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大学・研究所にある論文を検索できる 「Clinicopathological differences between the motor onset and psychiatric onset of Huntington’s disease, focusing on the nucleus accumbens」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Clinicopathological differences between the motor onset and psychiatric onset of Huntington’s disease, focusing on the nucleus accumbens

Hirano, Mitsuaki 平野, 光彬 名古屋大学

2020.04.02

概要

【緒言】
ハンチントン病(Huntington’s disease; HD)は比較的まれな神経変性疾患であり、かつハンチンチン(HTT)遺伝子のCAGリピート異常伸長による常染色体優性遺伝疾患である。舞踏運動などの運動症状が先行する症例が多い一方、精神症状を初発症状として、精神科を受診することも少なくない。HDの特徴的な神経病理所見としては、両側線条体の萎縮が知られている。線条体は大脳皮質から淡蒼球や黒質、視床と連絡し、また皮質に戻る基底核ループを形成し、運動の計画や遂行に影響を与えている。線条体神経細胞は小型細胞と大型細胞に大別されるが、HDではGABA作動性の小型細胞から選択的に障害され、運動症状は線条体病変と密接に関連していることが報告されているが、精神症状の病理学的背景は十分に検討されておらず、HDの表現型の差異の病因病態は未だ不明である。腹側線条体の一部である側坐核は、大脳辺縁系などと連絡してループを形成し、情動や精神病症状等との関連が示唆されており、抗精神病薬の薬理学的作用の関心領域の一つとなっている。これまでHDの側坐核は病理学的変化が乏しい領域とされ、注目されてこなかったが、近年神経画像研究等により異常が指摘されてきている。以上を踏まえた本研究は、精神症状先行及び運動症状先行HDのそれぞれのヒト死後脳において側坐核の細胞密度変化に着目し、HDの臨床症状の神経病理学的な差異・背景を明らかにすることを目的とした。

【対象及び方法】
HD16例[精神症状先行3例(死亡年齢中央値48歳、罹病期間中央値20年)、運動症状先行13例(死亡年齢中央値64歳、罹病期間中央値15年)]、コントロール4例(死亡年齢中央値53歳)の脳を検討した(表1、2)。精神症状先行群は精神症状(認知機能障害を除く)により発症し、罹病期間の早期から中期には運動症状が認められなかった群と定義した。運動症状先行群においては、認知機能障害が運動症状発症と同時もしくは経過の中で生じた症例が含まれていた。検索した部位は、CAP(側坐核)レベル、GP(淡蒼球)レベル、STN(視床下核)レベルの3つのレベルである(図1)。Klüver-Barrera染色標本を用い、側坐核、尾状核、被殻のそれぞれの部位のうち無作為に選んだ10ヶ所で計測し、1mm2あたりの小型細胞と大型細胞の細胞密度を算出した。本研究に際しては名古屋大学医学部生命倫理審査委員会の承認事項に則り、遺族からの同意を書面で取得し、個人情報保護に配慮した。脳剖検に関しては死体解剖保存法を遵守した。

【結果】
HDの脳において、小型細胞密度は全部位でコントロールと比べて有意に減少していた(図2)。側坐核の小型細胞密度の減少は尾状核や被殻に比べて軽度であったが、コントロールと比べて有意な低下であった。大型細胞密度は、側坐核と被殻において、HDの方がコントロールに比べて有意に高値であった(図3)。精神症状先行群と運動症状先行群の比較では、小型細胞密度について有意差は無かったが、精神症状先行群の側坐核における大型細胞密度が有意に高かった(図4)。

【考察】
HDの側坐核で、尾状核や被殻ほど顕著ではないが有意な神経細胞脱落が生じていた。また、HDの精神症状先行群と運動症状先行群では、側坐核の病理変化のパターンが異なることが示唆された。HDでは小型細胞が選択的に障害されることが知られており、大型細胞は比較的保たれる点から、大型細胞密度上昇は背景のニューロピルの萎縮を示していると考えられる。ニューロピルは神経突起や軸索、シナプス等で構成されており、その萎縮はシナプスや神経突起スパインの異常を表している可能性がある。既報では様々な精神神経疾患においてシナプスの異常の関与が想定されており、側坐核でのHDの精神症状先行群と運動症状先行群の病理学的相違は、精神症状の発症に関連する要因の可能性が示唆される。今回の研究のLimitationとしては、側坐核の大型細胞密度が高いことから、背景のニューロピルの萎縮を推測したが、神経突起スパインやシナプスの異常を直接観察したわけではないこと、また、線条体の神経細胞をKlüver-Barrera染色で同定できる2種類のみ区別していること等が挙げられる。今後、神経伝達物質の違いや投射先等の機能的相違に基づいた更なる検討が必要である。さらに、今回、HDの初発症状による臨床病型、精神症状先行群と運動症状先行群の両群を、臨床神経病理学的に比較検討したが、病状が進行していくにつれ経過とともに初発時と異なる症状も続発的に示すことが多い(特に運動症状は全例で生じた)ため、死亡時の病理所見が発症時の特徴をどの程度反映しているかは不明である。

【結語】
HDの初発の臨床症状の類型(精神症状先行群と運動症状先行群)によって、側坐核の病理変化のパターンが異なることを明らかにし、臨床症状の違いを臨床神経病理学的にも説明しうることが示唆された。HDの精神症状の背景にはシナプス機能の障害が関連している可能性がある。

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