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大学・研究所にある論文を検索できる 「皮下膵島移植における不織布構造ゼラチン基材の前留置効果の検証」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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皮下膵島移植における不織布構造ゼラチン基材の前留置効果の検証

金井 哲史 東北大学

2021.03.25

概要

膵島移植は重症 1 型糖尿病に対する治療法の 1 つのオプションとして確立されており、膵臓移植と比べて低侵襲な移植療法である。一方で、1 人の患者の治癒に複数のドナーが必要であり、長期成績にもまだ課題が残っている。現在の膵島移植では経門脈経路で肝臓内に移植する方法が世界標準となっているが、肝内の強力な原始免疫反応による膵島破壊や出血、門脈塞栓などの合併症、移植グラフトの摘出が困難である点などの多くの問題点があり、より適した移植部位の探求が進められている。肝臓に代わる移植部位として最も注目されているのが皮下である。皮下移植は最も低侵襲であり、グラフト摘出が容易であるという利点がある。しかし皮下は血管が乏しく膵島移植に十分な酸素や栄養を供給できないという欠点が有しており、血管新生を促進する方法が探求されてきた。一方、膵島周囲の細胞外マトリックス(extracellular matrices;ECM)を補填することが皮下移植において重要であることが近年明らかとなってきている。実際、Ⅰ型コラーゲン素材であるリコンビナントペプチド(recombinant peptide;RCP)を皮下膵島移植の前に 4 週間留置することで膵島の生着が向上することが報告されている。しかし RCP は皮下移植の際に取り出す必要があり、その結果、誘導された新生血管や産生された ECM が崩壊するリスクが懸念された。そこで本研究では、新規のゼラチン素材である不織布構造ゼラチン基材(gelatin hydrogel nonwoven fabric; GHNF)に着目した。GHNF は不織布構造を持つゼラチン繊維基材であり生体吸収性があるので、皮下に留置することで徐々に吸収され自家の細胞に置換される。そのため、膵島移植時に摘出する必要が無く、新生血管や ECM を保持でき、より良好な膵島生着効果が得られると考えられた。そこで本研究では、GHNFを前留置することで膵島の生着が向上するかどうか検証した。さらに膵島生着に関与する因子の解析も行った。

レシピエントマウス(C57BL/6JJmsSlc マウス)の膵島移植予定部位の皮下に 2 枚の GHNF の間にシリコンを挟んで留置(GHNF 群)、またはシリコンのみを留置(Control 群)して 6 週間後に皮下膵島移植を実施した 2 群に、経門脈移植群(intraportal;Ipo 群)を加えた 3 群を設定し、400IEQs(islet equivalents;膵島量)の同種同系膵島移植を行った。移植 7 日前に Streptozotocin(STZ)を投与し糖尿病を誘導した。皮下移植は、シリコンを除去した皮下のスペースに移植を行った。移植後は、血糖と体重の推移を観察し、腹腔内ブドウ糖負荷試験にて評価した。また、皮下移植群にて免疫組織化学染色、コンピューター断層撮影(computed tomography;CT)血管造影、リアルタイム PCR(polymerase chain reaction)による遺伝子発現解析を施行し、皮下での血管新生や ECM を評価した。

膵島移植後の血糖値と治癒率は、GHNF 群が Control 群および Ipo 群と比べ有意に良好な値を示した(p<0.01)。また、腹腔内ブドウ糖負荷試験でも、GHNF 群が Control 群とIpo 群を有意に上回った(p<0.05)。免疫組織化学染色の結果、膵島領域でのvon Willebrand factor(vWF)陽性細胞数に有意差は確認されなかったが、膵島周囲線維被膜部の ECM 陽性切片の割合は、GHNF 群が Control 群よりもラミニンで有意に高く(p<0.01)、コラーゲンⅢ、コラーゲンⅣでも高い傾向が認められた(それぞれ p=0.170、p=0.105)。 CT 血管造影では有意な血管体積の増加は認めなかった。また、TaqMan アレイによる遺伝子発現定量では insulin-like growth factor-2(IGF-2)を含む 19 種類の標的遺伝子の発現が有意に上昇していた。

本研究により、GHNF を皮下に前留置することで、移植膵島の生着が向上し、現在の標準法である経門脈移植の移植効率を凌駕することが示された。膵島の生着向上の機序として、血管新生の促進よりも、種々の ECM の補填や成長因子による膵島の保護効果の可能性が高いと考えられた。

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