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内軟骨性骨化におけるSemaphorin3Aの影響

壷井 英里 広島大学

2022.03.23

概要

Semaphorin は神経軸索の伸長方向を決定するガイダンス因子として同定された分子群である。約 500 のアミノ酸からなる Sema ドメインを有することを特徴としており、Sema ドメインか ら続く C 末端の構造上の違いから 8 つのサブファミリーに分類される。さらに、細胞膜との結 合方法により細胞膜結合型、GPI 結合型、分泌型に大別される。Semaphorin3A (Sema3A) は 代表的な分泌型セマフォリンの一つであり、Neuropilin-1 (NRP-1) に結合し、PlexinA1 (PLXNA1) と受容体複合体を作り、細胞内シグナル伝達を行う。Sema3A は器官形成や免疫系 などの様々な生理活性に関与することが知られている。近年では、Sema3A が骨芽細胞の分化 促進と破骨細胞の分化抑制を同時に調節し、骨量を増加させる骨保護作用を有することが報告 された。また Sema3A ノックアウトマウスでは軟骨の異常形成が報告されており、Sema3A は 軟骨分化に重要な役割を果たすと考えられるが、未だ報告が少なく明な点が多い。
本研究では、週齢別のラット顎関節における Sema3A および受容体の発現分布とタンパク発現量の違いを明らかにするとともに、培養軟骨細胞 ATDC5 を用い、軟骨細胞分化における Sema3A の影響を検討するため、以下の実験を行った。

1. ラット顎関節における Sema3A とその受容体の発現分布、タンパク発現量についての検討
4,8 および 12 週齢の雄性ラット下顎頭軟骨における、Sema3A、NRP-1 および PLXNA1の発現分布を確認するために免疫組織化学染色を行った。また、下顎頭軟骨、滑膜、関節円板および血清中における Sema3A のタンパク発現量を ELISA にて解析した。

2. ATDC5 細胞の分化に対する Sema3A の影響についての検討
Sema3A 添加の ATDC5 細胞分化に対する影響について検証するために、分化誘導 7 および 21 日後の ATDC5 細胞に対して Sema3A(0,1,10,100 ng/ml)を添加し、24 時間後に軟骨分化マーカーである Type II Collagen, Aggrecan, Has2, Type X collagen, Sox9 および Runx2の遺伝子発現について real-time PCR 解析を行った。また、ATDC5 細胞における Sema3A添加によるプロテオグリカン合成能への影響を検討するため、分化誘導開始直後より Sema3A(10 ng/ml)を 2 日毎に添加し、13 日後にアルシアンブルー染色を行い、吸光度を測定した。また ATDC5 細胞における Sema3A 添加が石灰化能へ与える影響を検討するため、分化誘導 17 日後から Sema3A(10 ng/ml)を 2 日毎に添加し、21 日後にアリザリンレッド染色を行い、吸光度を測定した。最後に、ATDC5 細胞における Sema3A 遺伝子発現抑制の影響について検証するために、分化誘導 7 日目のATDC5 細胞に対して Sema3A siRNA を導入し、48 時間後の軟骨分化マーカーの遺伝子発現量を real-time PCR 解析にて検討した。

これらの実験から以下のことが明らかとなった。

1. ラット顎関節における Sema3A とその受容体の発現分布、タンパク発現量についての検討
4,8 および 12 週齢ラット下顎頭軟骨において、Sema3A, NRP-1 および PLXNA1 は増殖細胞層から前肥大細胞層に発現していた。また、週齢間で Sema3A, NRP-1 および PLXNA1の発現部位に差は認められなかった。さらに、下顎頭軟骨において Sema3A タンパク発現量は週齢の増加とともに有意に減少した。一方、滑膜および関節円板における Sema3A タンパク発現量は、週齢間での変化が認められなかった。血清中の Sema3A タンパク発現量は減少傾向を示したが、有意差は認められなかった。

2. ATDC5 細胞の分化に対する Sema3A の影響についての検討
分化誘導 7 日後 ATDC5 細胞において Sema3A 添加により Type II collagen, Aggrecan, Type X collagen, Runx2, Sox9, HAS2 の遺伝子発現は有意に亢進した。一方、分化誘導 21 日後 ATDC5 細胞では、Type II collagen, Aggrecan, Runx2 の遺伝子発現が有意に亢進した。また、Type X collagen 及び Sox9 遺伝子発現は亢進傾向を示したものの、有意差は認められなかった。VEGF の遺伝子発現は変化が認められなかった。また、Sema3A 添加によりプロテオグリカン合成能は有意に増加し、石灰化能は増加傾向が認められた。さらに、ATDC5への Sema3A siRNA 導入により、Type II collagen および HAS2 の遺伝子発現は有意に抑制された。

以上の結果から、ラット下顎頭軟骨では増殖細胞層から前肥大細胞層にかけて Sema3A, NRP-1 および PLXNA1 が発現しており、週齢の増加とともに Sema3A タンパク発現量は減少することが明らかとなった。さらに ATDC5 細胞において、Sema3A は軟骨細胞分化制御因子を活性化させ、軟骨細胞の分化及び軟骨細胞外基質産生を促進し、内軟骨性骨化を制御している可能性が示唆された。

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