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Studies on green stem disorder and vegetative storage proteindynamics in field-grown soybean [Glycine max (L.) Merr.]

Zhang, Jiuning 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k24655

2023.03.23

概要

Studies on green stem disorder and vegetative storage protein dynamics
in field-grown soybean [Glycine max (L.) Merr.]
圃場条件下におけるダイズの青立ち現象と栄養器官貯蔵タンパク質の
動態に関する研究

Zhang Jiuning
京都大学大学院農学研究科農学専攻 作物学分野

第一章 緒言
ダイズ[Glycine max (L.) Merr.] はマメ科の一年性作物で、食料、油糧、飼料として広く
利用される。ダイズの生産量は世界ではこの 20 年間で約 2 倍に増えたが、日本では単収
が低く自給率も 6%にとどまる。そのため、モンスーン気候区分にありながら湿害が起き
やすい水田転換畑での栽培が主流であり、なおかつ伝統的に大粒品種が嗜好されてきた日
本では、独自の収量制限要因の解明と品種・栽培技術の改善が強く求められている。ダイ
ズの青立ちは、莢が褐色となる成熟期に葉や茎が緑色・水分を残す現象で、減収、機械収
穫の効率低下、種子品質低下をもたらす。その発生原因として、病虫害や高温・乾燥など
の生物・非生物学的ストレスが指摘されているが、なお不明な点が多い。加えて、青立ち
は成熟期に達観で判断されるため、迅速・客観的な診断技術が求められている。一方ダイ
ズでは、葉や茎などの栄養器官に Vegetative storage protein (VSP)が蓄積することが早くか
ら見出されている。VSP はシンクが不足した個体の葉に大量に蓄積し、登熟期に莢に転流
されることから、貯蔵タンパク質としての機能を持つと考えられている。また、シンクが
不足すると栄養器官に窒素が残留して青立ちを起こすことから、VSP の蓄積が青立ちの
指標になることが期待された。そこで本研究では、乾燥や過湿などの生産現場で生じやす
い土壌水分変化と青立ちとの関係を検証し、圃場条件下での VSP 動態との関係を明らか
にすることを目指した(第二章)。また、シンクサイズを任意に制御できる摘莢 (Depod)
処理により、シンク制限強度や処理時期を変えて、シンク制限が青立ちと VSP 動態に及
ぼす影響を調べた(第三章)。さらに、以上の結果を踏まえて総合考察をおこなった(第
四章)。本研究は、様々な環境要因が大きく変動する圃場条件下で青立ちと VSP の関係
を初めて解明したものであり、VSP をマーカーとする青立ち早期診断技術開発の可能性
1

を示すとともに、圃場における青立ち発生抑制に関する基礎的知見を得ることを目的とし
て実施された。

第二章 土壌水分変化が青立ちと VSP 蓄積に及ぼす影響
まず、VSP 動態を簡便かつ精度よく調べるための定量系を構築した。大腸菌発現系を用
いて高濃度・高純度の VSP 標準タンパク質を調製する一方で、VSP を特異的に認識する
VSP 抗体を作製した。2 cc のマイクロチューブを使って採取した葉片からタンパク質を
抽出し、ドットブロット法またはウエスタンブロット法を用いて VSP を 0.1 – 1 µg または
5 – 40 ng の範囲で定量できた。一方、葉身全タンパク質を Bradford 法または SDS-PAGE
法により定量することで、相対 VSP 含量(VSP 含量/葉身全タンパク質含量)を算出し、
VSP の動態を評価できるようにした。
次に、開花始期 (R1)、莢伸長始期 (R3)、および子実肥大始期 (R5)からの土壌乾燥条件
が乾物分配と青立ちに及ぼす影響を明らかにするために、2017 - 2018 年に、早生品種ユキ
ホマレを用いたポット乾燥試験を行った。全ての年次・乾燥処理区においてシンクサイズ
(莢数)が対照区よりも減少したが、実質的なシンク・ソース比 (莢重/シュート重) の
減少が見られたのは 2017 年のみであり、同時に強度の青立ちが見られた。2018 年は青立
ちしなかったが、ユキホマレのように高緯度地域に適応した早生品種の発育は生育気温の
影響を受けやすいと考えられ、同年では乾燥処理後まもなく成熟期に達したために余剰な
ソース蓄積が起きなかったと推察された。
上述の通りポットによる土壌乾燥処理が青立ちを起こし得ることが確認されたため、次
に圃場条件下において土壌の乾燥または過湿処理を行った。タチナガハ(青立ち感受性品
種)と東北 129 号(青立ち抵抗性品種)を2列に栽培し、条間に堀った溝に水をためる過
湿区、水を速く蒸発させるめに畦上げした乾燥区および対照区を設けた。タチナガハはい
ずれの処理区でも青立ちをしたが、年次・処理により青立ち程度が異なった。東北 129 号
はいずれの処理区でも正常に成熟した(青立ちしなかった)。両品種とも最上位完全展開
葉における VSP の動態に処理間差が認められなかった。しかし、VSP の動態は品種・年
次間で異なり、青立ちが特に顕著だった 2018 年タチナガハで子実肥大期間の相対 VSP 含
量が高い傾向が見られた。これにより、青立ちの評価に VSP が有用である可能性が示唆
された。
2

