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大学・研究所にある論文を検索できる 「幼若期社会隔離と脳幹腕傍核領域慢性的活性化による脳神経回路と行動の制御」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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幼若期社会隔離と脳幹腕傍核領域慢性的活性化による脳神経回路と行動の制御

井口, 理沙 東京大学 DOI:10.15083/0002006922

2023.03.24

概要

[課程-2]
審査の結果の要旨
氏名 井口 理沙
本研究は慢性的ストレスによる脳神経回路への影響を明らかにすることを目的に行った。幼
若期隔離社会隔離ストレスと疼痛関連領域である脳幹腕傍核(PB)の慢性的活性化操作が神経細
胞構造の発達、情動関連行動、記憶形成に与える影響について、生体内脳神経樹状突起スパイ
ンの観察および行動実験により現象解明を試みたものであり、下記の結果を得ている。

1.育児放棄による神経回路発達障害を明らかにするため、育児放棄のモデルマウス作成とし
て幼若期社会隔離操作をマウスに行い、生体内神経細胞樹状突起スパイン動態および形態

を in vivo imaging 法により観察した。その結果、社会隔離操作によって未成熟神経回路
形成が行われることが明らかとなった。また自閉症モデルマウスでの生体内神経細胞樹状
突起スパイン動態の比較から、育児放棄と自閉症では異なる神経障害が生じる可能性を示
唆した。
2.NMDA 型グルタミン酸受容体のサブユニットである GluN2A と GluN2B について

それぞれシナプス成熟と不安定化という相対する機能を持つ可能性を検討した。これらの
サブユニットの発現を操作したマウス群では顕著なスパイン動態変化がみられなかった。
3.育児放棄による長期的な神経回路への影響を明らかにするため、幼若期社会隔離操作を行
ったマウスを対象に成熟期の情動関連行動、記憶形成について行動実験により評価した。その
結果、恐怖記憶想起に対する逃避行動の増加が示され、成熟期まで記憶に関する脳機能に長

期的な障害を及ぼすことが示された。
4.慢性的なストレスとして慢性疼痛に着目し、疼痛等に関連する脳領域である脳幹腕傍
核を Designer Receptors Exclusively Activated by Designer Drugs (DREADD)システム

による慢性的活性化を人為的に行い、行動実験により情動関連行動、記憶形成を評価した。
その結果、顕著な不安様行動や恐怖記憶想起の減弱が示された。この PB 領域が慢性的に活
性化されたマウスでは PB 領域からの直接投射先である扁桃体外包中心核(CeC)領域の活性

化がみられた。扁桃体 CeC 領域では情動に関連する神経活動が存在することが知られて
いる。さらに詳細に情動障害に関連する神経回路を解析するために、脳幹 PB 領域から扁
桃体 CeC 領域へ投射する経路に合わせて、皮質領域を経由して扁桃体 BLA 領域から扁桃
体 CeC 領域へ投射する神経経路の活動変化も今後研究する必要がある。

以上、幼若期社会隔離ストレスは未成熟な神経回路形成を誘導し、さらに成熟期における恐
怖記憶想起時の逃避行動増加に示される長期的な影響を及ぼした。また疼痛に関連する PB 領

域の慢性的活性操作は不安様行動の増加、恐怖記憶想起の減弱を誘導し、慢性疼痛患者で
発症リスクの高い精神疾患様症状に PB 領域の機能が関連する可能性を示した。さらに PB
領域から CeC 領域へ投射する経路の伝達機能増強がこの行動障害に関連する仮説も導かれ

た。本研究は慢性的ストレスによる神経回路発達障害及び環境適応に関する神経経路構築の解
明に重要な貢献をなすと考えられる。
よって本論文は博士( 医学 )の学位請求論文として合格と認められる。

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