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大学・研究所にある論文を検索できる 「病態モデルラットを用いた子宮内膜症が間質性膀胱炎/膀胱痛症候群を誘発する骨盤内臓神経クロストークの病態解明」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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病態モデルラットを用いた子宮内膜症が間質性膀胱炎/膀胱痛症候群を誘発する骨盤内臓神経クロストークの病態解明

林 夏穂 東北大学

2020.03.25

概要

間質性膀胱炎/膀胱痛症候群 (interstitial cystitis/bladder pain syndrome: IC/BPS)は「膀胱充満に関連する恥骨上部の疼痛があり、昼間頻尿・夜間頻尿などの症状を伴う症候群で、感染やほかの明らかな病的状態がみとめられないもの」と定義され、疼痛、頻尿により QOL (quality of life)を著しく低下させる。しかしその病因はいまだ明確にされておらず、確立された治療法もない難治性の疾患であり、その病因の解明、治療法の確立が急務となっている。

また IC/BPS は慢性骨盤疼痛症候群の原因疾患の一つであり、過敏性腸症候群や子宮内膜症等と重複して罹患 することが知られている。特に女性の慢性骨盤疼痛症候群患者では高率に子宮内膜症と IC/BPS の合併を認め、子宮内膜症が IC/BPS のリスク因子であるという報告もある。この慢性骨盤疼痛症候群で複数疾患がオーバー ラップするメカニズムの一つとして骨盤内臓神経クロストーク(以下クロストーク)が提唱されている。クロ ストークとは、以前に暴露された刺激、物質に感作され、他の異なる刺激に対して過敏性を呈する現象をさす。 慢性骨盤疼痛症候群においては、骨盤内のクロストークにより、ある骨盤内臓器に炎症などの障害が生じると、求心性神経、後根神経節 (DRG)、脊髄、脳にて感作が生じ、他の正常な骨盤内臓器に急性疼痛や神経性炎症 をもたらすことで神経性炎症をきたすことで、当該臓器における複数の症状を呈する疾患が併存するとされる。過敏性腸症候群と IC/BPS のクロストークは腸炎モデルラットを用いた基礎研究が複数存在し、主に TRPV1(transient receptor potential vanilloid 1)や TRPA1(transient receptor potential ankyrin 1)を介した 腸-膀胱間のクロストークが提唱されている。TRPV1、TRPA1 は TRP(transient receptor potential)ファミリ ーの一つである。温冷刺激、化学刺激、機械的刺激、炎症性刺激に対する侵害受容器で、侵害受容性疼痛や末 梢神経の炎症による疼痛過敏性に関与する。一方、子宮内膜症と IC/BPS におけるクロストークの基礎研究は Morrison らの報告のみで、膀胱知覚過敏、神経性炎症性変化から子宮内膜症-膀胱間のクロストークの存在を 示唆したが、その分子病理学的機序は未だ解明されていない。本研究では慢性骨盤疼痛症候群において子宮内 膜症が IC/BPS を生じさせる病因として骨盤内のクロストークの存在を明らかにするために、子宮内膜症モデ ルラットを用いて、子宮内膜症から膀胱へのクロストークの存在、すなわち子宮内膜症が、IC/BPS の症状に相当する膀胱知覚過敏ならびに知覚過敏を引き起こす分子病理学的機序について、TRPA1、TRPV1 に着目して病態解明をおこなった。

【研究方法】
1)モデル作成:8 週齢のメスの SD ラットを用いた。結腸間膜、骨盤腹壁に子宮内膜を自家移植した子宮内膜症モデル(ENDO 群)、右双角子宮切除のみ行った sham モデル(sham 群)を作成した。モデル作成 4 週目に子宮内膜症モデルに対して GnRH アンタゴニストを投与し子宮内膜症治療介入群(ENDO+G 群)とした。

2)覚醒拘束下膀胱内圧測定(以下膀胱内圧測定):あらかじめ膀胱頂部に留置した膀胱瘻カテーテルから生理食塩水持続注入した後、膀胱刺激薬剤として TRPV1 アゴニストである RTx (resiniferatoxin)ないし TRPA1アゴニストである AITC (allyl isothiocyanate)を持続注入し各々の排尿間隔を測定した。薬剤投与前後の排尿間隔短縮率で膀胱知覚過敏性を評価した。

3)real-time qPCR:膀胱粘膜、L4-S1 DRG における TRPV1 ならびに TRPA1 mRNA の発現を評価した。


【結果】
1)膀胱内圧測定による排尿間隔:RTx ならびに AITC 注入前の排尿間隔は ENDO 群、sham 群、ENDO+ G 群(AITC のみ)で有意差を認めなかった。RTx 注入前後の排尿間隔短縮率は sham 群、ENDO 群で有意差を認めなかったが、AITC 注入により sham 群、ENDO+G 群と比較して ENDO 群で有意に排尿間隔が短縮した。

2)real-time qPCR:膀胱粘膜ならびに L5 DRG において sham 群と比較して ENDO 群で TRPA1 mRNAが有意に高発現していた。またこの結果を受けて、ENDO+G 群を加えた 3 群で膀胱粘膜における TRPA1 mRNA の発現の比較検討を追加したところ ENDO+G 群では ENDO 群と比較して TRPA1 mRNA の発現が有意に低下していた。TRPV1 mRNA は L5 DRG において sham 群と比較して ENDO 群で有意に高発現していたが、膀胱粘膜では有意差を認めなかった。

【結論】
sham 群と比較して ENDO 群で、膀胱内圧測定において AITC に対する膀胱知覚過敏を呈し、膀胱粘膜、L5 DRG においてTRPA1 mRNA が高発現していた。以上より子宮内膜症モデルでは子宮内膜病変からL5 DRGを介して膀胱に炎症が誘発され、膀胱粘膜で TRPA1 が過剰発現、過剰活性することで膀胱知覚過敏を呈するという、TRPA1 を介した子宮内膜症‐膀胱間の新たなクロストークのメカニズムが提唱された。また、 ENDO+G 群では ENDO 群と比較して、膀胱粘膜の TRPA1 mRNA の過剰発現が抑制され、AITC に対する膀胱知覚過敏が緩和していた。このことから子宮内膜症と IC/BPS を併発している患者に対して、子宮内膜症治療や TRPA1 をターゲットとした治療により IC/BPS の症状が改善される可能性が本研究で示唆された。

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