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大学・研究所にある論文を検索できる 「Synthesis and Characterization of Pd-based Alloy Nanoparticles Containing Boron」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Synthesis and Characterization of Pd-based Alloy Nanoparticles Containing Boron

Kobayashi, Keigo 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23026

2021.03.23

概要

金属は粒径数nm程度になると、バルクとは異なる構造や電子状態などの性質を示す。例えば、バルクでは熱力学的に安定でない合金をナノスケールで作製できることが知られる。またナノ合金は構成元素の単金属のいずれとも異なる電子状態や性質を示すことから注目されている。しかしナノ合金の研究対象はこれまで主に遷移金属どうしの組み合わせが中心であった。軽元素や希土類金属は遷移金属とは異なる電子状態を有することから、本研究では報告例が比較的少ない軽元素と遷移金属から構成される合金ナノ粒子の作製を目的とした。

申請者は最初にパラジウム(Pd)とホウ素(B)からなる2元系合金ナノ粒子の合成を目指した。Pdナノ粒子を予め作製し、Bを含む試薬溶液中で加熱還流する方法(外的ホウ素ドープ法)を新たに開発した。作製した試料の粒子内ではPdとBが65:35の組成比の新規な合金であり、Pd原子配列が六方最密構造と類似していることがわかった。この新規Pd–B合金ナノ結晶は反磁性的な挙動を示し、大きな常磁性磁化を有する純Pdの電子状態と異なることがわかった。バンド計算の結果、Pdの4d軌道とBの2p軌道の混成により、Fermi準位における電子状態密度の大幅な減少が見られ、磁化率の結果と一致した。

次に申請者は、新規に開発した外的ホウ素ドープ法を合金系にも適用した。遷移金属(TM)をさらに1成分添加し、Pd–TM–Bの3元系合金ナノ粒子の作製を目指した。対象となるTMとしてルテニウム(Ru)と銅(Cu)を選択した。RuはBとは熱力学的に安定な合金を形成するが、Pdとは形成しない。対照的に、CuはBとは熱力学的に安定な合金を形成しないが、Pdとは形成する。いずれも、構成元素間の混合エンタルピーにフラストレーションが存在することが予想された。申請者はPd–Ruナノ粒子、Cu–Pdナノ粒子を予め作製し、外的ホウ素ドープ法によりBとの合金化を試みた。

Pd–Ru–B試料の分光学的測定から、Pd、Ru、Bの3元素が合金を形成していることが確認された。混合エンタルピーにフラストレーションが存在していても、相分離していないことが明らかになった。種々の構造解析の結果、Pd–Ru–B合金ナノ粒子は非晶質構造を有することが予想され、高エネルギーX線回折測定をもとにした分析から長距離秩序を喪失した非晶質合金と結論された。Pd/Ru組成比を変えて合成すると、PdとRuの原子数比がほぼ等しい場合のみ、Bの導入後に非晶質となることが明らかになった。また、室温・室圧下では数週間から数か月程度の時間経過でBが脱離し、もとの2元系ナノ合金Pd–Ruへの分解現象が確認された。申請者はBの脱離挙動やその条件からPd–Ru–B非晶質合金が熱力学的安定相である可能性を指摘し、また非晶質でありながら熱力学的に安定となる所以として前述した混合エンタルピーのフラストレーションの影響と考察している。

さらにCu–Pd–B試料に関しても、合成直後の状態では非晶質に近い構造と考えられた。しかし、数時間程度の時間経過で直ちに結晶化転移していく挙動が観察され、B原子の脱離にともなう結晶化であることが明らかになった。1日経過後にはほぼ結晶化状態となったが、この試料を分析するとCuとPdの合金状態が保持されているほか、 Bは粒子内に残存しており、3元系合金の保持が確認された。相分離は認められず、混合エンタルピーのフラストレーションがあっても3元素が合金化することが明らかになった。

本研究において申請者は、ホウ素含有合金ナノ粒子の新合成法を開発し、それによってPd基の新規な2元系、3元系合金をホウ素外部導入法によって合成できることを実証した。作製された合金ナノ粒子は電子軌道混成による新しい電子状態が発現し、混合エンタルピーのフラストレーションによる非晶質合金の安定化を示唆する興味深い結果が得られた。本合成法により、Ru、Cu以外の成分を含む場合や、4成分以上の多元系合金の作製も可能と期待され、合金ナノ粒子開発の選択肢を押し広げる可能性がある。

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