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大学・研究所にある論文を検索できる 「全身性強皮症の末梢血免疫細胞プロファイリングによる病態関連因子の探索」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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全身性強皮症の末梢血免疫細胞プロファイリングによる病態関連因子の探索

小林, 聖未 東京大学 DOI:10.15083/0002002399

2021.10.13

概要

全身性強皮症 (systemic sclerosis; SSc) は自己免疫,血流異常,臓器の線維化を特徴とした難治性の疾患であり,病態の解明と治療の発展が望まれている.近年免疫学的な治療の有効性が報告されており,今後の SSc の治療標的を考えるうえで,各免疫細胞種の相対的な病態への寄与の大きさ,各細胞種での疾患と関連した生物学的経路を同定することは非常に重要なステップであると思われる.今回我々は末梢血単核細胞 (peripheral blood mononuclear cell; PBMC) を 19 種の免疫細胞種 (細胞サブセット) 別に分離し,各細胞サブセットで RNA-sequencing (RNA-seq) を行った.また疾患と関連した極性を有した末梢血免疫細胞亜集団の探索をするべく,ICELL8 Single-Cell System を用いた single cell RNA- sequencing (scRNA-seq) を行った.

米国リウマチ学会/欧州リウマチ学会 2013 年 SSc 分類基準に基づいて SSc と分類された症例を対象とした.prednisolone 換算で 20 mg 以上のステロイド使用例,生物学的製剤使用例,活動性の感染症および悪性腫瘍合併例は除外した.SSc 群と年齢,性別を propensity score マッチさせた健常者 (healthy control; HC) を HC 群とした.HC は既知の自己免疫疾患,活動性の感染症,悪性腫瘍の合併のない症例と定義した.方法として,密度勾配遠心法により PBMC を回収し,セルソーターを用いて 19 種の免疫細胞サブセット別に細胞を分離し RNA-seq を施行した.edgeR を用いて differentially expressed genes (DEGs) 解析を行い,発現変動のデータから亢進/抑制されている上流因子の推定手段として Ingenuity Pathway Analysis (IPA) の upstream regulator analysis を使用した.また iterative weighted gene correlation network analysis (iWGCNA) により各細胞サブセット毎に発現変動が相関する遺伝子群 (以下 module) を求め,各 module の発現の代表値である eigengene と臨床情報の変数との相関を解析した.また全細胞サブセットのmodule を対象に,SSc と HC を弁別するために重要な module を同定する手段として,機械学習の一つである random forest を施行した.着目した単球サブセットにおいては scRNA-seq を行った.scRNA-seq においては CD16 陰性単球と CD16 陽性単球を併せた集団 (CD14 陽性単球) を対象とし,k-nearest neighbor 法に基づいた cluster 検出を行い,各cluster で他の cluster に比して発現が高い遺伝子,cluster marker genes の Z-score の平均を “cluster signature” と定義し,バルク・ソートサンプルのデータで各 cluster signature を SSc と HC で比較した.

バルク・ソートサンプルの RNA-seq 解析においては SSc 21 例および HC 13 例を対象とした.抗トポイソメラーゼ I 抗体陽性例が 9 例,抗セントロメア抗体陽性例が 11 例であった. DEGs を対象に IPA の upstream regulator analysis を行った結果,ほぼ全サブセットの SSc において亢進している上流因子として,炎症性サイトカインや growth factor が推定された.次に我々は各細胞サブセットで,iWGCNA により発現変動が相関する遺伝子群, module を作成した.これら全サブセットの全 module を対象に,random forest により,SScと HC を弁別する説明変数として重要な module の同定を試みた結果,CD16 陽性単球の module5 (CD16pMo_M5) が最上位となった.これを SSc 関連 module と呼ぶ.各 module の発現の代表値を表す eigengene は,この CD16pMo_M5 において HC に比して SSc で高かった.したがって SSc で発現が亢進している遺伝子群であると考えられた.この module には FOS, NFKBIA, CXCL8 などの遺伝子が含まれ,IPA による upstream regulator analysis の結果,炎症性サイトカインや growth factor が上位に推定された.この module と相関の強い他の細胞サブセットの module は SSc と HC の弁別において重要度の高い module と一致し,これらの module の上流因子としても炎症性サイトカインや一部の growth factor が推定された.

次に単球サブセットにおける,細胞個別の疾患と関連した変化を検出するべく,抗トポイソメラーゼ I 抗体陽性 SSc 患者 3 例を対象に単球サブセットの scRNA-seq を行った.本解析では単球サブセットは 7 つの cluster に分類された (cluster0-6).各 cluster で他の clusterに比して高発現している遺伝子を marker genes とし,先述の方法で cluster signature を定義し,CD16 陽性単球および CD16 陰性単球のバルク・ソートサンプル RNA-seq データにおける各 cluster signature をSSc と HC で比較した結果,cluster0 の signature が SSc 患者で HCに比して有意に高かった.Cluster0 にはSSc 関連module の遺伝子が有意に集積していた.これらの結果を統合することで,疾患マーカーの候補を含む,SSc との関連が指摘されている遺伝子群が抽出された.

本研究において我々は網羅的な免疫細胞サブセット別の RNA-seq 解析を行うことで, SSc において,細胞サブセットをこえて炎症性サイトカインや growth factor を上流因子とする経路が共有されていることを見出した.これらは共通の液性因子による影響を示唆し,特に単球における発現変化が SSc と HC を区別するために重要である可能性が示された.今回 scRNA-seq データとの統合により,SSc の単球において,疾患との関連が指摘されている遺伝子の発現変化を同定した.これらの結果は SSc の病態において重要な経路・因子の抽出と,今後の治療標的探索における本研究手法の有用性を示唆すると考える.

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