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大学・研究所にある論文を検索できる 「全身性エリテマトーデスの免疫細胞種網羅的トランスクリプトームデータに基づく患者層別化解析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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全身性エリテマトーデスの免疫細胞種網羅的トランスクリプトームデータに基づく患者層別化解析

中野, 正博 東京大学 DOI:10.15083/0002007018

2023.03.24

概要

[課程-2]
審査の結果の要旨
氏名 中野正博
本研究は、全身性エリテマトーデス (SLE) の遺伝子発現プロファイルに基づく患者層別
化を目的とし、多彩な臨床像を有する SLE 患者 89 例と健常人 55 例において 27 種の免疫
担当細胞を採取し、次世代シークエンサーを利用して RNA-Sequencing (RNA-Seq) によ
る細胞種網羅的なトランスクリプトーム解析を試みたものであり、下記の結果を得てい
る。
1.

SLE 患者と健常人の発現変動遺伝子解析において、SLE 患者で下記を代表とする遺
伝子群の発現亢進を認めた。
(1) すべての細胞種における type I interferon (IFN) signal に関わる遺伝子群
(2) B 細胞サブセットや骨髄系樹状細胞における抗原提示に関わる遺伝子群
(3) memory B 細胞や形質芽細胞における小胞体ストレス反応に関わる遺伝子群
(4) 好中球や low-density granulocytes における脱顆粒反応に関わる遺伝子群

2.

Type I IFN signal 強度に基づき SLE 患者が大きく 4 群に層別化される中、lupus low
disease activity state を達成しながらも type I IFN signal が高度に残存する患者が一
定数存在した。そのような患者群は抗 RNP 抗体陽性や紅斑の残存といった臨床像で
特徴づけられることが明らかとなり、実臨床での有用なマーカーとなりうることが示
唆された。

3.

高疾患活動性 SLE 患者と低疾患活動性 SLE 患者の発現変動遺伝子解析において、高
疾患活動性 SLE 患者で下記を代表とする遺伝子群の発現亢進を認めた。
(1) すべての細胞種における type I IFN signal に関わる遺伝子群
(2) type 1 helper T (Th1) 細胞、effector memory (EM) CD8 T 細胞, effector
memory re-expresses CD45RA (TEMRA) CD8 T 細胞、natural killer (NK) 細胞
といった特定のリンパ球における細胞周期に関わる遺伝子群
(3) 好中球や単球といった骨髄球系統における細胞接着、補体貪食に関わる遺伝子群

4.

SLE 患者をさらにループス腎炎の有無で層別化したところ、3.で言及した細胞種特異
的な発現変動遺伝子群のうち、(2)が腎炎以外の高活動性 SLE 患者で、(3)が活動性腎
炎患者で特に発現亢進しており、各々の遺伝子群がそれぞれ異なる臨床病型に関与し
ている可能性が示唆された。

5.

自己抗体プロファイルに基づく層別化解析では、抗 U1- ribonucleoprotein (RNP) 抗
体陽性症例を特徴づける遺伝子群として、すべての細胞種における type I IFN signal

に関わる遺伝子群に加えて、unswitched memory B 細胞における ER stress やプロ
テアソーム分解に関わる遺伝子群の発現亢進を認め、同細胞種が抗 RNP 抗体産生に
関与している可能性が示唆された。
6.

ケモカイン受容体発現情報に基づく層別化解析では、単球と樹状細胞のフラクタルカ
イン受容体 CX3CR1 と単球の CXCR1/2 を含む遺伝子クラスターが関節炎症状と、
Th1, TEMRA CD8, NK 細胞の CX3CR1 を含む遺伝子クラスターが低補体症状とそれ
ぞれ関連し、各々の細胞種の固有のケモカインシグナルがそれぞれ異なる臨床病型に
関与している可能性が示唆された。

以上、本論文は末梢血免疫担当細胞 27 種類の RNA-Seq data を網羅的に解析することに
よって、SLE 自体あるいは SLE の多彩な臨床像を特徴づける細胞種特異的な遺伝子発現
パターンを多数同定し、それぞれの病態形成において異なる遺伝子発現プロファイルの免
疫細胞種が活性化している可能性を示した。本研究は SLE の病態解明ならびに患者層別
化に基づく治療最適化に重要な貢献をなすと考えられる。
よって本論文は博士(医学 )の学位請求論文として合格と認められる。

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