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大学・研究所にある論文を検索できる 「Synthesis of Molybdenum-Ruthenium Solid-solution Alloy Nanoparticles and Evaluation of Their Properties」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Synthesis of Molybdenum-Ruthenium Solid-solution Alloy Nanoparticles and Evaluation of Their Properties

Okazoe, Shinya 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23363

2021.05.24

概要

金属ナノ粒子はバルクとは異なる物理的・化学的特性を示すことから、これまで盛んに研究がなされており新規物質も多く開発されている。例えば、バルクにおいては混ざらない金属の組み合わせであっても、構成元素が原子レベルで混ざった固溶体ナノ粒子が報告されている。固溶体はその金属組成を変えることで、金属の電子状態を連続的に変化させることができる。しかしながら、これまで研究が行われている固溶体ナノ粒子は後期遷移金属の組み合わせが主であり、前期遷移金属を含んだ固溶体ナノ粒子の報告は稀である。前期遷移金属と後期遷移金属の組み合わせから構成される固溶体ナノ粒子は、電気陰性度などの違いから後期遷移金属同士の組み合わせでは実現できない電子状態を実現することが期待できる。このような理由から、より広範な物質開発のために、前期遷移金属を含んだ組み合わせの固溶体ナノ粒子の開拓が必要である。

申請者は前期遷移金属であるモリブデン(Mo)と後期遷移金属のルテニウム(Ru)の組み合わせに着目した。この 2 つの金属元素から構成される固溶体ナノ粒子を合成するために、加熱による両金属原子の生成が可能な熱分解法を適用した。しかしながら、実際に熱分解法で均一な固溶体ナノ粒子を合成できたのは Ru リッチな組成(Mo0.2Ru0.8)ナノ粒子だけでであった。固溶体構造は走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いたエネルギー分散型X 線分光分析(EDX)による元素マッピングおよび線分析を行うことで確認された。この Mo0.2Ru0.8 固溶体ナノ粒子を炭素に担持し、水素発生反応触媒能を塩基性溶液中で評価している。また、比較のために同程度の粒径の Ru および Pt ナノ粒子も評価している。単金属の Ru ナノ粒子と比較して、MoRu 固溶体ナノ粒子は同量の水素を発生させるために必要な過電圧が低く、より高い活性を示した。また、単金属では最高の触媒活性を示す白金(Pt)と比較した場合でも同様の傾向が確認でき、MoRu 固溶体ナノ粒子が高い活性を示すことを明らかにした。

また、申請者は合成した Mo0.2Ru0.8 固溶体ナノ粒子を別の触媒反応においても検討した。具体的には、ナノ粒子を THF に分散させ、水素添加反応触媒としての活性を調べている。基質として、不飽和炭化水素である 1-オクテン、1-オクチン、1-フェニルアセチレンを使用している。異なる温度及び水素分圧で触媒反応を検討したところ、いずれの基質においても単金属のRuと同等かより高い触媒活性を示すことを明らかにしている。以上のことから、触媒活性を向上させるうえで、前期遷移金属を後期遷移金属に固溶させることが有効であることを実証した。

申請者が考案した熱分解法による合成では、前期遷移金属が特定の割合以上の場合、部分的に固溶体を形成しているものの、Mo クラスターが混在していた。申請者は広い組成範囲で均一な固溶体を得るために、Mo リッチの組成(Mo0.9Ru0.1)において原子拡散を誘起する水素雰囲気下でのアニーリングを行なった。STEM-EDX による元素マッピングにより、固溶体構造が確認された。得られたナノ粒子は炭素を格子内に含んだ MoRu 固溶体ナノ粒子であることが格子定数の変化から明らかにされた。

さらに、抵抗率測定ではゼロ抵抗、磁化率測定ではマイスナー効果が 5 K 付近で観測され、このMoRu 固溶体ナノ粒子が新規超伝導体であることが明らかにしている。同様の処理によって全組成のMoRu 固溶体ナノ粒子を合成している。組成比に由来する電子状態の変化を検討するために、超伝導特性が評価され、その結果、固溶体中のMo の割合を減らすことで、超伝導転移温度が連続的に減少することが明らかにされた。格子内に存在する炭素の量を正確に求めることはできていないものの、全組成における MoRu 固溶体ナノ粒子の合成及び連続的な電子状態のコントロールに成功した。

本研究において申請者は、前期遷移金属及び後期遷移金属の新合成法を開発し、組成を変えることでその物性のコントロールができることを実証した。本手法は他の前期遷移金属を含んだ固溶体の合成も可能であることを実証し、合金ナノ粒子開発の選択肢を押し広げる切っ掛けとなることが期待される。

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