膵液流可視化のためのスピンラベリング法におけるペンシルビームおよびスラブラベリングの比較
概要
(書式18)
学
(
位 論 文 要 約
A b s t r a c t )
博士論文題目 Title of dissertation
膵液流可視化のためのスピンラベリング法におけるペンシルビームおよびスラブラベリングの比較
東北大学大学院医学系研究科
医用情報技術科学講座
氏名 Name
保健学専攻
医用画像工学分野
星 英樹
Magnetic resonance imaging (MRI) による time-spatial labeling inversion pulse (time-SLIP) 法は非
造影血管撮像法の一種であり、肺動静脈の分離や選択的な門脈、腎動脈の描出、また脳脊髄液などの流れの
可視化に応用されている。近年では膵液流の可視化でも検討されており、特に膵液胆道内逆流現象の可視化
による胆道癌発生のリスク判定や、膵液流出長の計測による慢性膵炎の膵液排泄能評価の二点で期待されて
いる。
膵液は血流や脳脊髄液に比べ、低流速、低流量、間欠的な排泄の影響で描出が不安定となりやすいため、
わずかな膵液信号の描出や極低速な流れの計測精度の向上が望まれるが、time-SLIP 法による膵液流可視化
の報告は臨床画像評価のみで基礎的な報告はみられない。また、膵胆管の呼吸変動によりラベル位置がずれ
ると、胆管が標識されてしまうことで偽陽性となる可能性がある。そこで、脳脊髄液の可視化で報告がある
超選択的なペンシルビーム (pencil beam: PB) ラベルが、呼吸変動に対するロバスト性の向上に寄与するの
ではないかという点に着目した。本研究は、膵液流を模したファントム実験によりスラブおよび PB ラベル
の標識特性を明らかにし、臨床目的に応じたラベルの設定や適用を示すことを目的とした。
膵液流速域を模した単管フローファントムを、ラベル厚を変化させて time-SLIP 撮像し、チューブに沿
うフロープロファイルから得られた指標により、各ラベルの基本的な標識特性を比較した。結果は、厚いラ
ベルほど選択特性の悪化が、薄いラベルほど速い流速の信号値の低下が確認され、ラベル厚の変化にともな
う可視化信号の流速依存性が明らかとなった。指標により信号値変化の比較から、両ラベルの信号描出能は
同等であると確認された。ラベル辺縁の標識特性はスラブラベルよりも PB ラベルは緩やかであり、呼吸変
動に対してロバストであることが示唆された。得られたラベルの特性をもとに、二つの臨床目的におけるス
ラブラベル、PB ラベルの適用を考察した。膵液胆道内逆流現象の可視化では最大信号値の低下が少ない厚
いラベルが適しており、胆管から距離が離れる弯曲した膵管の走行では PB ラベルが優位であると考えられ
た。一方で、慢性膵炎症例の極低速の流れでは、選択特性が劣る PB ラベルは流出距離の計測精度が低下す
1
(書式18)
るため、選択特性の高い薄いスラブラベルの優位性が示唆された。以上の結果から、膵管のラベリングにお
いても PB ラベルの有用性が確認され、臨床目的に応じたラベルの設定が明確となった。 ...