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肺癌化学放射線療法後の放射線肺臓炎 :免疫高精度放射線療法時代を迎えて

辻野 佳世子 山梨大学 DOI:info:doi/10.34429/00004831

2020

概要

山梨 肺 癌 研 究 会 会 誌 33巻 2020

肺癌化学放射線療法後の放射線肺臓炎

免疫高精度放射線療法時代を迎えて

兵庫県立がんセンター放射線治療科
辻野佳世子

肺 癌 に対 す る放 射 線 治 療 におい て、そ の遂 行 を制 限 す る有 害 事 象 の代 表 が 放 射
線 肺 臓 炎(radiationpneumonitis:RP)で あ る。局 所 進 行 肺 癌 に 対 す る標 準 治 療 で ある化
学 放 射 線 同 時 併 用 療 法 にお いては有 症 状 のRPの

発 症 頻 度 が5∼50%と

高 く、その一

部 は 重 症 とな り、1∼2%は 致 死 的 な肺 臓 炎 を発 症 してい る。また近 年 は 化 学 療 法 に加
え て分 子 標 的 薬 剤 の 使 用 例 も増 加 し、さらに免 疫 チ ェックポ イント阻 害 薬 による地 固 め
療 法 の 有 用 性 が 示 され 、一 層RPに
肺 癌 に おいてもIMRTな

対 す る注 意 が 必 要 とな っている。同 時 に 局 所 進 行

どの高 精 度 放 射 線 治 療 の 導 入 が 急 速 に進 ん でいる。本 講 演 で

は放 射 線 肺 臓 炎 の 定 義 ・
分類 ・
診 断 、リス ク因 子 と発 症 予 測 予 防 法 、免 疫 高 精 度 放 射
線 治 療 時 代 の特 徴 お よび 治 療 法 につい て概 論 したのでそ の抜 粋 をまとめた 。

放 射 線 肺 臓 炎 とは
放 射 線 治 療 に起 因 す る肺 障 害 は、放 射 線 性 肺 障 害(radiation induced lung injury:
RILD)と 総 称 され 、急 性 期 か ら亜 急 性 期(照 射 中 後 期 ∼ 終 了 後 半 年 程 度)に 発 症 す る
放 射 線 肺 臓 炎(radiation pneumonitis:RP)と そ れ に 引き続 く晩 期(照 射 終 了 半 年 以 降)
の放 射 線 肺 線 維 症(radiation fibrosis)に分 類 され る。重 症 化 や 致 死 的 な転 帰 とな るな
ど臨 床 的 に 問 題 となるもの は 主 に前 者 である。
診 断 の 要 とな るのは 発 症 時 期 と胸 部X線 などの画 像 診 断 であ る。発 症 時 期 は 照 射
直 後 や5∼6か

月 程 度 経 過 してか ら発 症 す る場 合 もあるが、多くは 照 射 終 了 後1か ら3

か 月 程 度 である。画 像 診 断 で は特 にCT所 見 が 特 徴 的 であり、発 現 初 期 に は初 期 の スリ
ガラス陰 影 が 照 射 範 囲 内 か ら出現 して いるか 否 か が診 断 の 鍵 となり、治 療 計 画CT上



線 量 分 布 図 との対 比 が 重 要 であ る。
グレー ド分 類 としては 間 質 性 肺 臓 炎 としてNCI-CTCAEの

分 類 が 用 いられ ることが

多 いが 、グレー ド1とグレー ド2、グ レー ド2とグ レー ド3の症 状 の解 釈 や 内 科 的 治 療 適 応 に
主 観 的 要 素 が あり、そ の境 界 がや や曖 昧 であるため 、注 意 を要 す る。

一38一

令 和2年4月1日

発 症 頻 度 は有 症 状RP(グ
∼50% 、縦 隔 腫 瘍 で5∼10%、
死 的 なRPは

レー ド2以上)の 発 症 頻 度 としては肺 癌 根 治 照 射 例 で5
乳 癌 では1∼5%と

肺 癌 根 治 照 射 症 例 では1∼2%程

報 告 され てい る。最 も懸 念 され る致

度 の 報 告 が 多 い。

リスク因 子 ・
発 症 予測 予防 法
肺 癌 根 治 照 射 後 に は グ レー ド1ま で 含 め る と多 くの 症 例 で 発 症 す るRPで
症 状 や 重 症 なRPを