第三章 摘莢処理によるシンク制限が青立ちと VSP 蓄積に及ぼす影響
圃場条件下で青立ちを安定的に再現させるため、シンクサイズを任意に制御できる
Depod 処理をした。まず、2016 年にユキホマレをポットで栽培し、継続した Depod 処理
によって青立ちが起き、VSP 蓄積量が増加することを確認した。その後、圃場条件下にお
いて、Depod 処理の処理時期(R5 と R3)や処理強度を変えて、青立ちと VSP の関係を調
べた。
2020 - 2021 年に慣行播きまたは遅播きしたタチナガハと東北 129 号において、R5 から
莢数を半分に維持する Depod 処理[R5(1/2)]を施した。両年とも東北 129 号では Depod
区のみ青立ちが発生したが、タチナガハは対照区でも青立ちをし、その青立ち程度は 2020
年の慣行播きと 2021 年の遅播きで高かった。即ち、対照区のタチナガハは年次と作期に
よる環境変化の影響を強く受けた。一方、両品種とも安定して青立ちを起こした Depod 処
理は茎重を増加させる傾向にあった。加えて、相対 VSP 含量が、対照区でも R3 から 14
~21 日目頃に一時的に増加することを初めて見出した。その原因の 1 つとして、R3 から
R5 におけるソース増加速度がシンク増加速度よりも遅れて最大に達することが考えられ
た。R3 から 28 日目以降の相対 VSP 含量は、対照区では減少したが Depod 処理区では増
加したことから、青立ちと VSP 動態の間の関連が示唆された。
2019 年にユキホマレ、タチナガハおよび東北 129 号を用いて、R3 から莢数を半数に維
持 [R3(1/2)]、2/3 に維持 [R3(1/3)]、R5 に単発で半数減 [R5]する Depod 処理を行った。R3
からの継続 Depod 処理[R3(1/2)、R3(1/3)]により、ユキホマレと東北 129 号では青立ち程度
が増加したものの相対 VSP 含量に処理間差は認められなかった。ユキホマレと東北 129
号ではシンク制限処理強度が強くなるほど青立ち程度が高くなった。一方、タチナガハで
は対照区を含め処理によらず青立ちを起こしたが、相対 VSP 含量はシンク制限が強くな
るほど高かった。従って、青立ちと VSP 動態の対応関係は品種により異なることが示唆
された。前述のように R5 からの継続 Depod 処理[R5(1/2)]では余剰なソースが茎に蓄積
したのに対し、R3 からの Depod 処理[R3(1/2)、R3(1/3)]では、莢数は減少したものの莢重
はその後回復した。すなわち莢が余剰ソースの受け皿になったことが示唆された。R5 か
ら 14 日目頃までにシンクサイズが確定するとされることから、生物・非生物学的ストレ
スによる一時的なシンク制限からのシンク回復、即ち青立ち回避可能性は生育ステージに
3

より変化すると考えられ、青立ちの早期診断ではこのことに注意する必要があることが示
唆された。

第四章 総合考察
本研究では、圃場において土壌水分含量を変える実験と Depod 処理によりシンク・ソ
ース比を変える実験を行い、両要因とも乾物分配を変えることを介して青立ちを起こしう
ることが明らかになった。VSP の動態に関して、土壌水分による直接的な影響は不明瞭だ
ったが、R5 からの継続 Depod 処理は圃場条件下で安定的に青立ちを再現でき、同時に R3
から 28 日目以降に VSP が増加することが示された。そして、VSP は圃場条件下の対照区
で R3 から 14~21 日目頃に一時的に増加することを初めて見出した。本研究で構築した
定量系で評価される青立ち個体における VSP の変化は、葉身クロロフィル含量(SPAD)
より早く、また mRNA よりも簡便に検出できることから、VSP をマーカーとした青立ち
診断技術の開発の可能性が示唆された。ただし、青立ちと VSP の関係は品種によって異
なり、ユキホマレと東北 129 号では有意な相関が見られた一方で、タチナガハではほとん
ど相関が見られなかったことから、VSP を青立ち診断に適用する際は品種特性をあらか
じめ明らかにしておく必要があると思われる。一方、摘莢によるシンク制限からのシンク
の回復は R3 に比べ R5 以降は生じにくかったことから、R5 後しばらくの間干ばつや病
虫害を回避しシンク・ソース比に影響を与えるストレスを積極的に防ぐべきであることが
示唆された。さらに、青立ち抵抗性には明確な品種間差があることが再確認され、特に早
生品種の環境変動に対する適応性に注意すべきと考えられた。以上の知見をふまえ、青立
ち発生が抑制できれば、ダイズの生産性と安定性の向上に寄与することが期待される。 ...

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