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大学・研究所にある論文を検索できる 「続発性リンパ浮腫患者の皮下組織における水分貯留状況の予測 : 超音波画像の有用性の検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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続発性リンパ浮腫患者の皮下組織における水分貯留状況の予測 : 超音波画像の有用性の検討

丹羽, 史織 名古屋大学

2022.05.18

概要

① 緒言
乳がん術後の主な合併症として上肢の続発性リンパ浮腫が知られている。リンパ浮腫は、国際リンパ学会の制定したリンパ浮腫の病期分類であるISL ( International Society of Lymphology)分類によって進行度の分類がなされている。リンパ浮腫は進行すると、組織の線維化や脂肪化がみられ、その進行は不可逆的であると言われており、進行しないような適切な早期介入が必要とされる。また、このISL分類は、臨床では主に自覚症状と触診に頼って診断がなされており、リンパ浮腫の皮下組織の内部構造を実際に把握することが出来ていない状態で診断されている現状がある。そこで、本研究では、リンパ浮腫患者の皮下組織における水分貯留状況を観察し、そのアセスメントツールとして超音波診断装置のみで、この水分貯留が示せるかどうかを明らかにすることを目的とした。

②対象及び方法
乳がん術後に片側性のリンパ浮腫を発症した20名を対象とした。
研究 1では、リンパ浮腫患者の水分貯留状況について視覚的に検証した。水分貯留状況の観察には、Magnetic Resonance Imaging(MAGNETOM Verio3T:Siemens, Erlangen, Germany)を使用した。撮像方法としてDouble Echo Steady Stateを用いて三次元的に撮像した。研究 2では、超音波画像の画像解析手法として、テクスチャ解析と、仮想体積を用いたフラクタル解析を実施し、水分貯留を示せるかどうかを検証した。超音波診断装置(Sonosite EdgeII; Sonosite, Inc., FUJIFILM)を使用し、両側の肘頭近位および遠位4点から得られた超音波画像を用いた。超音波画像上の皮下組織内にROI(Region Of Interest)を設定し、テクスチャ解析と仮想体積を用いたフラクタル解析の両者を算出した。研究 1で得られたMRデータを用いて、超音波画像を3 群(高信号域あり、高信号域なし、健側)に分け、これら3 群間の超音波画像上の違いを検証した。3 群間の比較にはKruskal-Wallis検定(有意水準p< 0.05)を行い、有意差が認められた場合には多重比較を行った。多重比較の場合はBonferroniの補正を行い、有意水準p< 0.0167とした。

③ 結果
被験者は乳がん術後に片側性のリンパ浮腫を発症した女性20名であった。ISL分類では、20名ともⅡ期前期であった。
【研究 1】
全ての被験者は同一のリンパ浮腫ステージにあったが、患側に皮下組織内に高信号域を認めるもの(9名)と全く認めないもの(11名)が混在していた。
【研究 2】
テクスチャ解析では、3 群間(高信号域あり、高信号域なし、健側)比較の結果、12 種類の特徴量で有意差が認められ、その後の検定により7 種類の特徴量(空間濃度レベル依存法から得られる局所一様性・慣性、濃度レベル差分法から得られるコントラスト・角度別2次モーメント・エントロピー・平均・逆差分モーメント)において、高信号域ありで有意差が認められた。
また、仮想体積を用いたフラクタル解析では、これら3 群間比較により、複雑度において高信号域ありで有意差が認められた。フラクタル特徴距離では、有意差は認められなかったものの、ユークリッド空間における分布の評価では、健側、高信号域なし、高信号域ありの順に、分布のばらつきは小さくなった。

④ 考察
本研究では、すべての被験者がステージⅡ期前期のリンパ浮腫であると診断されていたが、MR 画像の結果より、水分貯留を示す高信号域を認めるものと認めないものが混在することが明らかになった。ISL分類は、主に自覚症状と触診に頼って分類がなされており、この結果より、内部構造の状態を反映しきれていない可能性が示唆された。
また、より簡便な方法でこのような水分貯留状況を捉える方法として、超音波診断装置の活用が考えられる。本研究では、超音波画像の定量的指標としてテクスチャ特徴量を用いた7 種類の特徴量(空間濃度レベル依存法から得られる局所一様性・慣性、濃度レベル差分法から得られるコントラスト・角度別2次モーメント・エントロピー・平均・逆差分モーメント)と、仮想体積を用いたフラクタル解析の複雑度において有意差が認められた。これらは、人間に視認不可能なレベルの画像パターンにおいて、また視覚による超音波画像の違いにおいても、リンパ浮腫の水分分布を示すパラメータとしての有用性が示唆された。また、ユークリッド空間内の分布評価においても、健側の超音波画像は、部位や個人差によるばらつきが大きく影響したが、水なし、水ありになるにつれて、リンパ浮腫特有の画像へと変化したため、ばらつきも小さくなったと考えられる。

⑤ 結語
本研究は、同一のリンパ浮腫ステージ(Ⅱ期前期)において、MR所見より、水分貯留を認めるものと認めないものが混在することが明らかになった。また、超音波画像上の皮下組織における画像解析の結果、7 種類のテクスチャ特徴量と仮想体積を用いたフラクタル解析の複雑度において、リンパ浮腫の皮下組織における水分貯留を定量的に捉えられる可能性が示唆された。

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