Predictors of Prolonged Hemodynamic Compromise After Valve Deployment During Transcatheter Aortic Valve Implantation
概要
〔目 的(Purpose)〕
経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)において、弁留置のために行われる高頻度ペーシング(rapid pacing; RP)によって惹起される遷延性血行動態悪化の予測因子を同定すること
〔方法ならびに成績(Methods/Results)〕
TAVIを実施された47人の患者について、弁留置でのRP後に、収縮期血圧>90mmHg、混合静脈血酸素飽和度(Sv02) >に達するまでの時間をrecovery time (RT)とした。RT全体のthird quartile (Q3)を超える患者を回復遅延群(delayed recovery;DR)、超えない患者を;早期回復群(early recovery;ER)として2群に分けた。術前の患者背景、併存疾患、心エコーの検査値、術中の血行動態パラメータを単変量および多変量解析し、RP後の血行動態回復遅延を予測できるか調べた。2群間の比較には、正規分布の場合にはStudent’s T検定、非正規分布の場合にはWilcoxon順位和検定を用い、カテゴリー化された値の比較にはx二乗検定を用い、p値が0.05未満の有意差有りとした。RTのQ3は85. 5秒であり、これによってER群は33人、DR群は14人となった。術前のデータでは、体表面積(BSA)と左室拡張末期径、収縮末期径(LVDd、LVDs)がDR群において有意に小さい値を示した。RP直前の血行動態パラメータについては、DR群において、中心静脈圧(CVP)が有意に高く、心係数(CI)とSv02が有意に低かった。単変量解析では、小さいBSAとLVDd、高いCVP、低いCIとSv02,そしてノルアドレナリンの総使用量がRP後の血行動態回復遅延に関連していた。これらを用いて多変量解析を行ったところ、LVDd (OR, 0.774;95%CI, 0.608- 0.915)と、Sv02 (OR, 0.748;95%CI, 0.590- 0.868)が、RP後の血行動態回復遅延に有意に独立して関連した。ROC曲線による解析では、Sv02のカットオフ値は61% (感度79%、特異度94%)、LVDdのカットオフ値は44mm (感度71%、特異度79%)であった。
〔総 括(Conclusion)〕
術前の心エコーによる左室拡張末期径が小さいほど、そして、弁留置直前のSv02の値が低いほど、RPを用いた弁留置後の血行動態の回復が遷延すると考えられた。