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大学・研究所にある論文を検索できる 「Deep sequencing analysis of serum hepatitis B virus-RNA」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Deep sequencing analysis of serum hepatitis B virus-RNA

松田 秀哉 山梨大学 DOI:info:doi/10.34429/00004821

2020.06.02

概要

(研究の目的)
B型肝炎に対して現在の標準的な治療は核酸アナログの投与であるが、治療効果を維持するためには長期間の投与が必要であり,また投与していても肝発癌やウイルスの薬剤耐性変異の出現を完全に防ぐことはできない.その原因の一つはHBVの生活環で形成されるcccDNAという極めて安定な環状二重鎖構造にある.核酸アナログの投与中もcccDNAは肝細胞内に長期に残存し、RNAへの転写,ウイルス蛋白の合成は行われ続ける.肝発癌や薬剤耐性変異出現のメカニズムを明らかにするためにはcccDNAの解析が重要と示唆されるが,肝生検などの侵襲を伴う処置が必要であるため,核酸アナログ投与下での肝発癌や薬剤耐性変異などの病態とHBV-cccDNAゲノムとの関連は殆ど解析されていない.

以前より核酸アナログ投与中でHBV-DNAが検出できない状態でもHBV由来のRNAが検出できることが報告されていた.2016年に血中に検出されるHBV-RNAは大部分がpregenomicRNAであることが報告された.pregenomicRNAはcccDNA全長の転写産物であるため,核酸アナログ投与下のHBVゲノム解析に有用である可能性がある.しかし血清HBV-RNAとB型肝炎の病態との関連や,核酸アナログ投与下でのHBV-RNAの動態は全く明らかにされていない.

今回の実験で,血清中のHBV-RNAの検出方法を確立し,HBV-RNAとB型肝炎の病態との関連を検討した.さらに核酸アナログに対して薬剤耐性変異を来した症例を対象として血清HBV-RNA,DNAのDeep sequenceを行い,核酸アナログ投与中のHBVゲノムの動態を解析した.

(方法),
B型肝炎患者186名の保存血清を対象に血清HBV-RNAを測定した.測定方法は、血清からスピンカラム法で核酸を抽出、DNase処理、ランダムプライマーによるcDNA作成、既存のHBV-DNA測定キットでcDNA定量の手順で行った.定量コントロールとして,HBVゲノムを含むプラスミドからHBV-RNAをinvitro合成し希釈系列を作成して同様にcDNAに転写して定量した.

また核酸アナログに対して薬剤耐性変異によるウイルス学的ブレイクスルーを来した4名の患者の保存血清を研究対象に、治療開始前、ブレイクスルー直前、ブレイクスルー時、核酸アナログ追加投与によるブレイクスルー収束後の4点についてHBV-RNAおよび-DNAのDeep sequenceを行った.シークエンスは核酸アナログ耐性にかかわるHBVポリメラーゼ領域を対象とした.

(結果),
血清HBV-RNAは全症例186例のうち47例(25%)に検出された.血清HBV-RNAは血清HBV-DNAやHBコア関連抗原,HBs抗原と正の相関がみられた.核酸アナログ投与下では血清HBV-RNAとHBV-DNAの相関は消失した.HBコア関連抗原,HBs抗原と血清HBV-RNAの相関は核酸アナログ投与の有無にかかわらず保たれた.

薬剤耐性変異によるウイルス学的ブレイクスルーを来した4症例のDeep sequence解析では全ての症例で核酸アナログ導入前からブレイクスルー直前まで薬剤耐性変異は検出されなかった.ブレイクスルー時は血清HBV-DNAはほぼ全て薬剤耐性変異を有する配列である一方,血清HBV-RNAはすべて核酸アナログに耐性変異を有しない配列であった.核酸アナログadd-on後ブレイクスルーが収束した時点での血清HBV-RNAの耐性変異率はそれぞれ0%,3%,14%,100%と症例により異なっていた.ブレイクスルーからadd-onまでの期間が長いほど,またその間のHBV-DNA量が多いほど,核酸アナログadd-on後の血清HBV-RNAの耐性変異率が多い傾向にあった.それらの積と血清HBV-RNAには強い相関がみられた(R2=0.9708).

(考察),
この研究で確立した方法で血清HBV-RNAが検出可能であり,その定量値は核酸アナログ投与下でウイルス増殖が抑制されてる状態でも血清HBVRNAはHBコア関連抗原量やHBs抗原と正の相関がみられた.HBコア関連抗原やs抗原はcccDNAの転写活性を反映していると報告されている.血清HBV-RNAも同様に核酸アナログ内服下でのcccDNAの転写活性を反映する可能性が示唆された.

核酸アナログに対して耐性変異を来した症例のDeep sequenceによる解析では,ブレイクスルーの期間の長さやHBV-DNA量に応じて血清HBV-RNAの薬剤耐性変異の割合は増加していた.cccDNAが維持される仕組みとして,HBV感染細胞から放出されたウイルス粒子が再び他の肝細胞に感染して新たなcccDNA形成する機序がヒト肝細胞キメラマウスの実験では報告されていた.ブレイクスルー時に一過性に増加し放出されたHBV粒子は,同様に別の肝細胞に感染し新たなcccDNAを形成して,それが核酸アナログ追加後のHBV-RNAに検出された耐性変異配列の由来となった可能性が高い.これらの結果により,血清HBV-RNAのシークエンスによりcccDNAの動態を間接的に観察できる可能性が示唆された.

(結論)血清HBV-RNAは核酸アナログ投与下においてcccDNAの転写活性を反映しうるマーカーであり,またそのシークエンスによる解析は,これまで未知であった核酸アナログ投与下のcccDNAの動態解析に有用であった.これらの結果により,血清HBV-RNAの解析が核酸アナログ投与下での肝発癌や耐性変異出現メカニズム等の病態解析に有用である可能性が示唆された.

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