Building the model of redshift-space galaxy power spectrum based on machine learning and its application to SDSS data for cosmology inference
概要
論文審査の結果の要旨
氏名
小林
洋祐
本論文は 7 つの章と 5 つの Appendix よりなる。第1章はイントロダクションであり、
本研究の動機をまとめている。
第2章では本論文のテーマである銀河の分布に入る前に、まずは暗黒物質による
大規模構造の構造形成理論についてレビューしている。そこでとくに非線形な領域
を扱うためには、全ての宇宙論パラメータについてシミュレーションをするのは不
可能であるため、シミュレーションしたパラメータの間を補完することが必要であ
ることを述べている。第3章では暗黒物質ではなく銀河の分布についての理論をレ
ビューし、バイアスや現象論的なハローモデルを解説している。第4章では実際の
観測データから銀河のパワースペクトルを抽出する手法についてレビューしている。
第5章からが小林氏のオリジナルな研究成果である。まずはシミュレーションさ
れたデータの間を機械学習を用いて補完する方法(エミュレータ)を開発した。実
際シミュレーションされたデータとエミュレータによるデータが非常によい近似で
一致していることを確かめている。第6章ではエミュレータを用いて SDSS-III の
BOSS サーベイのための銀河パワースペクトルのフォアキャストを、非線形領域にま
で踏み込んで行なっている。そして第7章で実際の SDSS-III のデータから銀河パワ
ースペクトルを抽出し、エミュレータの予言と比較することで、世界で初めて非線
形領域を含めた解析で宇宙論パラメータを抽出している。
Appendix 1 ではエミュレータがパワースペクトルについて充分な解像度を持って
いることを確認している。Appendix 2 では線形領域でよく行われるバイアスを独立
として単純な積で表す解析手法が、非線形領域では使えないことを具体的に示して
いる。Appendix 3 ではニューラル・ネットワークでのトレーニングのために、最適
な hidden unit の数を議論している。Appendix 4 ではエミュレータがショットノイズ
のため信頼できなくなるハロー数密度を議論している。そして Appendix 5 では赤方
偏移空間でのパワースペクトルが宇宙論パラメータについてどうレスポンスするか
を議論している。
なお、本論文の研究では多くの共同研究者がいるが、出版された 4 本の論文の内 2 本
は小林氏が筆頭著者であり、また発表の内容から小林氏がエミュレータの開発でも統計
解析でも主要な役割を果たしたことが明白であるので、論文提出者の寄与が十分である
と判断する。
従って、博士(理学)の学位を授与出来ると認める。
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