あ るが 、有

発 症 しや す い リス ク因 子 が 放 射 線 治 療 ・患 者 ・
腫 瘍 な どそ れ ぞ れ に

つ い て 報 告 され て い る。
放 射 線 治 療 関 連 因 子 として は 、現 在 の 標 準 で あ るCTに
dimensional

conformal

(dose-volume

radiotherapy:3D-CRT)に

histogram:DVH)か

基 づ く三 次 元 放 射 線 治 療(3

お い て は 、線 量 容 積 ヒス トグ ラ ム

ら導 か れ る種 々 の パ ラメー タとRP発

討 報 告 され て き た 。2010年

に 米 国 腫 瘍 放 射 線 学 会(ASTRO)のQUANTEC

70以

行 わ れ 、肺 癌 に お ける 有 症 状RPの

上 の 報 告 のreviewが

の 関 連 が 高 い ことが 確 認 され 、V20値

お よ びMLD値

症 の相 関 性 が 検
projectで

発 症 はVdose

と有 症 状RPの

、MLDと

発 症 率 の 関 係 にひ

とつ の 基 準 が 提 示 され た 。これ らの デ ー タを もとに 現 在 で は 通 常 分 割60Gy/30fr程
のCCRTに

お い て は 両 肺 のV20を35%以

下 、MLDを20Gy以



下 に す る よう放 射 線 治

療 計 画 を 行 うことが 推 奨 され て い る。ま た 近 年 で は よ り低 線 量 の 関 与 も注 目 され て い る。
低 線 量 のDVHパ
volume

spared

ラメー タとして はV5(%)の
from

5Gy:5Gy照

報 告 が 多 い が 、VS5(AVS5)(cc)(absolute

射 され な い 肺 の 実 容 積)が

特 に 肺 障 害 との 相 関 性 が

高 か った とい う報 告 も散 見 され る。放 射 線 腫 瘍 医 、医 学 物 理 士 は 腫 瘍 へ の 治 療 線 量 を
確 保 した うえ で これ らの 正 常 組 織 の 線 量 制 約 を 遵 守 す るよ う治 療 計 画 を工 夫 し、また 治
療 適 応 判 断 の ひ とつ の 基 準 として い る。
放 射 線 治 療 の 高 精 度 化 ・呼 吸 移 動 対 策 の 発 展 に ともな い 、強 度 変 調 放 射 線 治 療
(lntensity modulated

radiotherapy:IMRT)が

局 所 進 行 肺 癌 に 対 して も行 わ れ るよ うに な

り、よ り腫 瘍 に 線 量 を 集 中 しつ つ 周 囲 の 正 常 組 織 へ の 線 量 を 低 減 で き る ように な っ て き
た 。た だ しこれ らの 方 法 は 多 方 向 か らの 多 門 照 射 や 回 転 照 射 とな る た め 、正 常 組 織 に
対 す る高 線 量 照 射 は 低 減 で き る が 、低 線 量 が 広 範 囲 に 広 が る とい う特 徴 が あ る 。肺 に
対 す る小 範 囲 の 高 線 量 と広 範 囲 の 低 線 量 の どちらが よ りRPの

発 症 に 関 与 す るか に つ い

て は 議 論 が あ る が 、結 論 は い ま だ 不 明 で あ る。しか し多 門 、回 転 照 射 例 に お い て 全 肺 に
広 が る致 死 的 放 射 線 肺 炎 発 症 の 報 告 が 散 見 され 、広 範 な 低 線 量 照 射 の 影 響 が 示 唆 さ
れ て い る。一 方 でIMRTと3D-CRTを

症 例 毎 に選 択 できた臨 床 試 験 の 二 次 解 析 にお い

一39一

山梨 肺 癌 研 究 会 会 誌 33巻 2020

て、IMRTの 方 が 有 意 にグレー ド3以 上 の放 射 線 肺 臓 炎 の 発 症 が少 な か ったとい う報 告
もあり、現 在 日本 にお いてもその普 及 とともに期 待 が高 まっている。
RP発

症 の リスクが高 い可 能 性 が あるとして報 告 され て いる患 者 ・
腫 瘍 因 子 としては、

年 齢(高 齢)、性 別(女 性)、喫 煙 歴(両 者 の報 告 があ るが 、非 喫 煙 者 に多 い という報 告
が 多 い)、 併 存 肺 疾 患(間
DLCO%,PaO2)、

