織におけるCNバランスのモニタリングを介した生長制御機構の解明

深井, 千隼 筑波大学

2023.09.04

概要

博士論文要旨

属 理工情報生命学術院生命地球科学研究群 農学学位プログラム
学 籍 番 号 202030244


名 深井 千隼

論文題目 イネ分裂組織における CN バランスのモニタリングを介した生長制
御機構の解明
窒素 (N)の施肥は食糧増産の最も重要な要素の一つである。イネ(Oryza sativa L.)はアジ
ア・アフリカ地域で主要作物に位置づけられており、昨今の肥料価格高騰の影響を鑑みた際
に、より少ない施肥で収量を保つような N 利用効率(NUE)の高いイネ品種の開発が求め
られている。 高 NUE 達成のひとつとして、N 同化能がどのような機構で生長制御に関与
するかを解明する必要がある。イネは無機態 N としてアンモニウムイオンを利用すること
ができる。硝酸態 N は植物に取り込まれた後、地上部における光合成由来のエネルギーを
元にアンモニウムイオンまで還元され、その後有機体 N へ変換される。一方で、アンモニ
ウム態 N はそのまま有機体 N への変換がなされるため、イネにおける N 同化能を評価し
やすい。先行研究において、水耕液中のアンモニウムイオン濃度を変化させてイネの草丈や
根長を評価する実験は過去にあるが、生長速度の比較によって N 同化能を評価したものは
存在しない。また、アンモニウムイオン濃度を変えるにあたり、その都度移植を伴う実験が
ほとんどである。多くの濃度変化処理で用いられる移植では、瞬間的にアンモニウムイオン
濃度の急変を生じるが、実際の圃場環境下では徐々に変化していくと想定される。そこで、
アンモニウムイオン濃度変化でのイネの生長速度を評価するにあたり、いかに他のストレ
ス要因を取り除けるかが重要となる。
細胞質内のアンモニウムイオンの同化にあたっては、Glutamine Synthetase 1 (GS1) と

NADH-Glutamate Synthetase (NADH-GOGAT )が働くことが知られている。GS1 はイネ
の中に 3 種類あるとされており、OsGS1;1、OsGS1;2、OsGS1;3 として、それぞれの機能
や局在性に関しての研究が試みられている。OsGS1;1 は全体に広く分布するものの、地上
部生長の起点となる茎頂分裂組織や成熟葉にとりわけ多く存在すると報告がある。加えて、
イネ登熟期における N 転流に関与することが明らかにされており、OsGS1;1 機能欠損変異
体 (Osgs1;1)では生育不良と種子重量の低下が確認されている。さらに、Osgs1;1 の生育初
期にアンモニウムイオンを与えることで、バイオマスが著しく減少することも報告されて
いる。しかしながら、アンモニウムイオン十分条件で Osgs1;1 が見せる表現型である分げ
つ過剰と地上部の萎凋の原因は未だ不明である。OsGS1;2は根や腋芽に局在し、特に根に
おけるアンモニウムイオンの初期同化に関わることが明らかにされており、OsGS1;2 機能
欠損変異体を用いた解析ではイネ幼苗のバイオマスと分げつ数の減少が確認されている。

OsGS1;3 は発芽初期及び登熟中の種子のアリューロン層に局在すると報告されている。

OsNADH-GOGAT に関しては OsNADH-GOGAT 1 と OsNADH-GOGAT 2 が存在し、
OsNADH-GOGAT は OsGS1;2 と 共 に ア ン モ ニ ウ ム イ オ ン の 初 期 同 化 に 関 わ り 、
OsNADH-GOGAT 2 は OsGS1;1 と共に N 転流に関与することが明らかになっている。さ
らに、GS と GOGAT は協調して N 同化を行うにあたり、C 代謝とのリンクもあることか
ら CN バランスの維持に対して大きな役割を担っている可能性も指摘されている。OsGS1
アイソザイムコード遺伝子のうち、茎頂分裂組織に多く存在する OsGS1;1 が N 同化を介し
た地上部に対する生長制御で中心的な役割を果たすと考え、着目した。
本研究はアンモニウムイオン濃度変化処理下での表現型と遺伝子発現に着目し、品種間
差や野生型 (WT)と Osgs1;1 の比較を通じて、アンモニウムイオンの同化を介した地上部
に対する生長制御機構の解明を行った。そのために、本研究では地上部の生長速度から N
同化能を評価でき、かつ実際の圃場環境下に近い濃度変化を与えられるようなスクリーニ
ング法を開発した。本法によってイネ品種が持つ地上部の生長速度として表現されるNU
Eの違いを見いだすとともに、N 同化関連遺伝子の挙動を品種間で比較することでNUE
の高いイネの育種にあたっての基礎知見を得ることを目標とした。さらに、先行研究で明ら
かになっている Osgs1;1 の生育初期にアンモニウムイオン十分条件下で示す分げつ過多と
地上部の萎凋に注目し、OsGS1;1 の機能解析を行なった。
第 2 章一部では、圃場環境を再現した形でアンモニウムイオン濃度変化処理を与えるこ
とが可能な栽培系とオリジナルのアプリケーションを用い、連続的な地上部の伸長量を評
価可能なスクリーニングシステムを開発した。さらに、世界イネコアコレクション 69 品種
を対象にスクリーニングを行い、地上部の伸長量変動パターンに基づいて分類した上で、各
パターンを代表する 3 品種に対して N 同化関連遺伝子の発現解析を行った。その結果、

OsGS1;2 は品種間で異なる発現挙動を示し、OsGS1;2 がアンモニウム濃度下での地上部の
伸長量変動パターンを推定するマーカーと成り得ることを明らかにした。
第3章二部では、WT と Osgs1;1 の第 3 葉齢期・第 4 葉齢期までアンモニウムイオン十
分条件下で栽培し、基部及び根に対して Agilent microarray による発現解析を行った。分げ
つ性に関与する発現変動遺伝子に着目した結果、オーキシン輸送タンパクをコードする

OsPIN1c と OsPIN1d の発現低下がアンモニウム十分条件下で示す分げつ過多と地上部の
萎凋に関与する可能性を見いだした。さらに、CRISPR/Cas9 で作成した OsGS1;1 機能欠
損変異体変異体でも過剰な分げつ地上部の萎凋が見られたことから、この表現型が

OsGS1;1 の不在化で特異的な表現型であることを明らかにした。栽培の途中でアンモニウ
ム十分条件から水に移した際の WT では、そのままアンモニウムイオン十分条件で栽培し
た WT に比べて OsGS1;1 の発現が著しく増加し、かつ OsPIN1c と OsPIN1d の発現も上
昇した。水処理を行った WT では低 N 応答として知られる分げつ数の低下と、地上部の伸
長鈍化が認められた。一方で、Osgs1;1 では水処理の有無による OsPIN1c と OsPIN1d の
発現上昇は認められなかった。ことから、OsGS1;1 が OsPIN1c と OsPIN1d の発現制御を
介して水処理下での分げつ抑制に関わる可能性を示した。

本論文では一連の実験を通じて、栽培時のアンモニウムイオン濃度に対するイネの形態
変化と茎頂分裂組織周辺における発現変動遺伝子に着目することで、イネが外部のアンモ
ニウムイオン濃度変化を感受し、OsGS1;1 および OsGS1;2 がモニタリングの実行者とし
て働く N 同化を介した生長制御機構を有することを明らかにした。さらに、アンモニウム
イオン飢餓条件での OsGS1;1 の生長制御機構がオーキシンシグナルを介して行われる可能
性を見いだした。 ...

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