質 性 肺 疾 患IPF、COPD)、

肺 機 能 不 良(FEV1,FEV1%,

腫 瘍 部 位(下 葉)、腫 瘍 体 積(大)、 病 期(進 行)な どが あ る。併 存 肺 疾

患 の 中 でも特 に 間 質 性 肺 臓 炎IPFの

合 併 は リス クが 高 いと考 えられ ており、胸 部X線 で

明 らか な高 度 の 間 質 性 肺 臓 炎 は 一 般 に根 治 的 胸 部 放 射 線 治 療 の 適 応 外 である。軽 度
の 間 質 性 変 化 を有 す る場 合 は 照 射 適 応 とす る場 合 が 多 いが、RP発 症 リスクは 高 くなる
ため細 心 の 注 意 が必 要 である。
前 述 のように多 岐 に わ たる因 子 がRP発
単 独 でのRP発

症 に関 与 して おり、それ ぞ れ のリス ク因 子

症 の 予 測 精 度 には 限 界 があ り、予 測 能 向 上 を 目指 して複 数 の 因 子 を含

めた発 症 予 測 モ デ ルが 我 々 の施 設 か らの報 告 を含 め いくつか 報 告 され ている。

免 疫 療 法 併用 時 代 の 放射 線 肺 臓炎
最 近 局 所 進 行 非 小 細 胞 肺 癌 に対 す る同 時 化 学 放 射 線 療 法 後 の 地 固 め 療 法 とし
て免 疫 チェックポイント阻 害 薬(ICI)Durvalmabを

投 与 す ることにより非 再 発 生 存 ・
全生

存 ともに 有 意 に 延 長 を認 め る結 果 が 報 告 され 、標 準 治 療 に 大 きな 変 化 が 起 きて いる。
lCl単独 でも間 質 性 肺 臓 炎 は 注 意 す べ き有 害 事 象 で あり、胸 部 放 射 線 療 法 との併 用 は
その リスクが 増 強 す る可 能 性 が危 惧 され ていた。しか しこの試 験 の解 析 では放 射 線 肺 臓
炎 を含 む 肺 臓 炎 はDurvalumab群33.9%、
3,4に ついてはDurvalumab群3.4%、

プラセ ボ群24.8%で

認 められ た が、グレー ド

プラセボ 群2.6%、 グレー ド5は それ ぞ れ1.1、

1.7%で あ り、特 に重 症 の肺 臓 炎 についてDurvalumab併

用 によるリスク上 昇 は認 め られ

なか った。ただしこの試 験 にお いては 、IMRTの 割 合 や 肺V20,V5な

ど放 射 線 治 療 内 容

の詳 細 が 不 明 であ り、今 後 の 実 臨 床 例 での 注 意 深 い観 察 が必 要 であ ると考 える。また、
胸 部 放 射 線 治 療 後 しばらく経 過 して からICI投 与 を行 った 時 に一 旦 落 ち着 いていたRP
が再 燃 した(recall現 象)という症 例 報 告 もあり、ICI
との 併 用 には今 までと異 なる反 応 が
生 じる可 能 性 もあり、注 意 を要 す る。

管理 ・治療 法
RPの 治 療 法 については 前 向 き臨 床 試 験 が なく、経 験 則 での治 療 が 行 わ れ てい る。
症 状 の な いグレー ド1では 基 本 的 に 治 療 は 不 要 で、経 過 観 察 とな る。軽 度 の症 状 の み の

一40一

令 和2年4月1日

グ レー ド2で は 無 治 療 ま た は 鎮 咳 剤 ・気 管 支 拡 張 剤 等 の 対 症 療 法 を行 う。症 状 が 強 い
場 合 や 照 射 野 外 へ の 進 展 が み られ る場 合 な どは ス テ ロイド治 療 の 適 応 とな る。経 ロ プ レ
ドニ ゾ ロン を0.5∼1mg/Kg/dで
12週

開 始 し、症 状 の 改 善 が 見 られ れ ば 緩 徐 に 減 量 し、6∼

か け て 離 脱 す る 。減 量 中 に 再 燃 す ると難 治 性 とな る ことが 多 い た め 、再 燃 に 注 意

しな が ら緩 徐 に 減 量 す る ことが 重 要 で あ る。グ レー ド3の 場 合 もス テ ロイド治 療 の 適 応 とな
り、よ り高 容 量 の 投 与 や 酸 素 投 与 も必 要 とな る。グ レー ド4に な ると他 の 重 症 間 質 性 肺 臓
炎 と同 様 に 補 助 換 気 、intensive Careが 必 要 とな り、azathioprineやcyclosporineな
の 再 燃 免 疫 抑 制 剤 が 投 与 され ることもあ る。 ...

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